いつだって戻りたいものは、

「そういえばリドルってごはん必要としないじゃん」
「うん」
「食べれることはたべれるの?そもそもそれ自体も無理なの?」
「別に食べることはできるよ。味もわかるし」
「そうなんだ」
「・・・バレンタイン?」
「えっなんでわかったの」


寒い日はやはりおこたと猫に限る。
こたつにもぐりながら卿を愛でつつリドルに話しかけると、さすがリドルと言うべきか質問の意図を先読みされてしまった。

ヴォルデモートさんにチョコレートを作るならリドルにもあげないとだし、そうなったらもうジェームズ達にもリリー達にもあげたい。大量生産には慣れている。


「・・・日本の文化なんでしょ、バレンタインの友チョコ・義理チョコ。」
「うん。よく知ってるね。
チョコレートすき?」
「別に嫌いじゃないけど」

驚いたな。ジャパニーズバレンタインは魔法界にまで浸透しているのか。あんな経済を回すためだけのイベント。

まあでもそれなら説明する手間も省けてちょうどいい。どんなチョコレート作ろうかなあ。



「・・・アイツにもあげる気?」
「アイツって?」
「一人しかいないでしょ」
「ヴォルデモートさん?うん、もちろん」


でもどうやって渡すか困ってるんだよね、また通信の時に相談しなきゃ。と呟くとリドルはため息をついた。


「ブラック家の長男が、注意するよう言ってたように思うけど」
「あ。聞いてたのあの話」
「キミの話はだいたいぜんぶ聞いてるよ」

さらりと答えるリドルに眉を顰める。
わかってはいたことだけど、プライバシーもうちょっと守ってくれてもいいのでは・・・。


「アオイ、お前は馬鹿なんだから」
「!」
「もうちょっとそれを、ちゃんと自覚しないといけないよ」
「なにそれ」


突然馬鹿呼ばわりされたことにムッとするが、リドルはひとつおでこに口づけを落として消えてしまった。

えええキザ。えええ何この言い逃げ。



残されたわたしは卿の耳の後ろをカリカリ撫でてやりながらため息をつくしかなかった。

・・・馬鹿なことくらい、わたしだってわかってるよ。



「図書館行ってくるかー・・・」


頭をかきながら、わたしは部屋を出た。


























図書館についた。チョコレートのレシピを探さないといけない。
こういうところ、アナログでめんどくさいなーとおもう。
昔は携帯で検索すれば一発だったのに。

まあでもぶうたれていてもしょうがない、レシピのコーナーはどこだろう。
普段ぜんぜんそんなとこ行かないからわかんないやとさまよっていると、レギュラスを少し遠くに見つけた。今日も可愛い。

「レギュ!」
「!
・・・どうも」

さっそく声をかけると、レギュラスはこっちを向いてぺこりと一礼した。ほんとうにかわいい。足早に近寄ってしまう。

「課題ですか?」
「ううん、レシピの本探してて」
「レシピ?」
「バレンタイン用のチョコレートレシピ」


答えると、レギュラスが目をパチクリさせた。おおぉものごっつかわいい。シリウスのウン十倍はかわいい。


「そういうお相手、いるんですね」
「あ!ちがうの!義理チョコ!レギュにもあげる!」
「?」

今度は首をこてんと傾げる。なんだこのかわいい物体は・・・と思いながら、義理チョコについて説明した。
リドルが博識だっただけで、やっぱり魔法界にはまったく浸透していないもよう。




「へー、そんな変わった文化があるんですね。まあでも確かに経済を回すという観点からいくと成功ですね」
「うん。それにわりと楽しくて好きなんだよね、あのイベント。女子間でキャイキャイする分には楽しい」
「確かにそうでしょうね。レシピのコーナーならあっちにありますよ」
「あ、ありがとう」

指差してもらったほうを見る。なるほど、あんまり行ったことないな。そりゃ気づかないや。


レギュラスにお礼を言った後、そういえば、と口をまた開く。


「いま課題途中?」
「はい。アオイさんは課題残ってないんですか?」
「きょう出し終えたところ!ねー、隣でレシピ見ててもいい?ジャマ?」
「別に期日が迫っているものもないですし、お好きにどうぞ」
「やったー!」

そしてふたりで並んで座った。
おお・・・なんかめっちゃ仲良くなれそうでは・・・!






どのレシピにしようかなあ、ヴォルデモートさんには直接渡せないだろうから焼き菓子のほうがいいかなあ、などと思いながら良さそうなものをメモに書き溜めていく。

クッキーとかのほうが大量に作れていいだろうか。それならヴォルデモートさんでも紅茶といっしょに食べてくれるかも。


「・・・最近、よく噂になってますね、アオイさん」
「ふぇっ?」


考えていたら突然レギュラスに声をかけられた。


「体はもう大丈夫なんですか?」
「あ、うん。ちょっと冷えにやられたみたい」
「ならいいんですけど、無理をしないでくださいね。
・・・この間は、ルシウス先輩とアオイさんが一緒に歩いていたので驚きました」
「ああ!すれ違ったね」


この間ルシウスさんに呼び出されて歩いていたときのことを思い出す。
確かにすごいびっくりした顔でこっちを見てたような。


「・・・貴女は不思議だ。まるで、どこの寮にも所属していないように見える」
「うーん。まあ、転校生だから浮いてるしね」
「そういうのとは別の次元の話ですよ。
だいたい今こうして、僕と貴女が座っていること自体ほとんどの生徒からしたら信じられないことです」
「そう?」


なんだかなあ、と思う。
本当にホグワーツの寮制度は他寮との溝をあまりに深める気がして、よくない気がする。

別に寮が違ったって、仲良くすればいいのに。



「寮とか関係なく、仲良くしたいけどね。わたしは。
寮内だけで生きてたって狭いし息苦しいだけでしょ?」


そう。
学校なんて、そこを離れればただの思い出。


変な風習に縛られたって、5年もすればただの過去になる。ほとんど覚えていない可能性だってある。

小学校のときに仲がよかった子。中学で仲がよかった子。高校で仲がよかった子。そして卒業した後も、仲良くいられるのはどれくらいだ?


まあ、わたしはもう昔の友達たちとは会えないんだけど。



「・・・アオイさんは子供っぽいのに、たまにひどく年上に見えます」
「(まあ実際キミより7個上だもんなー)
そうかな?」
「はい。・・・変わったひとですね」


よくわからないけど、レギュラスは少し笑っているように見えたからまあいっか。


課題がひと段落ついたらしいレギュラスと二人でどのレシピが美味しそうか見る。
少しずつ彼が打ち解けてくれているように思った。


「どのクッキーがいいと思う?」
「チョコチップとか、おいしそうですけど」
「じゃあそれにしよっか」


みんなが仲良くハッピーでいられるような魔法を、このクッキーに込められたらいいのに。

なんて、バカみたいなことを考えた。
2月のホグワーツはどこまでも寒い。


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