「えーもう帰んないといけないの?やだぁー・・・」
「年上のくせにそんな子供みたいなこと言うんじゃねえよ」
「だってー」
三本の箒に行ったあと、次のホグズミードまでの食糧を買っておこうということになりハニーデュークスへと向かったもののお菓子があまりに多い上に魅力的すぎて選びきれない。どれも素敵だなあと目移りしていたらそろそろ時間だぞ、とシリウスに言われてしまった。
つらい。ずっとここにいたい。勉強したくない。魔法使えるの楽しいけど勉強しんどい。
「シリウスたちはホグズミード慣れしてるのかもしれないけどわたしここ来るの初めてなんだもんー。名残惜しいよー」
いくらまた来れるって言ってもさー、と言いながらわたしは蛙チョコをカートにいれる。何個いれるべきなのかもわからないからほんと困るわ。いや別にしもべ妖精さんたちにおねだりすれば甘いものはいくらでももらえるんだけどさー。
「・・・そんなに気に入ったのか、ホグズミード」
「そりゃそうじゃん。そもそも観光してる感じが楽しい、日本にはないしねえこの風景」
雪まみれなところはそりゃ日本全国探せばいくらでもあるけれど、建築物がそもそも違うしやっぱり店の内装もぜんぜん違う。ちょっと目に毒なくらいポップでキュートで見ていて飽きない。それこそまだまだカフェの開拓もしたいし、せっかくだからゾンコにも行きたくなってきた。いや、なんかシリウスのローブがめっちゃ汚れてるからちょっと怖いけどさ(ディスプレイの悪戯に引っかかったらしい、シリウスでこれならわたしもっとひどいことになりそう)。
「んーまあ、もうちょっと待ってろよ。そしたらいつでも連れてきてやるから」
「?どういうこと」
「まだナイショ。そのうち教えてやるよ」
そう言ってシリウスはにやりと笑った。おお、イケメン・・・ローブはボロボロだしなんか嫌なにおいするスプレーかけられたらしくてちょっと臭いけど、イケメン・・・。むしろその状態でこんなかっこつけられるの才能では・・・?
なんてしょうもないことが真っ先に頭を締めてしまったけれど、たぶんいま忍びの地図を作っている段階なのだろう。おそらく。
だとするとやっぱり、まだアニメーガスにはなっていないんだろうなあと1人で勝手に考える。ジェームズとシリウスは学年の中でも抜きん出て優秀だけれど、それでもやっぱり3年生だもんなあ。いや、3年生で忍びの地図作ってるあたりやばいけれども。脳みそちょっと分けて欲しい。
そんなことを思いつつ、もう本当に時間が厳しいらしいのですでに会計を済ませたシリウスと別れてレジへと向かう。さっきまで違う棚を見ていたリーマスと列でいっしょになった。
リーマスが穏やかに話しかけてくる。
「アオイ、なに買うの?」
「えっとねー、前にリーマスが勧めてくれたやつとねー、蛙チョコと百味ビーンズとあとなんかおいしそうなトフィーがあってー」
「ああ、それ僕も迷ったんだよなあ。違うシリーズで期間限定ものが出てたからそっちにしちゃった」
「え、そんなの出てたの?!気づかなかった」
リーマスのカートを見てみると、たしかに期間限定と書かれている甘くて美味しそうなトフィーがあった。うわーーーーそっちにすればよかったかもーーー!!期間限定ならもっと主張してよー!!!
