おともだちができました(が)

「ん・・・」
「…起きなよ、そろそろ7時だ」
「りどる…?」
「おはよう」
「おはよ…」


ふわあ、大きなあくびをしてわたしはぼやけたリドルを見つめる。ああ出てきたんだ、同じくぼやけた頭でそう思った。

リドルはベッドに腰掛けている。わたしの胸の位置くらいのところにいる彼は背を向けているけど、顔はこっちを見ていたし優しく頭を撫でてくれていた。



「いつでてきたの…?」
「どうだったかな」
「…ぐりふぃんどーるになったよ」
「そう」
「おこる?」
「べつに。そんなことだと思ってた」
「ヴォルデモートさんと、おなじこというのね」
「・・・」


伏せ気味のまつ毛はとても長い。こんなにも美しいひとがとなりにいるなんてすごいことだ。

どうしてわたしはこのせかいにきて、いまあなたのとなりで眠っていたんだろう。



「…寝ぼけてるね」
「ん」
「からだ、重い?」
「ん…」
「5分寝たらうまくリズムが合うよ。起こしてあげるから、寝な」
「うん…」


そっとわたしの目を包み込むように手で覆ったリドルの体温はいつも通りなくて。


ねえリドル、わたしの体温は君に伝わってるの?届いてる?



ヴォルデモートさんも、リドルも。

ときどきわたしの向こう側を見るような目をしてる。























「はじめまして!!私リリー・エバンズって言うの、よろしくね!
遠くより近くで見たほうがかわいいわね、とっても綺麗な黒髪だわ!」
「へ、へあ」


深みがかったたっぷりとした赤毛にアーモンド型の緑の瞳。
顔を洗って歯を磨いて着替えて…と用意を済ませて自室の扉を開くと、笑顔が眩しい女の子が突然飛び込んできた。



「もうっリリーったらぁ!アオイが困ってるじゃな〜い。
おはようアオイ、サーシャだけど覚えてくれた?」
「う、うん!金髪、青目、ウェーブ、サーシャ!」
「よくできました〜!」
「じゃああたしは?」
「え、えと、け、ケナン…?」
「惜しいなあ、ケナだよ。まあそこまでいったらなんでもいいや」


その上なんかよくわかんないけど昨日お話したお姉様がたに突如取り囲まれる。キャッキャ…しているなあ…。
あっお姉様っていってもわたしより大人っぽすぎるだけでぜんぜんみんな信じられないくらいに年下なんですけどね!!!!!!



「私昨日なんだか体調が優れなくて、貴女の組分けだけ見てすぐに部屋に行ったのよ。だからはやく会いたくて!グリフィンドールにようこそ。

リリーって呼んで、これからよろしくね」
「あっ、よ、よろしく…!」


リリーはふわりと髪を揺らし、わたしに近づいて手を差し出してくれた。
あ、あくしゅ…!こんな美人さんと握手しちゃった…!手ぇやわらかくてあったけえ…!!!!!ふにふに…


「あらアオイったら手が冷たいわ。冷え性なのね」
「うっ、うん」
「じゃあここの冬は厳しいわよ!これからまだまだ寒くなるの」
「ええええっ?!これ以上?!?!」
「そうなの、信じられないでしょう?
ふふ、何か困ったことがあったら言ってね。なんでも力になるわ」
「あ、ありがとう…!」


アーモンド型の瞳を細めるリリーはとっても明るくハツラツとしていて頼もしく見える。えげつないなリリーのコミュ力…13歳とは思えない。


さあ朝食に行きましょう、と進み始めるリリーの揺れる赤髪を見ながらうっとりする。
すごいなあ。わたしなんてもうこの年なのにまだこんなにちんちくりんだ。



そして談話室への階段を下りながら今日の授業の先生についていろいろ教えてもらった。とりあえずフリットウィック先生やマクゴナガル先生、スプラウト先生など、知ってるひとがわりと多いから安心してもよさそうだ。授業内容も性格もわたしが本でイメージしてたのとそんなに変わらなそうだし!


そういえばマクゴナガル先生は寮監だから、組み分けの後少しお話をした。
このあいだダンブルドアのところに行くまでの道でお話したときも素敵だなって思ったけど、ほんとにとても優しくて何もかも美しいひとだ。

あ、部屋の説明(もちろん一人部屋。ちなみにクローゼットからもともとの部屋に行くこともできる)とか寮風についての説明をされたあと…びっくりするくらいあたたかい笑顔で嬉しそうに「あなたはグリフィンドールだと思っていました」と言われたときはなんかちょっとドギマギしたけど。

まあでもとっても光栄なことだよね!



