夢にときめけ、明日にきらめけ!


「ねえー!!!!!ちょっとあれ明らかにジェームズのこと狙ってない?!卑怯!!!反則!!!!レッドカード退場!!!ピピーーーーーッ!!!!!!!」
「落ち着け。これはそういうゲームだから」


今日は初めてのクィディッチ観戦、グリフィンドール対レイブンクローの試合である。数ヶ月前からレイブンクロー戦に向けて密になっていた練習が功を奏しているのか、今のところ無事にグリフィンドールが攻めているようだ。
どうやら噂で聞いていた通りジェームズの実力は頭一つ、いや箒ひとつ分は抜きん出ているようで、王道パターンはチェイサーであるジェームズが序盤に十二分に点数を稼ぐことで相手型のシーカーがスニッチを獲得できない状況に追いやり、そこをうちのシーカーがじっくり確実にスニッチを手中に収めてゲームを終わらせる・といったものになっているようだった。先程からジェームズが活躍しまくっている。

けれどもやっぱりあの頭がいいだけが取り柄のレイブンクロー(はっいけない対戦相手だと思うと口が悪くなる)の戦略も見事で、点を決めてはいるもののジェームズの動きはずいぶんと封じられており非常に動きにくそうだ。しかもしょっちゅうブラッジャーがジェームズに向かって飛ばされるからわたしは見ていて気が気でない。



「心配すんな、こんなのいつものことだから。ほら、狙われても飄々としてるだろ?あっまたゴール決め・・・」
キャーーーーーー!!!!!!!ジェームズカッコイイーーーーーーー!!!!!!!!!
「聞けよ」


本や映画で見ていただけでは正直なんのこっちゃといった感じだったクィディッチは、シリウスに解説してもらってもやっぱり難しい。これが流行ってる魔法界まじで変わってるわと思いつつ、点が入った瞬間はわたしにもわかるので黄色い声を上げた。マイペースにゲームを観戦するわたしをやれやれといった様子でシリウスは見ている。


「アオイ、ほらもうレイブンクローとの点差が150になったよ」
「えっもう?!」
「じぇ、ジェームズは、ほ、ほんとうに、すごい、からね、」


穏やかにそう教えてくれたリーマスに、目を輝かせて話すピーター。そんなピーターは本当に熱を上げているようで、ジェームズに心酔しているのが見て取れた。ウーンこれがカリスマ性なんだろうか。さっきまでキャーキャー言っていた自分のことは棚に上げてわたしは少しだけ冷静に周りの様子をみる。
そういえば、とちらりと下の方の段を見るとリリーがケナとサーシャと観戦をしているのが見えた。普通に他の人と同じようにジェームズを、というかグリフィンドールを応援している。ここからじゃ彼女がジェームズをどういうふうに見ているのかはわからないけれど、なんというかまあ、セブルスには圧倒的に分が悪いよなあとしみじみ思った。

ジェームズはいいやつだ。お調子者だし、ほんとすぐ調子に乗るし、なんなら調子しか乗り物知らないんじゃないかっていうくらいだけど、優しいし明るいしなんだかんだで器がでかい。いまはまだ子供だから振る舞いもガキ臭いけれど、彼が自分の行動を省みたときリリーがジェームズと一緒になるのは至極当然なように思えた。ウーン、分が悪すぎる。なんというかライバルがこんなにキラキラしていたらセブルスが焦るのもわかる。その結果最悪の道を選んでしまったんだろうけど、でも彼の思う自分の取り柄・・・というかワンチャン狙えたのって闇の魔術という分野くらいしかなかったんだろう。そう考えると気の毒に思えた。


「・・・なんかさー、クィディッチのプレイヤー以外ももっと活躍できる場があったらいいのにねえ」
「急にどうしたんだよ」
「いやさー、そりゃクィディッチの選手達がいっぱい練習してるのわかってるしすごい偉いとも思うんだけど、なんか一部だけが持て囃されすぎちゃうのって学校教育という観点からいってどうなんだろうかと思っ・・・あっまた点決めた。ヒューヒュー!」
「突然スケールのでかい話だな。いいぞジェームズー!」


