ごめんね。
わたしは、いっしょには行けないんだーーーーー
そうなんだ。
“僕は”
“キミがいれば、それだけでーーーーー”
ドドドドド!!!
ガンッバタンッズザザザザッ
バサッ、トンッ!
「ずみまぜんずみまぜんヴォルデモートざんずみまぜんアオイですずみまぜん」
『…やかましい』
「ヴォルデモートざあああああああああん!!!」
こんにちは!違うこんばんは!!!
ただいまの時刻は0時13分、ヴォルデモートさんとの11時の通信にさらっと一時間以上遅れたわたくしアオイ・シーナは、目にも止まらぬ速さで談話室を駆け抜け自室で両面鏡(めっちゃ熱くなってた)を取り出しました。
『何をしていた。一時間も定刻を過ぎているが』
「ごめんなさいごめんなさい談話室で歓迎会を開いてもらっていて…!」
『だからといって遅すぎるだろう。それに通信の時刻を過ぎると鏡が熱を持つよう魔法をかけていたはずだがそれすらも気づかなかったのか』
「ローブのポケットにいれてたんです。でも談話室暑くて抜いじゃって…」
『フン。携帯するという意味もわかっていないのかこの阿呆め。
熱で気づかないのなら今後は燃やしてやろうか?』
「すみませんやめてくださいすみません…!」
どう考えても氷点下食い込んでるような冷たい目でわたしを見下す(実際は鏡だから位置的にはわたしの頭のほうが上なのにおかしいなあ)ヴォルデモートさんと彼に平謝りするわたし。
にゃんこの卿はそんなわたしたちには一切構わず気持ち良さそうに眠っていた。
『…まあいい、頭を上げろ。しかし次はないと思え』
「はい…すみませんでした」
しかしなんでこんなに怒るんだろうヴォルデモートさん。そんなにもわたしなんかとのお話を楽しみにしてくれているのだろうか。
…もしかしてわたし以外話し相手いないのかなわかりにくいだけでわたしのことだいすきなのかな毎日この通信めっちゃ楽しみにさしてくれたりするのかなえっなにそれめっちゃ萌え…
『なにか頭が沸いたようなことを考えていないか』
「な、ないです!」
調子に乗りました。
『…やはりグリフィンドールになったか』
しばらくの沈黙のあと(そのあいだずっと吐き気に見舞われていた)ヴォルデモートさんはわたしのネクタイを見て小さな声でそう言った。
胸元の赤色は自分が全力で望んだものだったけど、身勝手なわたしはやっぱりあのままスリザリンに入ったほうがよかったかななんてちょっと思った。
「…すみません」
『何故謝る』
「え?えっと、」
『悪いと思っていないなら謝るな。…お前にスリザリンは無理だ、どうせグリフィンドールになるだろうと思っていた』
「・・・すみません。」
少し遠くを見ているヴォルデモートさんは相変わらず何を考えているのかわからないけれど、どこか憂いを帯びているような目をしているのでわたしはなんだかいたたまれなかった。
…す、スリザリンに入ること、期待されてたかな…やっぱり。
なんでかはわかんないけど、かわいがられてるし・・・
『今日は何も問題はなかったか』
「は、はい。と…特になにも…?」
『そうか』
「・・・あっでも、」
ふと頭に蘇る、スリザリンと高らかに宣言する声と…グリフィンドール生の最初の冷たい目。
「な、なんでか。わからないですけれど…合ってないのになんか、スリザリンに入れられかけました。」
『・・・』
「どうしてなんでしょうね?ちょいちょいちょーい!ってツッコミいれたら撤回されたんですけど…」
たはは、と笑いながらヴォルデモートさんに話す。
「(…あ、)」
するとヴォルデモートさんは、目を伏せ下を向き小さくささやいた。
『そうか』
少しだけ口は微笑んでいるのにあまりにも切なく感じてしまって。
わたしはたまらなくなったのになにもできないから、鏡に向かって手を伸ばすこともあきらめてそっとスカートの裾を握った。
『もう遅い。明日から授業だろう、はやく寝ろ…まだシャワーも浴びていないのだろう』
「は、はい…」
『おやすみ』
「お、おやすみなさい」
そしてヴォルデモートさんはサッと鏡の前から消えた。
いつも別れ際は、どこか不自然に思う。
「・・・お風呂、入るか。
ねえリドル、まだ出てこないの?」
声をかけても返事はなく。わたしはため息を吐きながらネクタイをほどいた。
…やっぱり少し息苦しい。
「(なんて言ったらよかったんだろ)」
ヴォルデモートさんは時々あんな顔をする。まるで自嘲しているような、切ない顔だ。
…そのときだけはいつも無表情な彼がわらってくれるのだけど。
わたしはそのたびなんだか無性に切なくなって、しばらくなにもする気がなくなるのだった。
「ねえ卿、卿はどうしたらいいと思う?」
ヴォルデモートさんのことも、出てこないリドルのことも。
別に返事なんて期待しないまま彼を撫でて、やっぱりなかったからわたしはよいしょと立ち上がった。
横になる卿はまだ夢の中。
細身のバングルは反動でシャランと鳴いた。
…ねえ、いったいどこにいってしまったんだろう。