03



「・・・ん·····」

なんだろう。なんだかいい匂いがする。そう思ってわたしは瞼を押し上げた。よく寝たあとの爽快感と微妙な倦怠感。横向きだった体をあおむけにしてんんッと伸びをし、ぼんやりした頭で考える。トーストの匂い·····ああ、そういえば昨日·····。
むくり、と起き上がり欠伸をする。一応寝室とリビングは引き戸で遮られるので向こう側は見えないが、おそらくトレイくんが朝ごはんを用意してるのだろう。わたしもトースト食べよー·····っていうかいま何時だ?携帯のボタンを押すと、10時34分と表示された。わたしにしてはわりと上出来な時間に起きたぞ。

もそもそとベッドから出て、もう一度欠伸をしながら引戸を開ける。するとトレイくんが笑顔で迎えてくれた。

「ああ、起きたのか。そろそろ起こそうかなと思っていたところだ」
「はえ」
「トーストとチーズオムレツ、それから冷凍ブロッコリーとベーコンあったからオリーブオイルで炒めてみたんだが·····勝手に漁ってすまないな」
「えっ·····えっ、」
「どうした?」

背の高いトレイくんの顔から視線をテーブルに落とすと、そこには美味しそうなブレックファーストが並べられていた。えっ·····えええっ·····!!!


「か、感動·····!!!ほ、本当に料理してくれたんだね·····!!」
「料理といっていいのか?これは」
「めっちゃ料理だよこんなちゃんとした朝ごはん久しぶり·····!えっていうかトレイくん得意料理とかなんなの」
「んー?ハンバーグかなあ」
「はあ?愛じゃん・・・」

わたしは慌てふためきながらとりあえずお手洗いに行き、そしてリビングに戻ってきてはこの光景が夢や幻じゃなかったことに感動した。いや朝イチから若いイケメン拝めるだけで金払わなきゃいけないレベルなのに、そんな、そのイケメンがこんな、こんなごはんをわたしなんかのために・・・!


「ど、どうしたらいいのトレイくん、お金どれくらい必要·····?」
「えっいやいらないが」
「うそ·····振り込めない詐欺じゃん·····」
「ははは、喜んでくれるのは嬉しいが冷める前に食べてくれ」
「はい·····感謝·····いただきます・・・」
「お口にあいますように」

席についてまず水を飲み、そのあとオムレツをフォークで取って口に運ぶ。適度な塩っぱさがケチャップとマッチしていて本当に美味しかった。

「めっちゃおいしい·····天才じゃん·····」
「おいおい、これくらい誰が作っても一緒だぞ」
「違うよーーー!!!うっ·····ブロッコリーもおいしい·····ありがとう、ブロッコリーが喜んでるのを感じる·····」
「まったく大げさだなあ」

トレイくんはいちいち感動しながら食事をするわたしを、自分もフォークを進めながら優しい笑顔で見守ってくれた。ああ、この子、本当に素敵だなあ。もしわたしが十年、いや五年若かったらぜったい好きになっていただろうなあ·····そんなことを思いながらちょうどよく焼かれたトーストを齧った。こんなにいい朝はいつぶりだろう。思い出せる限りでは、ないような気すらした。

「でもよかったよ。そんなに喜んでもらえて。これくらいでよければ毎朝作るぞ?」
「ヒェッそんな·····そんな・・・トレイくんなしじゃ生きていけなくなりそう·····」

大袈裟にぶるぶる震えながら言うと、トレイくんは目をぱちくりした後なんだか少しだけ寂しそうに笑って小声で何か言った。

「・・・そうだったらよかったんだけどな」
「えっなんか言った?あ!ごめんキモかった!?」
「ははは、違う違う。それは光栄だって言ったんだよ」
「ほんとー?ならいいんだけどさあ·····」

