リア充イベント到来しました

「・・・なにこの人だかり」

朝起きて談話室に降りると、何やら浮かれた騒ぎ声が聞こえた。
掲示物を見ているようなので、何かの知らせでもあったのかなとわたしもそれに続く。

すると、その中にリーマスを見つけた。
顔色がだいぶ良くなっていて安心する。

「アオイ!おはよう」
「おはようリーマス!体はどう?」
「うん、もう平気だよ。アオイは?」
「わたしもすっかり元気。ところでなんの人だかり?人多すぎてなんて書いてるのか見えないんだけど」

前の方に背の高い上級生がいるせいでよく読めない。ただでさえ白人さんは背が高いので勘弁してほしい、と必死で爪先立ちをしながら言うとリーマスは嬉しそうに教えてくれた。


「ホグズミードのお知らせだよ。バレンタインの日に、ホグズミードに行けるんだ!」
「えっ?あ、あの?!」
「うん。前に話したことあるよね」


ホグズミード!!!!ついに!!!!!
思わず上がるテンション。そりゃーみんなはしゃぐわな。

初めてのホグズミードに胸を高鳴らせてしまう。
ぜひ行きたいホグズミード!!!本物のバタービール飲みたい!


「いっしょに行こうよアオイ!いろんなものがある、魔法使いの村だよ。
あ、そうだ。どうせシリウスとジェームズはいつも悪戯グッズばっかり見てるから、よかっ・・・あ、その・・・えっと」
「?」

突然リーマスの勢いが小さくなる。
なんだろうと首を傾げると、少し頬を赤く染めながらリーマスは言った。


「よかったら、僕とふたりで甘いもの巡りしない?」


様子を窺うように、じっとこちらを見てそう言ったリーマス。

こ、これって、まさか。


デートのお誘いでは・・・!!!!!!!!!!!!!!!?















どうもどうもこんにちはわたしです。
齢18歳にして、5歳も年下の未来の英国紳士にバレンタイン☆ホグズミード☆スイーツ☆デートのお誘いを受けてしまいました。驚きが隠しきれません。


「えっ・・・わ、わたしと???バレンタインの日に???」
「う、うん!えっと、アオイがよければ、だけど・・・」
「も、もちろん!わたしはぜんぜんいいけど・・・!」
「ならよかった」

安堵したようなリーマスに、えーーーーっどうしたどうした誘う相手間違えてないかーーーーー?!と思いながらもくすぐったい気持ちになる。

まあでもたぶん、シリウスとジェームズがいつもゾンコにゾッコンであんまスイーツ巡りとかできてないからわたしがちょうどよかったんだろうな。
なんかタイミングがタイミングなだけにこんな雰囲気になっちゃったけど。


「アオイに食べてもらいたいものいっぱいあるんだ。僕とアオイ、わりと味の好みが似てる気がするから、気に入ってくれると思う!」
「わーー!たのしみー!!!!!」

確かにリーマスが勧めてくれるお菓子はいつもとびきりおいしい。
彼が勧めてくれるカフェなら間違いないだろう。楽しみだ。

リーマスはまだ頬を紅潮させながら、少し興奮したように続ける。

「ホットチョコレートとバタービールは絶対に飲みたいし、バレンタインだと装飾も可愛いだろうからそういうところも行きたいよね」
「うんうん」
「パンケーキも食べよう!すごい美味しいお店があるんだ」
「うん!」
「それからマドレーヌとカヌレとフィナンシェも食べたいし」
「う、うん・・・?」
「クレープとパンケーキとガトーショコラとアップルパイとチーズケーキとチョコレートフォンデュと」
「多いな?!?!?!」


うん、ね、ほら。
やっぱりこれは完全にスイーツ巡りに付き合ってくれる御付きの者がほしいっぽいね!
(ごめんね自意識が過剰な友人で・・・)
















バレンタインホグズミードを前に、どうやらホグワーツ全体が盛り上がっているようだった。

ホグワーツはリア充が多い気がする。まあ全寮制だから確かにみんな学校内で恋をするし、発展する機会も多そうだもんね。

投げやりに大量生産した友チョコ(っていうか焼き菓子とか)を交換するだけのバレンタインしか経験していないわたしとしてはなんとも胸が痛いものである。

まあでもあれはあれでジャパニーズバレンタインの正しい形だったのだろう。


懐かしい日々に想いを馳せる。
家族や先生にも、いつもの御礼ーってよく渡したなあ。半分お返し目当てだったけど。

そうだ、せっかくだしヴォルデモートさんにも何かあげようかな。この間ヘアピンもらったところだし。


・・・ヴォルデモートさんがわたしに何を望んで関係を持とうとしてくれているのかはやっぱりわからない。けれど、いくら考えたって絶対わからないんだから、ひとまずは関係を深めたっていいはずだ。

問題を先送りにしている感はまあ、否めないけど。
でも、深く付き合うことでわかることもあるかもしれないし・・・っていうか悶々と悩んでいるのは性に合わない。疲れた。

でもあの人チョコレートとか食べるのかなー?というか、どうやって届けたらいいのかなあと悩みながら首を傾げる。
バレンタインまであと二週間。ちょっとよく考えてみよう。




















アオイがヴォルデモート卿にどうチョコレートを届けるかについて思案している頃。
リーマス・ルーピンはひとり、頬を赤くして悶えていた。



「ッアーーーーーーー!」

やってしまった。やってしまった。勢いに任せてアオイをバレンタインに誘ってしまった。


顔が熱を持っているのを感じながら、廊下をどんどん進む。あのあと、寝坊しているピーターを起こさないといけないという理由でアオイと別れて、そこから別行動になっているんだけど、僕はいったいなにをサラッとやってしまったんだ。


「(恥ずかしい)」


最初は軽い気持ちだった。
いつもホグズミードに行ってもだいたいゾンコがメインになるから、一度全力でスイーツ巡りをしたいと思っていたのは本当。
アオイもきっとそれを楽しんでくれるだろうと思っていたのも本当。

だから軽く誘ったんだけど、なまじっか誘っている途中で自分がしていることの重大さに気付き変に意識をしてしまった。アオイにも伝わってしまっているだろう。


「(恥ずかしい恥ずかしい)」


でも、受け入れてくれた。オーケーしてくれた。
まあアオイの性格上誘われたらあんまり断らないだろうし、そもそもあまり深くは考えていない気もする。でも、バレンタイン、ふたり、これは完全にデートだぞ。ジェームズやシリウス、ピーターにはなんて言おう。変に勘ぐられてしまうのではないだろうか。


僕は次の授業が空きコマなのをいいことに、ただひたすらホグワーツの寒い校舎を足早にあてもなくさまよった。



「ハァ・・・だけど」


ゆっくり話してみたかったんだ。二人で。

いつも5人でいるから。もっとちゃんとアオイと話してみたいなって思ってたんだ。


僕なんかがそんなふうに思ってはいけないのかもしれないけど。

僕みたいなやつが、アオイに近づくのは間違いなのかもしれないけど。でも。でも。甘いものを、一緒に食べるだけだから。そう。


「(困ったな)」


だったらなんで、こんなにドキドキしてるんだろう。



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