わたしは頭が悪いのでなんというか脳みそを通さず思考を垂れ流すように話すことがあるんだけれど、シリウスはもはや慣れっこなのか(マグル学を受けているときにこういう状態になりがちなので)わたしの取り留めのない話をテキトーに聞いてくれている。それをいいことにわたしはそのままぺらぺらと話し続けた。

それに気づいたリーマスが興味を持ったのかわたしの顔を覗き込んでくる。


「アオイはどうしたらいいと思うの?」
「ん?ンー・・・なんか他の生徒にもスポットの当たる何かがあればいいなーってふと思って」
「例えば?」
「え、なんだろう・・・のど自慢とか?」
「なんだそれ」

のど自慢っていうのはねえ、と説明しながら魔法界はのど自慢とかないんだ・・・と考える。歌手はいるからオーディションとかはあるんだろうけどね。あんま素人が披露する場みたいなのはないようだ。いや別にのど自慢しなくていいとは思うんだけどさ。セブルス絶対のど自慢しないし(いや別にセブのためだけに考えてるわけじゃないけど)。


「なんだよお前歌いたいのか?」
「いや違う。違うし、わたしがとかじゃなくて、ウーン」
「アオイはもっといろんな分野の人が活躍できる場を設けられたらって言いたいんでしょ?」
「そう、それよそれ、さすがリーマス」
「い、一応、在学中に珍しい研究をした人とかは、表彰されたり学外からお金もらったり、するよ」
「そうなの?」


そういうのがあるなら別にいいのか。いいのか?わからん。うーむ。
なんていうかわたしは、もっとクィディッチ以外でも誰かが誰かを応援したり、誰かが目立ったりしたらなって思って。あと、どうしても寮対抗は仲が悪くなるからそれはちょっと違うかなって思ったりもして。いやでも寮対抗じゃないと盛り上がらないのか?たまにはこう、寮を超えて仲良くなってもいいんじゃ・・・


「運動会?」
「は?」

「運動会よくない?寮を超えてチーム分けした運動会。よくない?????」


閃いちゃった。これは完全に閃いてしまったぞ。

それと同時に一際大きい歓声が上がった。どうやらグリフィンドールのシーカーが無事にスニッチを獲得したようである。

わたしはみんなの勢いに合わせるように一緒に立ち上がり拍手した。しかし頭の中は浮かんだアイデアでいっぱいである。いいじゃん運動会。やろうよ運動会!!!!!!!!!































「っていうわけなんだけど。どう?!?!?!」
「どうって僕に言われてもねえ。それよりもっと讃えてくれない?」
「すごい、ジェームズ、すごかった、ワンダフォー」
「怒るよ」

無事にグリフィンドールが勝ったことにより寮内はお祭り騒ぎだ。抜け目なくしもべ妖精達からお菓子をちょうだいしてきたこともあり(最近ではわたしも遠慮なくいただいている。てへぺろ)お菓子もジュースも盛りだくさん。非常に賑やかでよろしい。

今回も大活躍していたジェームズはしばらくの間めちゃめちゃに持て囃されていたが、落ち着いたタイミングでわたしたちのところにやってきた。ちなみにリリーには「あなたが強いのは認めるし素晴らしいプレーをしていたとは思うから一生箒にのって空を飛んでいればいいのにね」と言われていた。辛辣すぎて草生えた。


で、話は先ほどクィディッチ観戦中にしていたものへと戻る。あのあとジェームズ以外にはわたしが運動会とはいったいいかなるものかを説明し、なかなかウケたので満を持してジェームズにも話してみた。


「へー、まあ楽しそうだけどそれをやるってなるとダンブルドアに相談するしかなくない?まあ僕らが有志で募ってやってもいいけど限界はあるし」
「あーやっぱり?でもこんな遊びみたいなのってなかなか学校行事にはできないかなって」
「内容次第ではいけるんじゃないかな。例えばほら、障害物競走だっけ?そういうのも魔法のテストみたいな感じにすれば先生方も張り切りそう」
「ふぁーーーリーマス天才かよ」