そしてわたしとトレイくんはお話をしながら朝食を食べ終え、出かけるために身支度をした。まずはトレイくんのお洋服を買いに行こうと思っている。買ってもらうのは悪いからこの服で大丈夫だよと彼は元彼の服たちを指さしながら言ったけど、どうにも嫌そうな気がしたしおいしい朝ごはんのお礼もしたいのでショッピングモールに行くことになった。わたしも普通に久しぶりにお買い物したいし。

















「っうわーーーーートレイくん!!!めっちゃ似合うよすごい!!!!イケメン!!!!!」
「そ、そうか·····?そんなに褒められると恥ずかしいんだが・・・」

あれからわたしとトレイくんはショッピングモールへと向かい、気を遣うトレイくんをいいからいいからと押し切って服屋でトータルコーディネートした。トレイくん、パーカーとかのカジュアルめな服もキレイめな服も似合う·····すご·····18歳にしてこのポテンシャル·····恐ろしい子・・・!

「これ全部ください、あとさっき着たのもぜんぶください!」
「そ、そんな·····!ちょっと頑張って洗濯するからそんなに買わなくても」
「いいのいいの、すっごい目の保養だからほんと!」

制止するトレイくんを振り切ってわたしはレジへと向かう。店員さんがよかったらこのまま着て帰りますか?と気を使ってくれたのでぜひと答えた。トレイくんは終始申し訳なさそうにしているけれど、子供なんだから気を使わなくていいのに。とはいえ18歳、しっかりしてる子だしそれも無理な話か。


「本当にその·····何から何まですまない·····通貨が違った場合に備えて換金出来そうなものを持ってくるべきだった・・・」
「いいのいいのほんと、学生なんだから大人に甘えてなさい」
「うーむ·····」

トレイくんは子供扱いすると微妙な反応をする。やっぱり甘え慣れてないのかな、なんて考えながらもわたしはそんなトレイくんがかわいくてお買い物が本当に楽しかった。・・・ああ、なんか、久しぶりに。すごくいい休日かも。


「そろそろお昼にしよっか。なにか食べたいものある?」
「そうだな·····せっかくだしこの世界の伝統料理がいいかな」
「伝統料理・・・っていうかじゃあ普通に日本食でいいかな。和食食べに行こうトレイくん」
「ああ、ありがとう」

いつまでも気を使っていても逆に悪いと思ったんだろう、店を出たあとはトレイくんも楽しそうにしてくれた。頭のいい子だなと思う。優しくて、聡明で、気遣いができる子だ。そのあと入った和食店で年甲斐もなくふたつのセットに惹かれてしまってどちらにするか悩んでいると、「君の好きな物を知りたいから両方頼んで分けないか」と言ってくれた。これから料理をすることになるんだからそうしてほしい、と。

子供に気を使わせて恥ずかしいなと思いながら店員さんに注文し、待っている間お茶を啜る。口をつける前に「熱いから火傷するなよ」と言われて、猫舌のわたしは思わず笑ってしまった。

「なんだかトレイくん、本当にお兄さんって感じだねえ。めちゃめちゃ歳離れてるのになんだか甘やかされてるみたい」
「そ、そうか·····?」
「男子校って言ってたけど彼女とかいるの?彼女にもめちゃめちゃ優しいんでしょ」

きっとトレイくんと付き合った子は幸せだろうなあ。優しいしかっこいいし一途そうだし。まっすぐ愛してくれそうな気がする。羨ましいことこの上ない。
なんて軽い気持ちで聞いてみると、トレイくんは少しの間を置いて頬を指で掻きながら答えた。


「・・・それが、数ヶ月前に振られてな」
「えっそうなの!?トレイくんが!?」
「ああ」
「うそーーー信じらんない!見る目ないねその子、トレイくんみたいなタイプは何があってもぜったい手放したらだめなのに!!!」
「ははは」

トレイくんはまた困ったように眉を寄せて笑う。·····その子のこと、引きずってるのかなあ。きっとかわいい子だったんだろうなあ。

「トレイくんならぜったいすぐにいい子見つかるよ、わたしが保証する」
「はは、それは頼もしいよ」
「えっねえ本気で言ってるんだからね?」
「わかってるさ。ありがとうな」