そんなこんなでリリーを先頭にサーシャとケナと談話室に到着すると、すぐに悪戯仕掛人たちがくつろいでいるのが見えた。
シリウスとジェームズがチェスをしているのをピーターが興奮しながら見ている(リーマスは読書中)。



「あ、おは…」


おはよう、そう言いきる前にもんのすごい勢いでジェームズが突進してきた。
え、な、なにっ、
「おはようううう僕のエンジェルリリー!マイ・スウィート・リリー!

昨日は体調が悪かったんだって?!大丈夫かい?!僕はもう心配で心配で心配でこの胸が張り裂けるかと…」


「きめえ」
「だまりなさいポッター」

声を出したのはリリーと同時だった。
それによりもんのすごい不機嫌な顔でジェームズを睨んでたリリーがわたしを見て笑う。かわいい。



「キモイとはなんだいまったく!!!
あっアオイもいたんだおはよう」
「おはよう。きもちわるいびっくりしたこんなにもきもちわるかったんだジェームズって」
「真顔でそんなに何回もきもちわるいって言わないでくれないかな、傷つくだろう!」
「傷つけ」


このやりとりにソファにいた他の三人も近づいてきてわたしに声をかける。シリウスには「こいつ毎朝これだせ病気だろ」って言われた。ジェームズは「恋の病さ…!」とか言ってるけど。きもちわる。




「そういえば昨日もアオイ、シリウスと話してたよねぇ?もう仲良くなったの〜?」

首を傾げながらサーシャが聞く。
声も話し方も見た目もかわいらしいお人形さんみたいな子だ。


「あ、わたし冬休みから学校来てたから、それで…」
「あー。クリスマス休暇に帰らない変わったやつなんてこいつらぐらいだもんなー」

なるほどと合点する栗毛で短髪のケナはちょっとボーイッシュでかっこいい。美人さんな感じ。

その言葉にやっぱり少しリーマスの顔が曇ったのはとりあえず今はおいといて…。
たぶんこの三人はわりとよく行動しているんだろう。仲良しなのかな〜系統バラバラだけど。


そんなことを考えながら三人を観察していると、まだ少し眠いのかシリウスがあくびをしながら話しかけてきた。

「とりあえず飯行くぞ、アオイ。

今日いつもより遅かったじゃねえか、新学期にテンション上がって昨日寝付けなかったのか?」
「そんな子供じゃあるまいし…!ま、まあ、寝坊はしたけど」
「やっぱりかよバーカ」
「バカとはなによー!あんたも眠そうなのに!!」
「俺はあの後も談話室で騒いでたから当然なんだよ」

それどう考えてもシリウスのほうがバカじゃん、とツッコミをいれそうになったとき。
高くてかわいらしい声に遮られた。

「ちょっとブラック!
アオイは私たちといっしょにご飯に行くのよ」


え、そうなの?

声のほうを向くと、リリーが彼を睨めつけながらそう言っている。
ん、みんなでいっしょに行ったりしないの…?



「はあ?俺らコイツのこと待ってたんだけど。それにいままでもそうしてたんだぜ?」
「それは冬休みでアオイに友達がいなかったからでしょう!いまは私達がいるもの」
「み、みんなで食べたり、し、しないの…?」
「「こいつと?ありえない!」」
「お、おう…」


どう見てもシリウスとリリーのあいだに火花が散っている。ジェームズは「僕は大歓迎だけどね!」とか言ってるけど完全にスルーされていた。



「リリーはねぇ、ジェームズとシリウスのこと嫌いなのよぉ。悪ふざけばっかりしてるから〜」
「まあそれでも他の生徒からはこいつらすっげー人気なんだけどな」
「そ、そうなんだ…」


小声でサーシャとケナがそう教えてくれた。ありゃりゃ…確かにこの状態からリリーとジェームズがくっつく図は想像がつかないなあ…



「いいから行きましょう、アオイ!こんなひとたち相手にすることないわ!」
「おいアオイ行くぞ!こんな口うるせー女より俺らとつるんでたほうが楽しいのわかってんだろ!」
「あんたみたいな女好きとアオイをいっしょにしておけるわけないでしょう?!」
「んだとォ!!!」
「いいじゃないかリリー!僕といっしょにハッピー・モーニングを…」
「あんたは黙ってなさい!」「お前は黙ってろ!」



…あ、こいつら13歳だわ。

言い合いを続けるシリウスとリリー、そしてそれにお構い無しのジェームズ。
そんなふたりにやれやれとため息をついてるリーマスとびくついてるピーターと、わたしの後ろで宿題の話をしているサーシャとケナをぐるりと見渡して思う。



…部屋で卿転がしながらまったりクロワッサン食いてえ。

- 28 -