いまは冬休みらしく、組分けは学校が始まってからということになり、とりあえずこの休みのあいだにできるだけ魔法の知識をつけるよう言われた。
仕掛人(ていうかジェームズ)はそれにノリノリで、わたしに勉強を教える役を買って出てくれた。
いいのかい。お姉ちゃんはほんとうになあんにもできないよ。
しかも3年から編入だからたぶんてんてこ舞いどころの騒ぎじゃない。でもダンブルドアには「おぬしならいけるじゃろう」ってのほほんと流された。
…見た目的にもちょうどいいんだと。どうせ日本人は童顔だ。
ちなみにいまはみんなに学校を案内してもらっている。
はっはっは、覚えられる気がしない。
「アオイ、お前アホな顔がさらにアホになってるぞ」
「ほっとけ」
「まあここ覚えるのは時間かかるよね…しばらくは僕たちといっしょに行動したほうがいいかもね」
「ありがとう…」
わかったこと。
ジェームズは好奇心のかたまり。
シリウスはめんどくさがりでツッコミ役。
リーマスは良心。
ピーターはコミュ…シャイボーイ。
個人的にはジェームズがいちばんひどい気がする。目新しいものに飛び付くけど飛び付いたら放置。けっきょくわたしのお世話はリーマスが………ん、なんかわたし犬でジェームズこどもでリーマスがママみたい。
なんだかんだ面倒見はいいんだけどね、みんな。
「とりあえず今日は疲れただろうし、そろそろ部屋で休んだらどうかな?
あ、おなかは減ってない?」
「あー…少し」
「つってももう晩飯の時間終わったぞ?しもべのとこ行くか?」
「(しもべ…)
あ、でもそんなにだよ!」
「じゃあ夜食用に持って帰ったスコーンがあるからこれあげるよ」
そう言ってリーマスはわたしにナフキンで包んだおいしそうなスコーンをくれた。ほんとにリーマスがいいこすぎてもう怖いんだけど…
「…いいの?食べるんじゃないの??」
「このあいだハニーデュークス…あ、休暇にときどき行ける魔法使いだけの村にあるお菓子屋さんなんだけどね、そこで買ったストックがあるからだいじょうぶだよ。
あ、ハニーデュークスもアオイがよければまたつれて行ってあげる。甘いものが好きなら、きっと気に入るよ」
優しく微笑むリーマス(13歳)の人間性に開いた口が塞がらない。
えええ。わたしこんなイケメンはじめて見たよまじで。
これが本物の紳士か…!
「へえリーマス、ずいぶんアオイに優しいじゃないか」
「そうかい?だって心細いだろう?」
「できたひとだねリーマス…全員リーマスを見習いなよ…」
「僕だって君に優しいよ!」
「はいはい」
「どうして流すんだい」
「ジェームズって買ってもらった犬の世話はしない、みたいなとこあるよね」
「ぐっ」
声を大きくしたジェームズを一蹴すると、シリウスは爆笑しリーマスとピーターもクスクス笑った。
図星、とばかりに口を尖らせる彼は子供らしくてなんだか癒される。
「…ふふ。なんてね!みんなありがと。ほんとにほんとに。ほんとにありがと」
でも実際ジェームズを跳ね返してみたものの、彼らがいなかったらわたしは今ごろどうなっていたかわからない。
一度感謝の気持ちを述べるとそれだけじゃ足りないような気がした。
だってみんながいなかったらわたしあの暗い森で死んでたかもしれないし、もし自力でダンブルドアに会えたとしても心はバッキバキに折れてる。
命の恩人であり、心の恩人だ。
いま改めて、時空の管理人にラッキーって言われた理由がわかった気がする。
「…そんなに感謝されるとなんだか頑張りたくなるね」
「え?」
ジェームズはそうつぶやいたあと、ひとを安心させるような優しい笑顔で笑ってくれた。
「あしたの朝は迎えに来るよ。僕たちみんなで。
君が迷わないように」
「…いいの?」
「うん。だから君はそうやって、」
──そうやってしあわせそうに笑っていなよ。
ジェームズの言葉はなんというかもはや凶器だと思った。殺し文句。
さっきまでおざなりだったくせにここぞってときに決めるなんてずるい。
わたしがちょっと頬を染めると予定通りだったのかニヤッとされた。
うわー…こいつ・・・・・
まあでもうれしかったので、素直に受け止めることにしよう。
一生懸命楽しもうか、この新しい世界を!