甘いのがお好き

その日のグリフィンドール寮は、いつにも増して賑やかだった。



もちろん悪戯仕掛人たちがアオイの歓迎会を企画したからである。
きっと彼女はグリフィンドールに入るに違いないと思っていた彼らは、勢い良く歌い出すクラッカーやしばらく光が部屋を漂うくす玉、元気よく跳ねる室内花火など数々の愉快な道具を用意した上、しもべ妖精たちに様々なお菓子を頼んでいたのだった。


しかし、ここでひとつ問題が浮上する。




…アオイは、最初にスリザリンと宣告されたのだ。









「(み、みんなが遠い…)」



ジェームズたちの粋すぎる計らいで寮生と話す機会は設けられたものの、いきなり三年生に転入した部外者である上スリザリンと一度発表されてしまったわたしを快く受け入れてくれるほどみんな甘くはない。


なんだかんだでわたしのまわりを取り囲んでいるのはいつも通り仕掛人たちだし、まあおもしろい企画だから・休暇ぶりに会う友達とはしゃぎたいから・転入生の生態が気になるから、などの理由で談話室に残ってくれている生徒のほとんども少し離れたところにいる。


…今後のわたしの学園生活はずっとこんな感じなのだろうか……べつにいいけど仕掛人楽しいし・・・


でもほんと帽子さんなんてことしてくれたの…





頭を抱えずにはいられなくて渋い顔をしていると、シリウスが新しいジンジャエールを持って隣に座ってきた。

ありがとうと受け取ると彼は軽く笑顔を浮かべて頷く。イケメン。


「ったくなんでお前スリザリンとか言われたんだろうなあ。酒でも飲んでたのか?組分け帽子」
「ねーほんと…びっくりだよ…」


まあもちろん口を開くと話題は先ほどのことで。



仕掛人たちは普通に接してくれているからそこにとりあえず安堵しているものの、やっぱりみんなと仲良くなりたい。

全員にあの帽子とのやり取りを説明して、自分は清く正しい(?)グリフィンドール生だと訴えたいけれどそれもそれでなんだかおかしい気がするし。



話し声でにぎやかな中だからなのか、珍しく声を張るシリウスに返事をしながらこのもやもやとした気持ちを吐き出せずため息をつく。

いやぁほんと意味わかんないよ…どうせリドル自身とかあの子がわたしに知られたくない未来だか過去だかがなんか絡んでるんだろうけど…(こないだの影響かまたバングルの中で寝てるし)





「なんでスリザリンって言われたんだ?行きたかったのか?」


強い魔法使うからだばかめ、とか心の中で罵っているとジンジャエールを飲みながらシリウスに尋ねられた。



「まっさかー!ほんと意味わかんないんだよー。
わたしはグリフィンドールがよかったし、ていうか帽子もグリフィンドールが合ってるって思ってたみたいなのになんか仕方なくスリザリンにいれられかけたみたいな」

「はあ?!
じゃあ帽子もお前もグリフィンドールだって確信してたのか!?!?!?」
「!?
う、うん」


ぶちぶちと文句をたれたらシリウスが大げさなまでに驚いた。
あれ、こいつこんなオーバーリアクションなやつだったっけ…キャラ違くない…?

声張られすぎて一瞬肩が跳ねちゃったんだけど。なんぞや…?



「じゃあ俺といっしょじゃねえか!!
家系が純血だからって俺も最初スリザリンにいれられかけてよー。俺も帽子もグリフィンドールだって思ってたのにだぜ?
お前もそういやそういう家系だっつってたもんな、帽子もわりと古い考えしてんのかもな」
「・・・は?」

「家系でスリザリンみてーな気味悪い寮入れられたかねえよなあ、やっぱお前はグリフィンドールが合ってるし。よかったな!」


突然まくし立てるように話すシリウスに目が点になる。


は?えっ家系??
いやめっちゃマグルですけど?


ていうかわたしが異世界から来たってシリウス知ってるのに…


「(あ、)」



ばっちん。


シリウスが他のひとに見えないようにウインクを飛ばしてきた。


一瞬イケメンすぎてそれに悩殺されそうになったけど、そうか、シリウスこうやって演技してわたしをグリフィンドールに馴染ませようと…



「(い、イケメンすぎるろ…)」




思いがけないシリウスの優しさに触れて、涙が流れるのではないかというほどの感動とときめきをこらえながらわたしはシリウスに話を合わせた。




・・・そしたら、友達できた。
(スリザリンとグリフィンドール間の溝の深さを垣間見た気がした)

























「明日もはやいしそろそろ寝たほうがいいんじゃない?アオイ、朝弱いし」


シリウスのおかげでいろんな子と話せるようになり、新しくできた女の子の友達ときゃいきゃい騒いでいたらリーマスに声をかけられた。



「え、もうそんな時間?」
「12時回ったよ」
…えっ????



リーマスはさらりと答えたけど、あれ、なんだろうなんかものすごい爆弾発言されたような…



「も、もう一回言って…?」
「?
いま12時8分だよ」
「ウソ」
「ほんと」
「ウソォ・・・!」



あまりのことに現実を受け止められず何度聞き返してもリーマスは同じことを言うし、時計を見てもたしかに12時を回っていた。



…楽しすぎて、忘れていた。





「(ヴォルデモートさんとの、11時の通信…!!!!!)」





あっこれ死亡フラグかもしれない。

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