「ねえリーマス、なんかシリウスさっき機嫌悪くなかった?」
「・・・そうかい?」
今日はアオイと二人きりのホグズミードデートの日だ。
正直めちゃめちゃ緊張している。バレないように全力で頑張っているつもりだけど、めちゃめちゃ緊張している。今日のためにお店もものすごい調べたし、テスト勉強くらいの勢いでどこに何があるとかなにがおいしいとかどういうコースで回るべきか、ここが混んでいたらどうするべきかなどをしっかり叩き込んだ。
正直今年のホグズミード事情について僕より詳しい男はいないと思う。誰か褒めて欲しい。
っていうか、なんでここまで頑張ってるんだ僕・・・。
「うん。やっぱリーマス取り上げちゃって寂しかったのかねえ、みんなほんと仲良いよね〜」
ちなみにそんな僕が今日エスコートするアオイはこんな調子で、あのわかりやすいシリウスの態度にまったく気づいていない。
年上なのに、鈍感だなあ・・・そう思った後、「年上だからこそ僕らが自分に恋愛めいた感情を抱くことはない」と思っているんだろうという事実に気づき少しため息をつきそうになる。
まあ、アオイからしたら僕らなんてほんとうに子供だもんね・・・。
「もうすぐ着くはずだけど・・・ウワッ、あれだ」
「ひぇー、すごいひと」
そんなことを考えていたら目的地が見えた。
いや、正しくは目的地に並んでいる人だかりが見えた。
これは・・・まあ予想してたけど、二時間くらい待たないといけないんじゃないか・・・。
ちらりと横目で見ると少しアオイの顔が引きつっている。寒い中待つのは嫌だという気持ちと、せっかく連れてきてもらったから嫌がるわけには、という気持ちが表情から見て取れる。
わかりやすいなあ、と思わず笑ってしまいそうになった。
「・・・実はここ、バレンタインのときだけ出すメニューがあってそれがものすごい人気なんだ。それも食べてほしかったんだけど寒い中並ばせるのもあれだし、アップルパイは今度にして別のお店に行かない?たぶんそっちはそんなに混まないとおもう」
「そうなんだ、詳しいね!せっかく見てくれてたのに残念だけどそうしよっか・・・」
「また行こう、それに別の方のお店はクリームブリュレがおいしいらしいんだ。僕もまだ行ったことはないんだけどね」
こっちだったかな、と体の向きを変える。するとアオイは目をキラキラと輝かせて言った。
「いっぱい調べてくれてたんだね・・・ありがとう!」
あまりにも嬉しそうにそう言うものだから、ドギマギしてしまって返答が少し遅れた。恥ずかしい。
ああ、やっぱり。
アオイは笑顔がとびきりかわいい。
寒いねと笑うアオイはいつもより近い距離にいるようで、肩が触れる度心臓が少し跳ねる。
初めてのホグズミードに頬を染める横顔はどこまでも嬉しそうで、なんだかつられて自分まで笑顔になった。
「・・・そんなにアオイとリーマスが気になるなら、見に行く?」
「はっ?!べ、べつにっ、き、気になってねえーし!」
「はいはい」
ゾンコの悪戯専門店。
先ほどリーマス達と別れ、僕ジェームズはシリウスとピーターといつも通り優秀な悪戯グッズを探しに来たんだけど、どうにもシリウスの様子がおかしい。
ずっと上の空でディスプレイの悪戯にことごとく引っかかり、指を噛まれるわ嫌な臭いがするスプレーをかけられるわ絵の具がローブに付いているわでもう目も当てられない状態だった(何度も対応してくれた店員さんに申し訳ない)。
しかもところどころピーターが巻き添えをくらっていて気の毒でたまらない。
にしても女の子に言い寄られる数も多く、それなりに遊んで来たプレイボーイがこうなるとは。恋愛とは恐ろしいものだなあ、と親友兼悪友を見ながらため息をつく。
ああ、また何かに指を挟まれている。まったくこのままじゃディスプレイを壊しかねないぞ。
見兼ねて僕はやれやれ、と口を開いた。
「・・・じゃあ僕が気になるから二人を探すの付き合ってよ」
「おおおおお?!じぇ、ジェームズがそう言うなら仕方ねえな、手伝ってやるか!!!」
「(めんどくさ)」
僕の提案を待っていたかのように食い気味で反応してきたシリウスは、そう言うやいなや即座に店外へと急ぐ。あまりにもわかりやすい相方に頭が痛くなった。思っていた以上にお熱のようだ。
初デートを頑張るリーマスには悪いけど、もうこれ以上お守りをしきれない。なるべくバレないようにするから許してくれよと心の中で謝った。