メンチと結婚したい

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「皆さんにお話がありますの」


改まってされる話が、都合のいいものだったことなんて。

たったの一度もなかった。


第16話
孤独な僕ら





母親がオレたち兄弟をひとつの部屋に集めた時点で嫌な予感しかしなかったけれど、どうせ難しいターゲットとか修行とか、その程度のものだろうと思っていた。


イル兄、ミルキ、オレ、カルト。

オレ達は母親の前に立ち、次の言葉が出るのを待った。



「あなたたちに婚約者候補ができました。
いちばん年上のイルミか、彼女と年が近いキルアと婚約することになると思います。

また今度会わせるつもりだから、そのつもりでね」
「なっ…」
「ふうん。どんなコ?」

「ミルキとカルトは会ったことがあるわ。最近何でも屋を始めた新人なんだけど、素質があってね。お父様があの才能を欲しがっています」


淡々と語る母親に我が耳を疑う。

こいつは、いったい、…何を。



「あー、こないだ来てたヤツ?」
「あれが姉になるんだ…」


なんでそんなに冷静なんだよ!!!!!


心の中では叫ぶものの、あまりの事態に言葉が出ない。


いや、わかってはいるんだ。


イル兄はそんなのどうでもいいし、ミルキとカルトは所詮他人事。




…オレは、この家にいる限り。


将来も、未来も、結婚相手も、毎日も。

昨日も明日も死ぬまで一生。


自分の好きにはできないまま、生きていくしかないんだ。




「とりあえず話は以上よ。

キルアもイルミもあしたは仕事ね、はやく寝なさい。
では、おやすみなさいね」



そう言い残し去っていく母親。


閉まる扉の音。

何事もなかったかのように、自分の部屋へ戻る兄弟たち。



ポツンとひとり残された大広間。


渇いた喉で無理矢理唾を飲み込み、オレも自分の部屋に早足で向かった。




















「ふにゃぁぁあ…おいひぃ……」
「どれくらい?」
「しんじゃいたいくりゃい………」
「でしょう!」



トロトロ、ふわふわ、でろでろ。


いまのあたしを形容することばはたぶんこのへんだ。

しあわせすぎて死ねる。



メンチと初めて仕事で会ったのが昨日のこと。

いつでも暇だよって言ったら今朝「会える?」って電話がかかってきた。


ディアエラの密で作ったゼリーは至高の味。

でもメンチはそれを超える創作デザートを作ったのだ!


「あにょ…」
「なに?」
「メンチと結婚すゆ…」
「あはは!それもいいかもね!」


そしてあたしはそれを食べた途端冗談でなく腰が抜けて、ろれつが回らなくなってしまったのらふにゃふにゃ


「いやーここまで喜んでもらえると作りがいがあるわー!」
「ひあわせ」
「なんかホントに新しい妹ができたみたい」


メンチはあたしを気に入ってくれたようで、お姉ちゃんみたいに思ってねって言ってくれた。敬語も別にいいらしい。まあ実年齢的には・・・げふんげふん。気にしない、メンチの妹したい。
かわいいし、優しいし、おっぱいおっきいし、料理うまい。

すごいよ。パーフェクトボディ・パーフェクトガール。



ふにゃふにゃ言いながらデザートを完食し、メンチが持ってきてくれたイエローブドウのジュースを飲んでうるうるになる。


もうあたしいまほんとうに死んでもいい。



「またなんか持ってきたげるわよ!ていうかあんた家どこなの?届けたげるわ」
「あー…いまは一応ホテルを転々としてるかなぁ…」
「そうなの?特定の場所ないとやりにくくない?」
「まあ、そうなんだけどー…行くあてもないしなあ」


ふらふらふらふらさ迷っている。

まるで野良猫のようだ。…と言えば聞きはいいが、ただ居場所がないだけである。
でもマンション借りるとかもピンとこないしなぁ、、、


「事務所作ったら?」
「え?」
「事務所よ。何でも屋なんでしょ?直接相談できる場所あったほうが都合いいだろうし、楽じゃない?」
「・・・」


その発想はなかった。

目をぱちくりしていると、顔に出ていたようで少し笑われた。



「お金ないんだったら天空闘技場でも行ってみたら?

あんたなら簡単に2億ぐらい稼げるわよ。あ、そのときに名前をCATにしたら宣伝にもなっていいじゃない」
「・・・!」



その発想は、なかった・・・・・!

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