カカオ××%

「じゃあ梟さん、よろしくね」
「ホー」


朝。
一番最初にわたしは梟小屋へ向かい、マルフォイ邸へと手作りクッキーを送った。これでアブラクサスさんとヴォルデモートさんに届くだろう。

この前アブラクサスさんからはかわいいハンカチ、ヴォルデモートさんからは素敵なヘアピンをいただいたので、本当に気持ち程度のお返しでしかないけれど受け取ってもらえればなあと思った。



今日はバレインタインデーだ。
そして、ホグズミードに行く日でもある。

初めてのホグズミードに胸が高鳴った。リーマスのエスコート付きなんてマジでわたしにはもったいないほどの贅沢である。
ちょっと前なら考えられないことばっかりだ、と思った。


ホグワーツの冬は本当に寒い。朝は尚更だ。
ぐるんぐるんに巻いたマフラーに耳あて、手袋、ローブでまるでだるまみたいだなあ自分、と一人で少し笑う。

まあでもこれだけ寒かったら手作りのクッキーも傷まないだろうからよかったかもしれない。もしあの物体に何か粗相があってヴォルデモートさんの体調に少しでも悪影響が出ようものならえらいことになる。
・・・まああれしきのものでやられるほどヤワじゃないか、ヴォルデモートさん。その前に誰かに毒味させる?いや魔法で様子見る?そもそも食べない?

どの可能性もある気がしたけど、でもなんとなく捨てられることはないような気がした。
自信家過ぎる、かなあ。


「(1回部屋に戻ろう)」


わたしはそう思い、校舎へと足を伸ばした。






















「アオイさん?」
「ん」


校舎内を歩いていると、少し高めのかわいらしい男の子の声に呼び止められた。



「レギュラス」
「おはようございます」
「おはよー」


振り向いた先にいたのはレギュだった。かわいい。


「どうしたの?」
「あ、両親に手紙を返そうと思って・・・」
「そうなんだ、えらいね」


そう言った彼の手には手紙が握られている。そういえばたまにシリウスの方にも届いているようだった。一切返してないみたいだけど。

そりゃあレギュのほうに執心するだろうなあ、と思った。


「アオイさんは?」
「ああ、ちょっとバレンタインのプレゼントを送ってたの」
「前に言ってたものですね。上手にできました?」
「うん。あ、レギュの分もいまあるよ」


まあレギュの分っていうか、誰かにすれ違っても渡せるようにとりあえずカバンの中に数個包みをいれておいただけなんだけど。

そう思いながらカバンを漁る。無事に小さな小包を掴むことができた。


「いいんですか?」
「もちろん。日頃のお礼」
「そんなお礼をされるようなことはしてないですけど」
「勉強教えてくれるじゃん」


そう言いながら笑って渡すとレギュラスは少し頬を染めながら小さな声でありがとうございます、と言った。

レギュまじ世界一かわいい。
永遠に餌付けしたい。



「そういえばアオイさんは今日ホグズミードですよね」
「うん。レギュはまだ行けないんだよね」
「三年生からなので。楽しんできてくださいね。
兄達と行くんですか?」
「あ、ううん。今日はシリウスとは別行動で、同じグループのリーマス・ルーピンと二人なの」


何の気なしに話すとレギュラスは驚いたように少し目を見開いた。



「・・・デートじゃないですか。僕にこんなもの、渡してていいんですか?」
「あ、そういうのじゃなくて。向こうもわたしも悪戯より甘いものが好きだから、シリウスたちはゾンコに行くけどわたしたちはスイーツ巡りしようって」



この説明するの何度目だろう、と思いながら話す。よく考えたら日本よりこっちのバレンタインの方が「本命と過ごす日」感強いんだろうなあ、義理チョコ文化なんてないし。



「なんだかそれも口実に取れなくないですが・・・貴女がそう思うならそうなんでしょう」
「そだよー、第一わたしのことなんてあの子たちなんとも思ってないし。
レギュが3年生になる頃にはわたし独り身でみんなリア充、なんてありそう。そのときはいっしょにホグズミード付き合ってよ、もしレギュもお一人様だったら」