「おいしそう、えーーーわたしもそれ買いに戻ろうかなあ」
「戻るの面倒でしょ?けっこう買ったからアオイも一緒に食べようよ」
「えっほんと?!いいの?」
「もちろん」
「じゃあこっちのやつもあげるから、また半分こしよー」
そう言って笑うとリーマスも嬉しそうに笑う。
今日は本当にリーマスがいろいろ調べてくれたおかげで楽しかった。
うっかり何度かまるで恋人同士のデートをしているかのような錯覚を抱きかけるくらいリーマスは紳士的にわたしをエスコートしてくれた(ほんとわたしみたいなちんちくりんが思い上がってごめん・・・しかも5つも年上だというのに身の程知らずでごめん・・・)。
なんとなくリーマスとの距離が縮まったような気がして嬉しい。リーマスはバックボーン的にしょうがないけれどいつも少し距離を感じていて、もっと仲良くなりたいと思っていたら。・・・まあ、ヴォルデモートさんからもらったヘアピンとこんなバングルつけてるような女が思っていいことじゃないかもしれないけどさ。
そう思うと、改めて卑怯なことをしていると胸が苦しくなる。
わたしはいまこうやっていろいろなことを誤魔化して学生生活を楽しんでいるけれど、結局良心の呵責に咎められることなく自分が素のままでいられるのはリドルとヴォルデモートさんといるときだけなのだ。それはまるで悪事の共有者のようで。
「(ヴォルデモートさんに関しては、共有者というよりもっと遠いところにいるけれど)」
あのクッキー、お口に合ったかなあ。
通信の時間になったら聞いてみよう。そう思いながら買い物を終えて、みんなで一緒にホグワーツへと帰った。
今日はなかなか忙しかった。
ホグワーツに戻ってからは仕掛人たちと別れて、リリー達女子3人にクッキーをあげた(それは簡単だった、喜んでくれたし)。
それからセブルスに渡し(ものすごい凝視されたあとちょっと頬が染まったのでたぶん照れてた)、次いでルシウスさんへ(すごい引きつった顔で受け取ってくれた)。
スリザリン組は仕掛人たちに見つかると面倒なことになるので忍者のようにコソコソと近寄りそっと小包を渡さないといけなかったからなかなか大変であった。うん、まあそのせいでセブルスとルシウスさんは最初顔が固まってたんだろうな。
その後ダンブルドアに会いに行って(道中出会ったマクゴナガル先生にも渡した)お茶をしつつ最近の生活はどうかなどを話した。
そして自室に戻って一息つく。こたつに入るとあたたかく、擦り寄ってくる卿は相変わらず世界一かわいく、なんというか今日は本当やり遂げたな・・・という達成感があった。いや、まだヴォルデモートさんとの通信残ってるんだけど・・・!しかしちょっとそれまでこたつで昼寝しようかな、疲れたし。などと考えながらずるずると体をこたつの奥へと沈めていく。ついに寝転がる態勢になったとき。
『なに寝ようとしてんの』
ひどく不機嫌そうなリドルの声がした。
「あっリドルただいま。ヴォルデモートさんの通信までに起こして、寝る」
「寝る、じゃなくて」
いい目覚ましがあって助かるわーとわたしがこたつ布団を顎付近までしっかりかけたところ、何故か実体化までしたリドルがとなりに腰かけて威圧的な眼差しを送ってきた。
なんだなんだ、とわたしは片目を閉じながらリドルの方を見る。無理ねむいから邪魔しないでほしい。
「なによー、後にして」
「僕の分のチョコは」
「は?」
「僕の分のチョコはって言ってるんだけど」
がばっ!
リドルはわたしの布団を剥いでせっかく入れたこたつの電源を切る。おいおいやめてくれよ寒いじゃないかとわたしは彼を睨みつけた。
「昨日あげたじゃん、食べたじゃん」
「あれは味見用だろ。普通ちゃんと僕の分もラッピングして用意しないの?馬鹿なの?」
「ええぇ・・・あんたあれちょっと甘すぎるとかダメ出ししてたじゃんいらないんでしょ・・・」
「それとこれは別問題。」
なんてめんどくさい男なんだトム・リドル………。
わたしは思わずため息をつきそうになるも、そんなことしたら火に油なのでしょうがなく起き上がる。
「甘いものほしいならハニーデュークスでいろいろ買ってきたよ。リドルが好きそうなのもあるし」
「いらない、そんなに甘いもの好きじゃないし」
「ねえあの矛盾ってことば知ってる?」
まったくもう、とわたしは立ち上がる。まだ予備のクッキーはあるし(自分のおやつにするつもりだった)ラッピングもある。っていうかリドル相手にラッピングするの死ぬほど意味ない気がするんだけどなんでほしいの・・・?思春期・・・??日本人じゃないんだから文化も違うのになあ。まるで日本の小学生男子みたいじゃん。
「ラッピング、今日いっしょにカフェ行ってたやつとかヴォルデモートにあげたやつより丁寧にしてよ」
「えええ???リドルにあげるだけなのに???」
「僕にあげるからでしょ」
意味がわからなくて思いっきり眉根を寄せる。ラッピングに派手も何も差をつけようがないんだけど(複数枚入ってるラッピングキットみたいなの買ってやってるから)、リドルを黙らせるためにしょうがなくテキトーにメッセージカードにいつもありがとう的なことを書いてやった。眠くて不機嫌だけれどその感じを出すとさらにめんどくさくなりそうだからとりあえずわたしはテキトーに繕ってやることにする。
「ちゃんと食べてくれるなら言ってくれたら最初から用意したのに。
はいこれ、いつもありがとう」
言外に本当はリドルにも用意しておきたかったのよという意味を込めて言っておいた(もちろんそんなことはない。味見でだいぶ食べてたんだからそれで終わらせてしまいたかった)。自分大人だわ・・・としみじみ考える。
「まったく、取り繕ってんのが見え見え。嘘が下手だよね、アオイは」
そう言いながらもリドルは少し機嫌がよくなったから、案外単純でかわいいやつだなあとなんだかわたしまでうっかり楽しくなってしまった。
ハッピーバレンタイン。
(ちなみにヴォルデモートさんにも通信で甘すぎたって言われたんだけど、やっぱり味覚はいっしょなのね)