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「帝督、こっちこっち!」
彼女は相も変わらず、以前と同じように俺の手を引いて歩く。
未元物質で再現された俺は完成度が高く、傍から見ても一般の人間と大差はない。
(目だって黒くならないように、そこまで再現しているのだ)
「今日はフレメアちゃんのところは行かなくていいの?」
「うん。今日はいちゃついてくるのだ!なんて言って見送られたから」
「あら、気を使わせちゃったみたいで悪かったかな?」
手を絡ませて歩く俺たちは幸せそうに街を闊歩する。
あれから、六花への特別カリキュラムは休止された。
体晶を使いすぎたため。能力の行使もしばらくは禁止されている。
元に戻るまでは、軽くしか能力を使っちゃダメ、なんてカエル顔の医師に言われたらしい。
「……にしても、あいつは元気なのか?」
「んー、元気だよ?たまに話してる」
「それもこええな」
「まあさみしくなくて私はいいけどね」
妖精女王は相も変わらず六花の中でもう一人として存在しているらしい。
だが体晶を使わない限りは出てこないようで、今は口うるさい母親のような存在だ。
「早く別れた方がいいって、毎日説得されてる」
「おい!こいつ……」
「でも、本当は違うってこと、私はわかってるけどね」
六花は意地悪そうに笑った。
「本当は帝督のこと大好きなんだよ。じゃなかったら、ピンセットの真似したり、同じように羽生やしたりしないでしょ?」
「……素直じゃねえな」
「誰かさんに似たみたいですねえ」
俺たちは強く手を握って歩いた。
六花はふと立ち止まって、そして俺の顔を見る。
「ねえ、いつか帝督が生身の体に戻ったら、その時は私と結婚してくれる?」
「……は?」
「だって、背を追い抜いたら大人になるから結婚するって昔約束したじゃん!覚えてる?」
「……覚えてるよ。それに」
俺は強く彼女の手を引いた。
反動で俺に飛び込むように抱き着く彼女。
「もう、そんなの当然のことだと思ってた」
「……意地悪」
俺たちはそっと笑いあった。
幸せな時間。
暖かな時間。
このひと時が、俺たちを強くする。
「ねえ、明日はどんなことが待ってると思う?」
「知らねえよ」
「うん。でもね、1つだけわかってること、あるよ?」
六花は満面の笑みを俺に向けて、言い放った。
「私達、やっと同じところに向かって歩いてるってこと!」
俺はそっと彼女の頭を撫でる。
巡り巡る俺たちの物語のページはこれからも、どんどん増えていって。
そして最後は、ハッピーエンドで笑って終わる。
そう願いながら。