35
「こんにちは、六花さん」
「……美琴ちゃん」

私の病室に、見舞客がきた。
以前戦ってから顔を合わせていなかった、第五位の超電磁砲、御坂美琴ちゃんだ。

「六花さんの彼氏って、第二位の未元物質の人だったんですね」

飾ちゃんから色々と聞いたのだろう。
私たちの間に気まずい沈黙が広がる。
置時計が針を進める音がやけにうるさく聞こえた。

「……今なら、美琴ちゃんには話してもいいかな」

意を決して沈黙を破る。
美琴ちゃんは真剣な表情で私を見据えていた。

「私の実験はね。私を殺すことで垣根帝督が絶対能力(レベル6)になる……そういう内容だった」

美琴ちゃんは大きく目を見開いている。
あまりにも非現実的な内容に、美琴ちゃんも驚いているんだろう。

「私と帝督はお互いのことを強く思ってた。だから、私を殺せば精神的影響を強く受けて、レベル6になれるんじゃないか、という演算結果がでたらしいわ。より確実な内容にするために、私個々の能力アップも、研究の一環として取り入れることとなった。だからわたしは清白和女学院に転入することとなったの」
「そんなひどい話……」
「本当よね。私も最初聞かされた時は信じられなかった。だけど、私は条件をのんだ。帝督の今までの努力を、実らせてあげたかった……。でも、第一位にはやっぱり、叶わなかった」

窓の外を見れば、雲一つない快晴だった。
穏やかな秋の日差しが、病室に差し込む。

「帝督は自己中で……自分のためなら、どんな手を使ってもやってのけるような、そんなやつだったけど……とっても優しかった。飾ちゃんには本当に申し訳ない、けど……」
「初春さんなら大丈夫です。応急処置がよかったって。今は順調に回復してます」
「そっか。よかった」
「……六花さん」

美琴ちゃんは椅子から立ち上がると、私の手を両手で包み込んだ。

「第一位だとか、第二位だとか、私はそんなの考えたことはないですけど。でも、六花さんには、Lv5になってほしい……いや、なるべきだって思いました」
「美琴ちゃん……」
「だから、諦めないでください。垣根さんが追い求めた頂上を、今度はあなたが目指してください。真っ暗なこんな方法じゃなくて、ちゃんと真正面から立ち向かって」
「……美琴ちゃんらしいね」

美琴ちゃんの手はとても暖かくて。
ぼろぼろな私を労り、癒してくれているようで。
優しさが身に染みる。
気が付けば涙が溢れていた。