そんなことを話しているうちに店員さんが目当ての品を運んできてくれたのでわたしたちは一度その会話をやめて食事を取ることにした。トレイくんと分け合いながらおいしいねと笑いあって食べるご飯はとてもおいしくて、わたしはなんだか心がポカポカする。

それから二人で店を出て、わたしたちは買い物を続行した。トレイくんが生活するのに必要そうなものを買い足したあとはわたしの服もちょっと見たのだけれど、トレイくんはなにを試着しても似合うよ、とかいいんじゃないか、と言うのであてにならないなあと思った。まあそりゃ八つも年の離れた女の服なんてわからないよな、と早々に終わらせようとしたのだが何故か「せっかくだしもっと見ていこう」と言ってくる始末である。女の買い物に付き合いたい男なんていないと思うんだけど、妙に楽しそうにしてくれていたのでわたしも気を良くして数着買ってしまった。来月の請求が怖い。強く生きよう。

そのあとは二人で大きなスーパーに行って食料品を買った。晩ごはん、わたしが作るよと言ったのだけれどいろいろ買ってもらったんだからお礼がしたいしくつろいでいてくれと言われてしまう。お言葉に甘えたわたしは帰宅後先にお風呂に入らせてもらいながら晩ごはんができあがるのを待っていた。まじでトレイくんとの生活最高すぎるんだけどこのまま一生うちにいてくれないかな·····なんて思っていたらめちゃめちゃ美味しいボロネーゼがでてきて感動した。おなかもいっぱいになったし風呂上がりでさっぱりしているしなんというか本当に最高の気分である。


「まじでトレイくんずっとここにいてくれたらいいのに·····」
「はは、そんなにボロネーゼが気に入ったのか?」
「んー・・・いやボロネーゼもそうだけど、ほんと楽すぎて·····なんか会ったばっかりなのにそんな気しないしさあ」
「・・・」
「まあでもトレイくんにも元の世界で待ってる人や生活があるもんねえ。はー今からお別れが寂しいよ」

さすがに後片付けはわたしがするから、とトレイくんを座らせて食器をキッチンに運んでいるとトレイくんが何故か少し押し黙った。どうしたんだろう、ホームシックかな?とそちらに目をやると彼はどことなく暗い顔をしている。


「·····どうしたの?」
「あ、いや。元の世界についてちょっと考えててな·····」
「そっか。突然見知らぬ場所に飛んできちゃったんだから不安もあるよね·····わたしにできることってあんまりないだろうけど、できることならなんでも言ってね」
「いや、十分良くしてもらってるよ·····本当に。ありがとう」
「こちらこそありがとう」

じゃあ洗っちゃうね、とわたしは蛇口を捻って皿に水を溜める。それからスプーンを手に取ってスポンジで擦った。ざあざあと水の音がこのさして広くない部屋に響く。その音はトレイくんの小さな呟きなんていとも容易く消してしまい、わたしの耳には届かなかった。わたしは何も知らないまま、綺麗になったふたつのスプーンを水切りラックに置いた。















朝起きるとハムエッグとトースト、それからサラダが用意されていた。わたしはそれをおいしく食べて身支度をする。家を出る際にはお弁当箱を持たされた。甘やかされ方がもう小学生のようである。ありがたい。

トレイくんは今日は近所をうろうろしたり図書館に行こうと思うと言っていた。なにか買いたいものがあったらこれで買いなね、とそんなに多くはないけれどお金を渡しておいたので楽しんでくれるといいなあ。ものすごく険しい顔をして申し訳なさそうにしていたけれど、八つも年下の男の子なんだから甘えてくれたらいいのにと思う。まあそこが彼の魅力なのかもしれないけれど。

