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相も変わらず続行されている実験。
実験の内容は日に日にエスカレートしていき、私はみるみる憔悴していった。

「蒼南様、最近どうなさったんですの?」
「顔色がよくありませんわ。保健室にいかれてはいかがですか……?」
「ありがとう。そうするね」

あなたたちには、わからないでしょう。
日に日にエスカレートする実験内容は私の体を刻々と蝕んだ。
けれどこれが意味するもの、それは。

「帝督に会える日が、近いってこと……でしょう?」

おかしい。
私、気が狂っている。
だけどどうしようもなかった。
私の世界の方位磁針は、彼だけだったのだから。

「どこなの……ねえ、どこにいるの……?」

私は今日も街へ繰り出す。
どんな些細なことでいい。
手がかりを見つける、それだけのために。










「ねえねえ、なんでこのお姉さん、この家で寝ているのって、ミサカはミサカは尋ねてみたり?」
「……え?」

目を覚ませば、まったく見覚えのないマンションに私は横たわっていた。
そこには美琴ちゃんにそっくりな少女が私の周りでぴょんぴょんと飛び跳ねている。

「こら、打ち止め(ラストオーダー)。せっかく寝ていたのに、おこしちゃダメでしょう」
「違うよ!今ちょうど目が覚めたんだもん!って、ミサカはミサカは反論してみたり!」

優しそうに微笑む女性は、私の肩にカーディガンをかけてくれた。

「あの、私どうしてここに……」
「道端で倒れていたところを警備員に保護されたのよ。あなた、結構無茶な生活をしていたみたいじゃない?はい、これでも飲んで」
「ありがとう、ございます」

淹れたてのココアを受け取り、一口飲み干すと体が温まった気がした。
傍で少女は羨ましそうに飛び跳ねている。

「……いる?」
「いいの?ってミサカはミサカは図々しく尋ねてみたりっ!」
「はい、どうぞ」

ココアをその少女に渡せば、すごく嬉しそうにそれを飲み干した。
無邪気な様子に、思わず口元が緩む。

「お、目が覚めたジャンよ」
「え?」
「この人があなたをここまで運んでくれた警備員の人よ」

私は驚いた。
この人は以前、帝督が殺そうとしたあの警備員の女の人だったから。

「うるせェな。また人が増えてやがる……」

その人物を認識した瞬間、私の脳裏にあの日の出来事がフラッシュバックした。
忘れもしない、この姿。

「一方通行……!」

みつけた。
私の手がかり。