やっぱりなかった

「ここ、ついてますよ」
「えっ…えと、」
「ふふ、逆です。」


そう言ってルーシャスさんはわたしの口元を拭った。

け…けしからん!!!!!(どきどきどきどきどきどきどきどき)















ノクターン横町でたいへんな目にあった後、ルーシャスさんに助けられわたしはダイアゴン横町まで案内してもらった。

ルーシャスさんはホグワーツの5年生らしい。
買いたい本があるとのことだが、わたしが転入生であることを知り買い物に付き合ってくれることになった。あなたが神か。


まずはわくわく、杖を買い(ソメイヨシノのオリジナル?の木とユニコーンのたてがみにバステト?の髭が芯になってるらしい。27センチしなやか。)、次に制服と何着かの私服を買った。

そこでふたりとも空腹を感じ始めたのでいっしょに近くのオシャレなレストランへ。
なんでこんなにルーシャスさん優しいんだろう紳士だなあ…あれか、やっぱり日本人はモテるのか?わたし黒髪ストレートだし。ツヤァ…



「そういえば、ペットはどうされますか?」
「えっ…あ、どうしようかな…あんまり考えてなかったです……」
「飼うなら何を?」
「うーんやっぱり梟が便利ですよね……でも個人的には猫が…ねこ……」


ねこもふもふ・・・



そしてわたしはぽややややーんと猫を飼う生活を想像してみた。
ねこ。にゃんこ。にゃんこ。にゃーんこ!

確かにあの部屋はひとり(まあリドルいるけど)じゃちょっと広すぎる。それに部屋に帰ったらにゃんこもふもふがいたらすごく癒しになるかもしれない。かわゆいかもしれない。らぶらぶちゅっちゅぺろぺろしたいかもしれない。なでくりまわして迷惑そうな顔されたい。


ねこ・・・ねこ、ねこ…ねこラブリー………ぬこ…




「欲しいんですね」
「はっ!!!」


いかんトリップしていた。ねこ。ねこ恐るべし。

でもねこかー!!ペット…まあいたら心強いだろうけど、ダンブルドアからの貴重なお小遣いを使ってもよいものだろうか。ねこ…ねこぬこ……ぬこ様・・・



「もしよろしければ帰りに当屋敷に寄りませんか?友人の飼い猫が子供を生みまして、飼い主を探しているようで」
「え!いいんですかっ」
「はい。本屋に寄ったあと向かいましょうか、変わったお菓子もありまして一度食べていただきたいですし。
そういえば日本のものだった気が…アンコと言うのですが」
「えええええ大好物です。うっわぁあいありがとうございます!!」


なんていいひとだろうルーシャスさん。今日1日なにからなにまでお世話になりっぱなしだ。なんでこんなに優しいんだろーこのひと。すごいなー!


そしてわたしとルーシャスさんは食事を済ませた後いっしょに本屋に行った。
教科書を買ってルーシャスさんのおうちへ。

ルーシャスさんの家かあ。きっときれいでおっきいんだろうなあ。
ブランドものとかよくわかんないけど身に付けてるものはどれも高級そうだし、礼儀作法も完璧だ。いっしょにごはん食べるのわりとつらかったくらい。

たぶん貴族なんだろうなあ…この世界のことよく知らないけど、ノクターンでわたしのこと助けてくれたときの様子とか見ても名家出身のひとって感じだった。

なのにこんなわたしみたいな間抜けにどこまでも親切にしてくれて。ああ。男運できたなあわたし…時空の管理人が言ってたことってこのことか・・・













たどり着いたのは思った以上のすんばらしいお屋敷だった。ちょっとすごすぎてびびった。

ホグワーツの半分くらいあるんじゃないかって大きさ。なんとなく鬱蒼とした山奥にあるけど、魔法使えたら交通の便とか関係ないしいいんだろう。

いやあきれいなお城(?)だなあ。どことなくホグワーツにも似てる気がする。


「すごい…ところですね……」
「そうですね」


口をあんぐり開けたわたしにルーシャスさんは笑みを返す。
あれ、なんか笑顔がかたい…ような……気が…?



「…ルーシャスさん?」
「はい」
「どうか、しましたか…?」
「いえ、何も。少し入るのに手間がかかるのですがご承知いただけますかな」
「あ、はい…」


気のせい、だろうか。
なんとなくざわざわする。知らないひとについてきたらだめだった…、かな。でも、優しくしてくれた、し…



『どうしてそんなに簡単にひとを信用するかな』


リドルが声だけで囁いた。

心臓が大きな音をたて始める。


もしかして、ていうかもしかしなくても、あの。

ここ、来ちゃいけないところ、だった…?



「行きますよ」


小声でなにかぶつぶつつぶやいていたルーシャスさんが、わたしの肩に手を回した。
思わず強ばる背中。だめだ、このひと危険、危険だ。


最初の勘を信じていればよかったのに…!



「あの、や、やっぱり帰ります。わ、わたし用を思い出して…」
「またにしろ」
「!」



ひいいいいやっぱりこわいひとだったよおおおおお!!!!


笑顔を消したルーシャスさんは有無を言わさぬ力でわたしを進ませる。
ああ、ああ、ああ。

扉が開いた。


仮面をつけたひとがこちらを一瞥し、またそっぽをむいた。


予感は確信に変わる。

ここは、…ここは。


「貴女に会いたいとおっしゃっている方がいます」
「わたし、は、会いたくないです…」
「何を申しますか。とても名誉なことですよ、貴女は闇の帝王にお目にかかることができるのです!」


やっぱりか!

ルーシャスさんを睨むと、彼は不気味な笑みを浮かべた。


「貴女を屋敷に連れ帰ったら、本名を明かすよう申し付けられております。失礼のないように、と。ですから貴女もあの御方に無礼を働かないでくださいね。

もしも我がマルフォイ家にお怒りが飛び火しては困りますので」


ほら、闇陣営だった。


人生いちばんの危機を目の前にして、わたしの頭はものすごく回転する。



ルーシャス。Lucius。



「あなた……ルシウス・マルフォイね………!」

「左様。よくおわかりで」



男運なんてなかった。

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