よく考えたらあのひとはばか正直だった。
わたしに真実を告げず、車に轢かれて死んだことにして、「だけど君が気に入ったから生かしてやろう」とかテキトーに言っていたら、今ごろわたしは時空の管理人さんへの感謝と新しい世界への期待でいっぱいだったはず。
…自分のことで精一杯だった。
もう少し優しくしてあげればよかった。
恐ろしいほど気だるい中、ぼんやりとそんなことを思った。
ああ、からだが、おもい。・・・
───なんだ、これ。
いつも通り規則を破り、禁じられた森で俺たち悪戯仕掛人は遊んでいた。
そんなときなんだか眩い光がし、ピーターは怖がって止めたものの俺とジェームズとリーマスは好奇心に素直に従いその場に行ってみることにした。
そこに、いたのは、
眠る、
『女の子…?パッドフット、この子に見覚えは?』
『ねえよ』
『じゃあホグワーツ生じゃないのかな?アジア人はわりと少ないから目立つし、これくらいかわいかったら僕か君のどちらかが覚えてると思うんだけど』
艶やかな黒い髪が目を引く女。
彼女を取り巻くようにあたたかい光が浮かんでいた。
『とりあえず起こすなりダンブルドアを呼ぶなりしたほうがいいんじゃない?
凍えちゃうよ、この子』
『そうだな』
『あ、ぼ…僕が行くよ!ダンブルドアを、呼びに』
「ん・・・」
『あ、おいみんな。起きそうだよ』
ジェームズの声に下を見ると、ゆっくりと目を開いた女は、焦点が合わないかのように2、3度ゆっくりまばたきをした。
「※△α◎ρ×∞¥℃」
『え?』
何かを呟いたようだが聞き取れない。
一人言のようだが、何語だ?
『お、おい…だいじょうぶか?』
とりあえず声をかけてみると、女は驚いたのか目をぱちくりさせ、がばっと起き上がった。
『…だいじょうぶ?英語は話せるかい?』
リーマスがなるべくゆっくりはっきりその女に声をかけると、女は口を少しパクパクさせてからたどたどしい英語で答えた。
『えいごは、あまり!うまく、話セまセン!わたし、は、にほんじん、……です。ここは、どこ!でスか……?……くしゅっ!!』
寒いのかクシャミをして震える女(当然だ。12月にも関わらず薄着過ぎる)にリーマスが上着を貸してやると感極まったように礼をした。
『ここはホグワーツだよ。きみはホグワーツの生徒じゃないの?』
『ホグ…え?も、もういちど!、』
『ここは、ホグワーツです。きみは、ホグワーツの生徒ですか』
ジェームズの言葉に慌てふためく女。
頭を抱えてしばらくまたよくわからない言語を繰り返した女は、小声で聞きなれた名前を口にした。
『だんぶるどあ』
『ダンブルドア?』
『だんぶるどあはせンせいでス?あ、¥∞×…だんぶるどあは、せんせいといウもノですか?あナたたチのせんセい?』
『そうだよ。校長だ』
『こウちょう…?』
校長、という単語がよくわからなかったようだが、ダンブルドアが俺たちの先生であるとわかったらしい女は、嬉しそうなホッとしたような顔をしてから俺たちに言った。
『おねガい!オねがい!わたしはだんぶるどあに会いたイです!だんぶるどあ!!!』
『わかった。じゃあ今からつれていくよ。ところで、お名前は?』
『あリがとうごザいます!わたしハアオイ・シーナ!あ、わたしのナまえはアオイ・シーナ、でス』
『よろしくね、アオイ。僕はジェームズ、彼はシリウス、そしてリーマスとピーターだ』
すると女は口をぱかっと開けて俺たちを凝視したあと、またまばたきをして礼を言った。
『よろシくおネがいしまス…!』
騒々しい女だ。
やっかいなものに首を突っ込んでしまったかな、と軽く頭を掻いた。