まだ少し眉を寄せているレギュラスに冗談めかして笑いながら言うと、彼はなぜか呆れたように肩をすくめた。


「・・・年上なのに鈍感ですね」


ではありがとうございました、と会釈して彼は去っていった。
し、辛辣である・・・ちなみにわたしは君が思っているよりさらに年上だ・・・。


イギリス人はそんなにもデートに敏感(?)なんだろうか。でもまじで今回のはそんなんじゃないんだよー、と思いながらわたしもレギュに背を向けて歩き始めた。
































「ねえマグル学のレポートの提出って明日までだっけ」
「・・・」
「明後日だっけ?」
「・・・」
「ねー聞いてんのシリウス」
「ん?・・・あ、おう・・・明日」


あの後一旦身支度を済ませに部屋に戻り、時間になったのでホグズミードに行くための集合場所へと向かった。
許可証を見せるため並ばないといけないのだ。ダンブルドアから送られてきた許可証を持っていつも通りみんなで並ぶ。

にしてもなんだかシリウスの様子が変だ。話しかけても上の空というか不機嫌というか、せっかくのホグズミードなのにどうしたんだろう。風邪でも引いたのかな。


「シリウス、なんかボーッとしてない?」
「・・・別に。」
「ほんと?なんか体調悪かったりしない?お腹痛いとか」
「痛くねえよ、お前はオカンかよ」


返ってきた返事はあまりにもぶっきらぼうだった。なんだなんだなんか嫌なことでもあったのかなー。

首を傾げたけれど、まあシリウスは割と気分屋なところがあるからとりあえず放っておこうと思った。ゾンコ行ったら機嫌も治りそうだし。


「次の人ー」
「あっはい!」

そうしていたら順番がきたので許可証を見せる。続いてリーマスも許可を得て、他の3人も終えた。


「じゃ、こっから別行動で!どっかで合流したらそのときはヨロシク」

とりあえず3人に向き直って言う。


「またあとで」


隣にいるリーマスも笑顔で爽やかにそう言った。
ひらひらと手を振るとなんだかいよいよ二人行動なのかー、確かにデートっぽくて照れるなあ、なんて思った。


「・・・おう。オレらはゾンコ行くから」
「お互い楽しんでこようね!」


相変わらず不機嫌そうなシリウスがそう言い、続いてジェームズがグッと親指を立てた。
そもそもわたしとリーマスが二人でホグズミードに行くこと自体知らなかったらしいピーターは驚きながらも頬を赤く染めていたけれど、説明するのも面倒だから後の二人に任せよう。


「じゃ、行こっか。あっち?」
「うん」


そして3人に背を向けてわたしとリーマスは歩き出す。まず目指すのはリーマスオススメのカフェである!


「最初に行くところは何が有名なんだっけ?」
「ホットチョコレートとアップルパイ」
「さいこう!」



この寒さの中飲むホットチョコレートはめちゃめちゃ体に染み入りそうだ。
想像するとよだれが出そうだったので、わたしはリーマスとの会話に集中して歩き始めた。

































「(ボーッとしてない?って思うならもうちょっと気にしてくれてもいいんじゃねえの)」


去っていくアオイとリーマスを見ながらそんなことを思って、自分の小ささに辟易した。
なんだよ、リーマスをけしかけた時はあんなにカッコつけられたのに。


情けない、とひとつため息をつく。



ボーッとなんてしているわけがない。
毎回楽しみにしているホグズミードに行くというのに。

・・・そう自分に言い聞かせるも、実際はマジであの二人が付き合ったらどうしよう、なんてそんなことばかりが頭を駆け巡っていた。情けない。自分でも笑える。昨日もバカみたいな夢を山ほど見てあまり寝られなかった。

別に女なんて掃いて捨てるほどいるのに。たとえアオイが他の男と付き合ったって、別にどうってことないはずなのに。


「最初に行くところは何が有名なんだっけ?」「ホットチョコレートとアップルパイ」「さいこう!」そんな声が遠ざかっていくのが聞こえた。
なんだよマジで、アオイめちゃめちゃ嬉しそうじゃねえか。あんなに何でもないとか言っていたくせに。


眉を寄せるオレに気づかないまま、ピーターは声を上ずらせて言う。



「ふ、ふたり、いまそんな感じだったんだ?!」
「・・・」
「エッ、ご、ごめん・・・」

思わず睨んでしまい縮こまったピーターを見て、ジェームズはポンとオレの肩を叩いてなだめるようにしながら笑った。


「ははは、まあまあとりあえずゾンコを楽しもうよ」


ふたりの背中が小さくなっていく図は、予想していたよりこたえて頭が痛くなった。
・・・苛々する。


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