トレイくんは本当に大人びていて優しくて、一緒にいるとびっくりするすらい居心地がよかった。いままで付き合った元カレとかって二晩とか一緒にいるとだいたいちょっと嫌な部分を発見していたのに、そういうのがまったくないのである。まあ恋人じゃないし気遣ってくれてるからなのかもしれないけれど。
・・・トレイくんはどんな子が好きなんだろうなあ、とふと思った。そしてこれじゃまるでわたしが彼に恋をしているみたいだと自嘲するように笑って電車に乗る。いつものツラい満員電車も、お昼にはお弁当があるんだと思うとなんだか耐えられる気がした。





「·····なにかいいことあった?」
「えっ!?」
「いや、なんだかいつもより機嫌がいいから」

出社しいつもの業務をこなし、先輩に承認印を押してもらうため書類を持っていくとそう聞かれてわたしは目をぱちくりさせた。

「わ、わかります?」
「うん、とても。まるで別人みたいだ」

この先輩は穏やかで優しくて、昨日元彼のことを考えていたときにも思い出したくらいちょっと憧れのひとでもある。背が高くて眼鏡が似合って·····なんかちょっとトレイくんに似てるな。いやまあそれは置いといて、成績もよくて人当たりもよくて将来は出世間違いなし。正直ここで働いている女性社員で彼のことを素敵だと思わないひとはいないと思う。まあそれこそ高嶺の花なんだけれども。

「実はいまちょっと·····えっと、従兄弟?がうちに住んでて。期間限定で」
「へえ、それは楽しそうだ」
「はい。で、その子が料理上手で、朝ごはんもおいしかったしお弁当も作ってくれて·····」
「それは凄いな。俺にもそんな従兄弟がいたらいいのに」

もしくは彼女とか、と彼は苦笑する。え、このひと彼女いないんだ·····めっちゃモテそうなのにな·····。まあでもお眼鏡にかなうひとなかなかいなそう。なんて思っているあいだに書類に目を通し終えたらしく、ポンっと承認印を押されて書類を返された。従兄弟が待ってるならなるべくはやく帰れるようにしないとな、いつも本当に遅くまでお疲れ様。と労われて、うーーーんだからこのひと女性社員のファンが多いのよね〜!!!と思わず叫びたくなった。でも朝ごはんも弁当も作ってくれる彼女なんて幻だぞ〜!つまりトレイくんは奇跡の存在なのである。·····やっぱり異世界の人間だから特別なんだろうか?いやそういうわけじゃなくてトレイくんが特別な気がするなあ。


結局その日もいつも通り残業はあり、なるべく頑張って終わらせたものの会社を出たのは21時半。こんな時間まで縁もゆかりも無い土地で一人にさせてしまった·····社畜すぎて申し訳ない。異世界人だとは言わずとも、留学生とかってことにして誰か紹介してあげたほうがいいかなあ。そしたらわたしがいないあいだも観光とか捗るだろうしさあ。そんなことを考えながらわたしはスマホを取り出した。
連絡がつかないと困るからあまり使っていなかったタブレットにメッセージアプリを入れてトレイくんに渡しておいたので、それにこれから帰るねと送信する。すぐにトレイくんからお疲れ様と返事がきて癒された。先にご飯を食べておくように言ったけれどなんとなく待っててくれそうな気がする。大丈夫かなあ、と急いで電車に乗り込みガタンゴトンと揺られ、最寄り駅に着き改札を出るとなんとトレイくんが待っていた。

「えっ」
「お疲れ様。夜道を女の子ひとりで歩かせるわけにはいかないだろ」
「お、女の子って·····そ、そんな歳じゃないよもう」
「そんなことないさ。なんにせよ今日もお疲れ様」

突然の登場にドキドキしているとトレイくんは優しくわたしに笑いかけて、持つよとわたしの重たい通勤用カバンを取り肩にかけた。いいよ大丈夫だよと言ってもいいからと返される。·····いやだめだよ、これはダメだ。まじで普通にときめいてしまった。やばい。
きょうはハンバーグを作ったんだ、とトレイくんが微笑む。ありがとう、の声は少しどもってしまった。

