「バレンタインにクッキーをお贈りしたいんですけど、どういう手段を取るべきですか?ちなみに手作りなので日持ちはしません!!!」
『・・・』
いつもの通信の時間。
ヴォルデモートさんに素直に聞いてみると、何故か彼は思いっきり眉を顰めた。
『どこの世界に闇の帝王に手作りクッキーを贈ろうとする阿呆がいるんだ』
「えっと、ここに???」
『・・・ハァ』
「あっもしかしてクッキーお嫌いですか?」
『そういうわけではない』
ヴォルデモートさんは、こうしていると。
普通の、少し気難しい、ただのめちゃめちゃ美しいお兄さんにしか見えない。
「梟で直接送るとかって厳しいですよねえ」
『無理に決まっているだろう。梟ごときが見つけられるようなところに陣を置くわけがない』
「確かに」
じゃあどうしよっかなあ、と思っているとヴォルデモートさんがもう一度口を開いた。
『・・・マルフォイ家に送れ。そこを経由すれば受け取れる』
「あ、なるほどー!そうします。」
確かに言われてみればそれがいちばん安全かもしれない。ルシウスさんに住所聞かなきゃいけないのはちょっと嫌だけど。
そうだ、アブラクサスさんにもついでにクッキーあげよう。どんだけ焼くんだ自分。まあたまにはいっか。
『・・・お前が城外に出るタイミングがあれば、その時でもいいけどな』
「城外?」
『3年だとホグズミードに出ることもあるだろう』
「ああ!バレンタインの日に出ますよ。もう予定入っちゃったんですけど・・・えっでもそれってヴォルデモートさんがホグズミードまで出てきてくださるってことですか?」
『そうだ』
「いやそれは!!!大混乱です!!やめましょう!!!申し訳ないですし!!!!!!!」
ホグズミードに突然闇の帝王。
もしバレたらどうするんだ。そしてもしいっしょにいるところが見つかったりしたらどうするんだ。っていうかバレたら魔法界中大混乱では・・・!!!
「あっでも、ホグズミード経由してわたしがヴォルデモートさんのお屋敷に行くとかなら可能なんですかね?例えばアブラクサスさんに道案内お願いするとかして・・・」
『不可能ではないと思うが、教師陣の監視網に触れるだろう。アブラクサスにもあまり関わらせたくないしな』
「?なんでですか」
『なんでもだ。とりあえず、今日はそろそろ寝ろ』
あ、都合悪くなったから逃げたなヴォルデモートさん。
ヴォルデモートさんはよく、都合の悪い話が出ると通信自体を無理やり終わらせてしまう。
わたしもその時は、一応空気を読んで大人しくそれを受け入れるようにしている。
「今日もありがとうございました。おやすみなさい、ヴォルデモートさん」
『ああ。ゆっくり休め』
そしてヴォルデモートさんとの通信が終わった。
クッキー。
喜んでくれるといいな。
(そもそもちゃんとおいしいもの作れるかどうか、だけど)
「で、なんだいパッドフット。こんなところに呼び出して、告白かい?」
「ンなわけねーだろ馬鹿プロングス。・・・ちょっと寮室とか談話室じゃ話しにくくてよ」
それは昼のこと。
何やら思いつめた様子のシリウスに、ジェームズがどうしたのか聞くと、夜少し話したいとのことだった。
そしていま、二人は窓から欠けた月が覗く空き教室で腰掛けている。
「アオイとムーニーのこと?」
「!」
「図星か。ムーニー、談話室で誘ったから広まっちゃってるよね。
今日はアオイと二人でマグル学だったでしょ?なんか言ってた?」
「いや、アイツは別に・・・」
「まあアオイは気にしないか」
ジェームズは自分の癖毛をくるくると指で遊びながら話す。
「気にしてるのはパッドフットだよね。わざわざ僕を呼び出すなんて珍しい。
ムーニーの秘密に気づいたとき以来だ」
「いやー、なんつーか、気にしてるっていうか・・・こう・・・」
「煮えきらないなあ」
そう親友に言われ、シリウスはひとつ大きく息をついて改めて口を開いた。
「・・・ムーニー、やっぱアオイのこと好きなんだと思う?」
「さあ?まあそうなんだと思うけど。で、キミもそうなんだね」
「いや!別に俺は!」
「顔真っ赤だよ」
クスクスと笑うジェームズに、シリウスは犬のように唸る。わかりやすい、とジェームズは目尻を下げた。
「珍しいね。初恋かな?ホグワーツ切っての色男がついに!」
「うっせェ」
「ま、なんにせよムーニーと二人で話してみたら?話さないとわからないこともあるでしょ。
それに僕たち仕掛人の仲は、ちょっとカワイイ女の子がでてきたくらいじゃどうにもならないよ。わかってるだろ」
「・・・わかってるけど」
ガシガシガシ。
シリウスはため息をつきながら頭を掻く。
「応援したかったんだよ、ムーニーに好きなヤツができたんなら。」
「ムーニーもきっと、同じことを言うさ」
「・・・アイツに言ったら、マジで身を引いて応援してくれそうじゃん」
「そのときは殴ってでも戦わせるんだよ」
殴ってでもって・・・とシリウスが目をパチクリすると、ジェームズは「まあそれは冗談としても」と改めた。
「いいじゃないか!青春に恋はつきものだ。まあアオイのことだから、二人まとめてフラれるとかもありそうだけどね」
「ンな贅沢な!」
「いやーでもアオイ、ああ見えて僕らの5歳上だからまともに取り合ってくれない可能性あるよ?」
「そういやそうだった・・・」
アイツほんといつも年齢忘れちまうなあ、とシリウスが呟くとジェームズも同意を示した。
「応援してるよ。もちろんムーニーもアオイが好きなら、ムーニーのことも応援するけどね」
「おう。当然だ。俺の分までしてくれ」
「で、どの辺が好きなの?」
「・・・別に。
っつーか俺はまだめちゃくちゃ好きっていうよりはちょっと気になるなくらいで」
「はいはい」
ケラケラと笑うジェームズに、シリウスは鬱々とした気持ちを少し吹き飛ばされたような気がした。
どこが好きかなんて、そんなのよくわからない。
でもこの気持ちが恋なんだろうと、どうしても思ってしまう。