記憶を棚に上げて

ボンッ!!!


「ふぉうっ!!?」



ヴォルデモートさんが行ってしまったあとの扉をじっと見つめていると、後ろからなにかが弾けるような音がして飛び上がった。


なにもうなんなのもうほんとに今日心臓に悪い。

バッと後ろを振り返ると、そこにいたのは。



「リドル!!!」
「………はっ・・・」


少しだけ息を乱したリドルだった。






「っうわあああリドル無事!?リドル無事!?ちょっと顔色悪いかな…お水かなにか、えっとッ…」
「落ち着きなよ。っていうか僕は思念体だ」
「えっじゃあ水とか関係ない?!なにかほしいもの…」
「魔力ちょうだい」
「え」


そう言ってリドルはわたしが座っているソファのうしろに膝をついて、わたしの肩に頭を預けた。


うっ…ぉぉおおぉぉおおぉ!?!?!?




「リドル!?」
「なに、黙って…」
「あ、う・・・」



黙ってって言われても困る。えっでもわたしいま魔力吸われてるんだよねこれやばくない!?何よりこの体勢やばくない!?



おろおろあわあわするものの、どうしたらいいかはわからない。

困りながら固まっていると、「お前はむだに魔力があるからちょっとやそっとじゃ何も支障ないよ」って言われた。
いや。そう言われましても。


まあでも母性本能だろうか。
自分の肩に弱ってるイケメン(ここ重要)がいるなんて放っておけない。そっとその髪に手を伸ばして軽くなでなでしてみる。


リドルは一瞬ぴくっとしたけど黙ってそのままにしておいてくれた。・・・きゅん。




















「チッ」
「?」


何を話したらいいかもわからず、(たぶん)リドルもそっとしてほしそうだったのでだんまりそのままの体勢でいると、リドルがひとつ舌打ちをした。なんだ。

そのままリドルは移動しわたしのとなりに腰かける。ん、もう魔力補給終わっ…


ギィイ。



終わったのかな、なんて考えているとまたあの重苦しい扉が開いた。ヴォルデモートさんだ。


ああ、なるほど………プライドか。ちらりとリドルに目をやったあとヴォルデモートさんに「おかえりなさい」と声をかけた。

彼は黙って頷いたあと、リドルに向かって嘲笑を浮かべる。



「ほう、俺様が消えたから現れたのか」
「別に。距離が遠くなったから解きやすくなっただけ」


その答えにもヴォルデモートさんは薄く笑い、リドルはただヴォルデモートさんを睨む。


ひ、ひぃ…また空気おんも……



「まあいい。アオイ、お前が帰る手はずは整えた。

一度マルフォイ家を経由してから漏れ鍋へ行き、そこからホグワーツへ戻れ」
「は、はい…」

「ついでに、手土産だ」



そしてヴォルデモートさんはローブの中から何かを取り出した。


てみや、げ、



「みぁーぉう」
「!?」


ぬこ様!!?




「入学祝いだ。ルシウスから聞いているだろう」
「ええぇ、え…!ほんとですか!?あれてっきり餌だと…!」
「まあその通りだが」



お前はもう少しひとを疑うことを覚えろ、とヴォルデモートさんはそっぽを向きながら言う。


これは!もしや!照れかく…だめだ調子乗るのやめよう落ち着こう。



「いいんですか…?」
「ああ」


じっとヴォルデモートさんの持つケースの中のにゃんこ(子猫)を見つめると、そのコはこてんと首を傾げた。


かんわいい・・・・!





「ありがとうございます…!



名前はヴォルにしますね」

「「それはやめろ」」


あ、ハモっちゃった。

でもこのこ、赤目の黒猫なのに…



「ご自分を投影しての黒猫赤目じゃないんで…」
「やはり死にたいか」
「うそですすみません」



睨まれたので慌ててぬこに目線をうつすと、ぬこはにゃごなごと体をぺろぺろしていた。


・・・かわいい。



「お前、名前はなにがいい?ぺろぺろしてるからペロ?」
「みぎゃーっ」

「…嫌がってるぞ」


受け取ったケースを開けて子猫を抱き上げ、椅子に座り膝の上に乗せるとヴォルデモートさんも向かいに座る。

…あれ、なんかこんなにほのぼのしてていいの…?



前髪に隠しながらとなりのリドルをちらりと見やると彼もおとなしくにゃんこを見ていた。



「わたしとヴォルデモートさんとリドルの名前から少しずつ取りますか?」
「…子供じゃあるまいし」
「それもそうですね…」


うーん。どうしようかなあ。

ぬこの首を指で撫でると、気持ち良さそうにゴロゴロと鳴いた。

うふふ偉そう。かわいいけど。なんか偉そう。



・・・・・あ。


「そうだお前、卿は?」
「みゃ?」

「ちょっと待て、アオイ」


ヴォルデモートさんの制止を無視して、ぬこちゃんに話し掛ける。


「卿。どう?」
「みゃあー!」

「嬉しそうですよ、ヴォルデモートさん!」
「・・・もう勝手にしろ」



ヴォルデモートさんはついていけない、といったふうにため息をついた。
それをわたしは笑顔でごまかす。


・・・なんかこうしてると、悪いひとには見えないなあ。



卿はわたしの膝の上、気持ち良さそうにもう一度声を上げた。

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