二週間。二週間で、このひとはいなくなる。その上彼は、まだ18歳の子供だ。わかっているのに、いったいどうして。まるでずっと昔からこのひとを好きだったような気がしてしまうんだろう。


「・・・トレイくん」
「うん?」
「わ、わたし·····たぶんこれからも仕事で遅くなるし、せっかく異世界に来てるのにあんまり相手できないからさ。もしなんだったら、友達とか兄弟とか親とか·····その、誰でもいいからちょっと事情話して、わたし以外の他の人のところに行った方がいいんじゃないかなって思って」

家までの道のりを歩きながら言う。これはさっきまで普通に考えていたことだ。別に、好きになりそうだからそう言っているわけではない。·····いや、ちょっとはそうかもしれないけれど。
トレイくんはわたしを見て二度瞬きをしたあと、ゆっくり口を開いた。


「俺がいると迷惑か?」
「や、そ、そういうわけじゃないんだよ全然!でも暇じゃないかなって」
「お前がいいなら俺はここにいたい」

その声の響きはあまりにしっかりとしていて、わたしはびっくりしてトレイくんの顔を見る。だって待ってたら帰ってきてくれるんだろう?彼はそう言って笑った。・・・?そりゃ帰るよ自分の家だし。帰るけど、なんだろう。そんな当然のことを言うトレイくんがあまりにも切実で、わたしはなんだか謝りたくなる。どうして、どうして、·····このひとといるとラクなのに、こんなにも胸が苦しい。

じゃあこれからもよろしくね、となんとか返してわたしとトレイくんは家までの道のりをてくてくと歩いた。月がきらきらと輝いている。満月まであと数日といった間抜けな形のお月様だ。この月はトレイくんの世界からも見えるのだろうか。それともまったく違うものなんだろうか。

トレイくんの世界の月もあんな感じ?違う形だったり数が多かったりしない?と聞いたら一緒だよと笑われた。そうなんだ。一緒なら、この世界とその世界は繋がっていて、簡単に行き来できたりしないのかなあ。トレイくんの世界でいう魔法、わたしの世界でいう科学が発展すればそれが叶ったりしないだろうか。
わたしはそれがとっても気になってしまってトレイくんを見上げる。その目線に気づいた彼が首を傾げたので、わたしはあー·····と言葉を探したあとなんでもないと首を振った。

繋がっていないよ、帰ったらもうここには来られないよと言われてしまうのが怖かった。















「お、おいしい·····!」
「だろ?」

そして家に到着し、わたしが部屋着に着替えるあいだにトレイくんは晩ごはんの用意をしてくれた。やっぱりわたしが帰るまで待っていてくれたらしい。お腹すいたでしょう、ごめんねと謝ると味見の名目でけっこう食べたから気にするなとぽんっと頭に手を乗せられた。


「·····っと、年上の女性にすることじゃなかったな。すまない」
「・・・元カノさんによくやってたの?色男」
「違うよ、兄弟にな」

そのときのくせだ、と彼は腕を引っ込める。あたたかくて大きくて安心する手で、離れていくのがとても悲しく思えた。いけない、と気を取り直しておいしそうなハンバーグに箸をつける。半熟の目玉焼きが乗ったそれは箸を通した瞬間じゅわりと肉汁が溢れ、口に運ぶとびっくりするくらいおいしくて懐かしかった。·····実家の味とも違うのに、どうして懐かしいなんて思うんだろう。

「・・・うまいか?」
「とっても」
「ならよかった」

彼は微笑む。優しい声で微笑む。あたたかい眼差しをわたしにくれる。今日あったことを楽しそうに話して、わたしのしょうもない仕事の愚痴を真剣に聞いて労わってくれる。どうしよう。どうしよう。どうしよう。

こんなに年の離れた、住む世界すら違う男の子のことを。まだ会って間もない、そしてすぐにいなくなってしまう男の子のことを。

わたしは、好きになってしまったのかもしれない。