04
男たちが見えなくなったところまで進み、男子高生は足を止めた。
息を整えるその姿を私はまじまじと見つめる。
歳は同い年ぐらいだろうか。
短い黒髪にほんのりと汗が滴っている。
どうやら悪い人ではなさそうだ。

「え、あの、その…そんなに見つめられるとですね、少し恥ずかしくなってきてしまいますよ……?」
「あ、ごめんなさい!」

ゆっくりと降ろしてもらい、2人で近くのベンチへ腰をかけた。

「あの、その、ありがとう……ございました」
「いや、いいよ。それよりも、ああいうときは話合してくれねえと」

ははは、と笑いながら滴る汗をぬぐう。

「私、蒼南六花です」

ハンカチを手渡すと、男子高生は少し照れくさそうに笑って受け取る。

「俺は上条当麻。よろしくな」
「上条君、ね」

なんて優しい人だろう。

「今日はありがとう、上条君」

私が微笑みかけると、上条君もつられて少しだけ口角を上げた。

「送るよ、家まで」
「助けてもらった上送ってもらうなんて…なんか悪いよ」
「遠慮すんなよ。それに、さっきみたいなのに絡まれたら、また大変だろ?」
「上条君って、かなりのお人よしなんだね」
「そりゃあ、上条さんの半分は優しさで出来てますから」
「そのネタ、つまんないよ?」

2人で思わず目を合わせて笑った。
なんて優しい人なんだろう。

「じゃあさ、お礼に晩御飯をごちそうさせて?」
「え?」
「どうかな?」

腕には自信あるほうなんだけど、
そう付け加えて私はわざとらしく腕拳をつくる。

「ごちになりますっ!」

上条君は目を輝かせて、肯定の返事をした。