「っ…あー!!!!!」
ぼふん!
音を立ててベッドにダイブする。
校長室の暖炉からホグワーツに帰ってきて、ダンブルドアにのほほんと紅茶すすりながら「おかえり」と言われたときはなんかもうものすごい勢いでまくし立てたくなったが、そんな元気もなかったので大人しく部屋に帰った。つかれた。
帰る際、ヴォルデモートさんには卿以外にさらにふたつのものを渡された。
両面鏡と大量のあんこ。
両面鏡のほうは、これを使って毎日の出来事を報告しろとのことだったが…あんこは意味不。いやわたしあんこだいすきだけどね。なんで知ってんだ。
「(調子狂うなぁ)」
両面鏡をもらったとき、このひとはわたしをホグワーツのスパイにしたいんじゃないかと思った。
わたしはどう見ても闇陣営じゃないし、もしヴォルデモートさんがわたしとダンブルドアの関係を知っているならわたしほど適材はいないだろう。
…でも、なんか違うんだ。
違う気がしてしまうんだ。
わたしがやっぱりバカなのかもしれないけど、これこそが人の心に付け入ることを得意とする闇の帝王の思惑なのかもしれないけど。
悪いひと、なのに。
「・・・」
大切にされてるような、感じがしたんだ。
ケースから出してやると卿は気ままにカーペットのほうへ向かった。
ちらりとリドルを見ると、彼はわたしを見ていたようで目があった。
それに曖昧に笑って、なんだか今日は疲れたね。とだけ言った。
「んー…もはよー」
「おはよう」
「みゃー」
翌朝。
疲れたわたしはあのまま眠りこけ、いつもならぜったいありえないのに自然と目覚まし時計をかけたみたいな時間に起きた。
珍しくしっかり身なりを整え、こないだ教えてもらったグリフィンドールへの道を歩く。
今日くらいわたしが迎えに行ってみよう…!ついでに卿を散歩に行かそうかとも思ってみたけどめっちゃ嫌がられたのであきらめた。主人に似るね。おうちが一番だよね。
朝だからなのか休暇だからなのか、人通りはまったくと言っていいほどなかった。
まあでもクリスマス休暇ももうすぐ終わるらしい!
冬休みはどこも短いものだね。
勉強は不安だけど魔法使うのは楽しみだし、他のキャラクターも遠目からでいいから眺めたい。リリーとか!スネイプ先生とか!レギュラスとか!!!たのしみっ!
「あれ、アオイ?」
「ん?」
わくわくしていると声をかけられた。振り返ってみる。リーマスだ。
「あっリーマス!おはよー」
「おはよう。早いね、朝苦手って言ってなかった?」
「そうなんだけど、昨日お買いものに疲れてごはんも食べずに寝ちゃったからさー!もうおなかぺっこぺこだよー」
「ああ、だから昨日見なかったんだね。よかったらいっしょにクッキーでも食べる?」
「あなたが神か」
リーマスのお言葉に甘えてクッキーを受け取り、いっしょに頬張る。
おいしい。優しい。だいすき。
「リーマスはお散歩ー?」
「ううん、家族に手紙を出しに行ってたんだ。梟を使ってね」
「ふくろう!」
「そう。やっぱり新鮮かな」
朝食の時間に梟が郵便を届けてくれるから、わたしはすでに配達の瞬間を見たことがあるけれどやっぱりときめく。
なんか、ホグワーツって感じ、するよね…!!!
リーマスと他愛ない話をしながら太ったレディの前まで来ると、呼んでくるから待っててと優しく微笑まれた。うーんかっこいい。
おとなしく太ったレディとおしゃべりしながら待っていると(「あらあなた他寮でしょう?」「グリフィンドール志望の転入生です」「まあそうなの」)レディの向こうからシリウスとジェームズの元気な声が聞こえた。若いっていいな。
「よ、お待たせ」
「おはよう」
ひょっこり顔を出したふたりと、それに続くピーター、リーマス。
たったの1日ぶりなのに、ずいぶん久しく思えて少し肩の力が抜けた。
「おはよう!」
ああ、そうか。
いまはここが、この世界での居場所。