まるで、夢のようだった。
第18話
それは心の支えに変わり
今までしがみついていた街がどんどん小さくなっていく。
風を切って飛ぶあたし。鳥の鳴き声が下のほうから聞こえる。
夢だよと言われたら信じてしまうだろう。
そんなの、トリップしてから今までに起きたことぜーんぶだけど。
知らないひとの拍手も、あたしをじっと見てるキルアも。
ほんとに夢みたいだった。
最後に言われたことばも。
『いつもここで歌ってんの?』
『ううん、今日がはじめて』
『またここに来たら歌ってる?』
『あしたからは天空闘技場らへんに行くからいないよ』
『そっか。あそこひと多いもんな。そこで歌うの?』
『わかんない』
『歌えよ』
──また、聞きに来るから。
そして去って行ったキルア。
気に入ってくれたのだろうか、あたしなんかの歌を。
時間ないはずなのに、最後の最後までいてくれたし(おうちだいじょうぶかなあ)。
…また聞きたいと、思ってもらえたのだろうか。
わからないけど、はじめて、
「(だれかに必要とされた気がした)」
この果てしなく広い世界で。
「CATでーすよろしくドーゾ!」
「んだぁ?女が来ていい場じゃねぇぞぉここは。
着物なんか着て、生け花の発表会かなんかと間違えたかぁ?」
「(わあステレオタイプ)」
本気でぼーっとしてるうちに闘技場に着き、とりあえずぱぱっと登録を済ませ初対戦。
なんともまあ噛ませ犬の典型だ。さくっと倒しちゃおう。
「あ、あたし万事屋CATっていうのしてますんでお困りの際はどうぞお気軽にー」
「ふん、誰がお前みたいなヤツにたの…」
「ざんねん」
さくっ。
「1082番、50階へ」
「はーい」
軽くのしてしまったけど、これじゃあんまり宣伝にならないなあ。
あ、そうだ今後背中に大きく万事屋CATって書いた布でも貼ろう。連絡先も。よしよし。
そんな感じであたしはぽぽぽぽーんと1日で70階までクリアした。
もしかしたらもうちょっといけたかもだけどこのへんのレストランすっごいおいしい。ランチとおやつとおやつ堪能してたら夜になってきたので無理はしない。優雅!
まあまだ自分のお部屋がないんでとりあえずホテル借りよう、女の子だし。
そしてテキトーに近隣を調べるときれいでごはんがおいしそうなホテルを見つけたので、とりあえずそこを予約しておなかがすくまでこのへんをうろうろすることにした。
わりと都会だなあここ、とか思いながらいろんなところを回る。前までいた街も都会だったがこっちのほうが観光客向けのものがいろいろある気がした。天空闘技場自体が名物になってるんだろう。
買い物したりパン屋覗いたりCDショップを見たりしてみる。カモンベイビーアメリカしてたり、ピンヒール履いてlemonについて歌っている人がいたり、こっちの世界も向こうとあんまり変わんないなあ。
「(うた・・・)」
今日も歌ってみようかなあ。
もしかしたらまた、キルアが来てくれたりして・・・なんて。
猫のお面は自分で作った特別製(息苦しくもなければ違和感もない)なのでいつでも具現化できるし、CDコンポも念を使ってあたしが思い浮かんだメロディーをそのまま流せるようにしている。
マイクは自分で買ったけど。
昨日のあれはなんというかどうせ最後だしやっちゃえー、的なノリと勢いによってできたことだから、なんかいま改めてやるとなったら本気で恥ずかしすぎる。
あと下心しかない。キルアへの下心しかない。
また来てくれるかもわかんないけど、でも・・・
「(あたしの歌で誰かがわらってくれるの、快感だったなあ)」
もう一度くらいやってみようか。
あたしはひとり、こっそり頷く。
君に届かなくても。
教えてもらえたあたしの居場所。