「レシートはいかがなさいますか?」
「あ、いいです」
「ありがとうございました。またのお越しを心よりお待ちしております!」
「どうも」
はあ。
元気、出ない。
第12話
あっちこっちそっちぼっち
ジンさんと別れて3日。
あたしはテキトーなホテルを借り、仕事をするのに必要そうなものをちょこちょこ買ってる。まあ買ってるだけだ。
一応仕事斡旋所みたいなところは見つけたけど、なんとなく行く気になれない。
いや行かなきゃいつか食いっぱぐれるのはわかってるんだけどー…
いまはまだ6月。
ハンター試験まで、あと半年はある。
調べてみたところ次の試験は287期で、ゴンたちが受ける年だ。
普通にめちゃくちゃ会いたいのでそれを受けるつもりだけど、うん、日にち、とおいよ……何してたらいいんだよ…
ジンさんとしてはやっぱりあたしにいいハンターになってほしいんだろう。
とりあえずそのために経験は積まなきゃいけないんだけど、まじやる気出ねェ…
だってこのだだっだだっだだっ広い世界に、あたしは、ひとりぼっちだ。
「はあ…」
情けないことこの上ないけどなんにも動けないあたしがいる。
思ってた以上にジンさんの存在は大きかったようだ。どうしようもないなぁあたし・・・
「(そんでもってジンさんといっしょに買い物したところにずっと滞在してるあたりイタイ)」
呼吸をするようにため息を吐く自分がそろそろ嫌になってきた。
うーん。なんかちょっとなんとかしなきゃ。
あ、そうだ携帯買ったから今まで会ったひとにそのお知らせに行こうかな…?仕事ももらわなきゃだし。
まあなにより、このままぐずぐずしてるよりはましだろうし、ね。
「おお、やっと買ったのかい…というか本当に持ってなかったんだね。このあいだ連絡先を聞いたらありませんなんて言われて本当に驚いたんだよ?信じられなくて嘘をつかれたのかと思ったじゃないか」
「すみません…」
というわけでいちばん最初の依頼主、ヴェルグさんのところに行ってみた。
わりと気さくでフレンドリーな方だと思う。なんとなくやっぱり受け入れらんないけど。
なんか、…生理的に。
「開業するのかい?」
「開業ってほどでもないですが。一応何でも屋をしようかな、と」
「ほう、本当になんでもしてくれるのかな?」
「悪いこと以外は」
「はは、君らしい」
君らしいって、あたしのこと何も知らないじゃんか。
とか思っちゃうのはあたしがこどもだから?こどもだから???
「まあまた宣伝しておくよ。ついでに依頼もしてみようかな」
「あ、ありがとうございます」
お礼をすると、ヴェルグさんは少し考えるように目線を斜めにやってから笑った。
「どうだい?私とデートなんて」
「それは援助交際になるのでだめですね」
「ははっ、ほんのジョークさ。なにかあればまた連絡するよ」
「はい、お待ちしております」
笑顔でお辞儀をするとひらひらと手を振られた。
うふふ。やっぱり苦手だ。…カルトちゃんのとこ、行こう。
「っていうわけなのだよカルトちゃん!
カルトちゃん!!!!!」
「
わかったから。
ていうかめんどくさいからキミをボクに近づけないよう頼んで着物も渡しといたはずなのに使用人たちどうしたの」
「丁重に倒した。うふふ今から着物きちゃうね!」
「入らないでしょ」
「まーほうをかけるよー!」
ビビデバビデブー!などと少しなつかしい歌をうたっていたらカルトちゃんは頭を抱えてしまった。うふふふふかわいい。
「…なんでそんなに元気なの」
「3時間前まではぜんぜんだったんだよ!?言ったじゃんおっさんきもいって!でもね、実はね、キミに出会えて、僕は変わった…!」
「(帰りたい)」
疲れてるカルトちゃんには申し訳ないけれどあたしはしあわせですしあわせ満開です。満点!
やっぱりひとりでいると鬱になるね!コミュニケーションは大事、特にそれがかわいいこならなおさら!!
「うふふカルトちゃんメル友になろうね(っていうかメル友とか死語だな懐かしい)」
「ならない。ていうか、パソコンは買わないの?」
「パソコンはぜんぜんわかんないんだよねー」
「じゃあお兄様に聞いてみたら?二番目のお兄様がそういうの得意だから」
あたしの素敵なお誘いをさらっと流したカルトちゃんは、いいこと思い付いたとばかりにそんな提案をしてきた。
二番目の、兄。
ということは、
「(ミルキか!!!)」
「案内するよ。ボクはミケに餌をやりに行くから」
「かかかカルトちゃん厄介払いしようとしてない…?」
「うん」
今日いちばんの笑顔を見せたカルトちゃんにくらっとする。あああ脳震盪を起こさせるほどの笑顔……無敵!!!
とか思ってるうちにずるずる引きずられどこかの部屋の前に立たされた。
はっ!ふれ合う手にときめいていたあたしがばかだった!!!!!
「ここだから。じゃ」
「えっちょ、カルトちゃ、待っ」
「ばいばい」
そしてカルトちゃんは華麗に消えてしまった。
あ、あ、ああ…カルトちゃん・・・
うなだれながら目の前にある扉を見つめる。
これがきっと、あの、大きな、大きな、大きなひとの、おへや・・・
んふふ。なんかあの………ミルキか…………きらいじゃないけど……………ねぇ…?きらいじゃ、ないけど…………………ねぇ…………………………………。