07
部屋につくなり、鞄を投げ出しす。
なんだか浮かれてつい走って帰ってきてしまった。
体はほてり、ほんのりと汗をかいている。
急いで窓を開けながら、セーラー服のリボンをほどき寝室へと向かった。
「あっつーい……」
セーラー服を脱ぎベッドに放り投げる。
思わず私は体の動きを止めた。
規則正しい寝息をたて、横たわっている大きな塊が目に入ったからだ。
静かに近づき勢いよくベッドの布団をはぎ取る。
「帝督ー!!!」
「……んあ、うるせえな」
気だるそうに目を薄らあけると、再び眠りにつこうとする。
その様子を見て、思わず両頬を思い切り掴んだ。
「ってぇ!なにすんだバカ女!!」
「何って今学校の時間でしょ!なんでここにいんのよ!」
「そういうてめぇはどうなんだよ!」
目の前の人物は苛立った様子で体を起こすと、大きな欠伸を一つした。
「身体測定で半日上がりだったの!早く学校行きなさいよ!」
「うるせえな、バカ女」
「きゃっ……!」
来ていたジャケットを脱ぎ床に放り投げると、そのまま私の腕を強く引く。
反動でそのまま体勢を崩した私は、ベッドに倒れこんだ。
「一緒に昼寝だ、昼寝」
「なんでそうなんのよ……」
腕の中にすっぽりと収まった私。
そっと彼の顔をみつめる。
それに気づいたかのように目の前の人物もまた、私の顔を見つめた。
垣根帝督。
私の同居人であり、幼馴染の男の子だ。
「六花……お前さ……」
「何?」
「今の恰好、サービス?」
帝督に言われ、自分の恰好に気づく。
キャミソールにスカート。
露出の多い格好に、一気に頬が赤らんだ。
「は、離して!上になんか羽織るから!」
「安心しろ。色気が足りねーから大丈夫だ」
「どういう意味よ!」
帝督は意地悪く笑うと、再び瞼を閉じる。
「帝督……」
「あ?」
目を瞑ったまま、帝督は相槌を打った。
「わたしね、165cmになったよ」
「お前昔から女の中ではでかい方だよな」
「まあね……」
「俺は追い抜いちまったけどなー」
「いつの間にか抜かされてたね。今、180cmぐらい?」
「ああ……」
眠たそうに相槌をうつ帝督。
その姿がなんだか愛しいと思う。
私たちは付き合っている恋人同士ではない。
昔からの幼馴染、ただそれだけ。
友達以上、恋人未満という距離をずっと保ち続けている。
何かと無茶をしやすい帝督を見兼ねて、私が無理やり家に連れ込んだ。
「ねえ、帝督」
「……ん」
「小さいころさ、帝督がわたしの身長をさ……」
すうっ、と。
タイミングよく寝息を立て、帝督は眠りについた。
あどけない寝顔。
こういうところは昔と変わらない。
「大人に、なれなかったね。おっきくなっても」
私の呟きは、帝督に聞こえることなく消えた。