そんなことを言いながらリーマスが将来闇の魔術に対する防衛術の先生をしていた時に、学期末の試験でそういったようなものをしていたことを思い出す。こういう記憶とリンクした部分があるとしみじみトリップしたんだなあと思わされた。今更だけど。


「んーーーじゃあダメ元で一回ダンブルドアに言ってみようかなー。どっちにしろそろそろ行こうと思ってたし」
「うん、いいんじゃないかな」


悪戯仕掛人の人気と人望を使えばそれなりに多くの人数が集まるんじゃないかなあと思っていたんだけど、よく考えたらそれじゃスリザリンの面々というかセブルスは絶対参加しないしリリーも来てくれなさそうだもんね。学校行事みたいなレベルでの開催はさすがに無理な気がしてたから諦めモードなんだけど、まあ言うのはタダだし言ってみようかな。
わたしはそんなことを思いつつ、ひとまず今日は宴を楽しむのだった。かぼちゃジュースがうまい。
























「ほお、楽しそうじゃのう。しかしもうすぐ学期末試験じゃし、それが終わったらまたクィディッチ杯じゃ。今年度の卒業生には悪いが来年度から実施でどうじゃろう。一年生が友を作るのにも役立ちそうじゃ」
「めっちゃあっさりオッケーするじゃないですか校長・・・」
「新しい風はどんどん取り入れんといかんよ」


思い立ったが吉日、ではないけれど(翌日なので)善は急げと早速次の日に校長室にまで行きその話をするとダンブルドアは楽しそうにわたしの話を聴いてくれた。まじですごいなこの人。格が違うと言うか、いい先生だなあ。ウィンクされながらそう思う。実際はただのいい先生ってわけじゃなかったとしてもわたしは馬鹿なのですぐに絆されます。


「せっかくじゃし、君たちでどういったことをするか考えてみてくれんかのう?特にジェームズやシリウスがそうやって忙しくしていれば、アーガスの仕事も減りそうじゃ」
「ははははは」

昨晩お菓子が足りなくなったと寮を抜け出したジェームズとシリウスがフィルチに追いかけ回された話を思い出して苦笑する。フィルチもほんと大変だよなあ。


「わかりました!じゃあみんなに相談してみます。・・・あっそうだ、全然話変わるんですけどいいですか?」
「うむ。なんじゃ?」

「わたしがトリップしてきたことって先生方の中では誰が知ってるんでしょう。スラグホーン先生とかも知ってるんですか?」


ふとこの間気になりながらもなんだかんだで聞き忘れていたことを思い出しそう言うとダンブルドアはゆっくり瞬きをしたあといつもと同じ穏やかな口調で話し始めた。


「いいや、わししか知らんよ。どうしてホラスが気になったのじゃ?」
「あ、いや。なんとなくなんですけどね。なんかスラグクラブに誘われたんですけど、わたし誘ってもらえるような秀でた点がないような気がして・・・トリップしてきたのを知られてるならまあわかるなって思っただけです。でも違うのかあ」
「おぬしはそれを差し引いても十二分に魅力的じゃからのう」
「あはは、ありがとうございます」


キラキラした瞳でそう言われると悪い気はしない。わたしは半分流すようにお礼を言うと、ダンブルドアは少しだけ目線を下に落とした。



「そういえば」
「?はい」

「・・・そういえば、昔も運動会を一度だけ行ったことがあるんじゃよ」
「えっ!そうなんですか?!」
「うむ。その年にトラブルがあって、一度きりで終わってしまったんじゃがのう。その時の資料は後ほどふくろうに運んでもらおう」
「ありがとうございます!」
「そろそろ授業の時間じゃな。またいつでもおいで」
「はーい!」


そうしてわたしはダンブルドアの部屋を出た。以前にも運動会があったなんてわりと驚きである。そのままずっとやってくれてたらよかったのに。

でもまあ資料があるのなら準備は多少楽になるかな。どんなことをしようかなあ。
大玉ころがし?玉入れ?パン食い競争?そんなことを考えながらわたしは次の教室へと向かうのだった。


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