「
泣けない午後に目覚めて」
もしかしたらキルアが来てくれるかもしれない。
そんな淡い期待を胸に、今日は少し早めに歌ってみることにした。
少しずつひとが立ち止まってくれるのが嬉しい。
「
眠らせてくれないか!」
このあいだの夢をもう一度みたい。
あの夢の続きを見てみたい。
だっていま、こんなに楽しいと思える。
お礼が言いたかった。
バイバイしてからたくさん、「こんなこと話せばよかった」って気持ちが溢れてこぼれた。
だからもう一度。
もう一度だけ会ってみたい。
第20話
めくるめく
「RAINさん、ですね」
けっきょくキルアは見つからなかった。
といっても本当にたくさんの人が来てくれているから、後ろのほうは見えないんだけど。
一瞬白に近い銀色がチラッとした気はするんだけどなあ。
時間もいい頃になったので切り上げ、来てくれたひとにお礼を言って(なんと恐れ多いことにお金までくれるひともいる)帰ろうとすると、スーツの女性と男性のふたりぐみに声をかけられた。
「はい、そうですけど…」
「はじめまして。ネオプロダクションのフォルタと申します」
「リッドです」
「今日のライブ、見させていただきました。本当に素晴らしかったですわ。
ぜひ当社からメジャーデビューをしていただけないかと思い声をかけさせていただきました」
ほあ?
ネオプロダクション。
調べてみたところ、この世界ではトップの音楽事務所?らしい。
なんかあたしの歌がネットで噂になっていて(ほんまかいな)、わざわざ見に来てくれたのだとか。
そして期待以上だったためスカウトしてくれたらしい。ほえー。ありがたい話だ。
明日の夕方あらためて事務所に行ってちゃんとお話を聞くことになってるけど、どうしようかなー受けてみようかなーせっかくだし。
なんかうまいこといったらジンさんの課題クリアできるかもだし、キルアにも見つけてもらえるかもしれない!あ、フルムーンの満月ちゃんみたいな気分。
まあCATのほうの仕事が仕事だから、ちゃんといろいろ隠しきってまわりの人間に迷惑とか危害が及ばないようにしなきゃいけないけどね。ほんと人生何が起こるかわからんな。
とりあえず会うのは夕方なので、それまで賞金を稼ごうといつも通りバトルに挑む。
この辺の階になるとなんかやたらと大男が目立つし今回の相手もそうだったけど、まあさくっと倒していつも通り宣伝して終わろう。
さくっ。
「トイレ掃除からブラックリストハントまで。詳しくはwebで!万事屋CATでした。
ただいま特価キャンペーン中」
「次の階へ」
「はーい」
そうそう、あたしこのためにちゃんとホームページも作ったんだよまじえらい。
自画自賛しながら颯爽とホールから出ると、また。
「や◆」
「・・・」
ピエロが、いた。
「へえ、万事屋してるんだ★
ほんとに何でもしてくれるのかい?」
「まあ」
「じゃあボクとたたか」
「いません」
「つれないなァ◆」
どうしてこうなった。
確かに1戦したら昨日見つけたおいしそうなパン食べ放題のお店に行こうと思ってたけど、なんでこのひとと相席してるんだろう…意味わかんない……
「あの、あたしごはんはひとりで食べたい派なんですけど」
「友達いないの?」
「ほっといてください」
「じゃあボクが友達になってあ」
「お断りします」
クックックと彼は独特な声で笑う。
こ、困る…このひと対処に困る・・・
「別にいきなり取って食ったりしないよ★
そんなに警戒しないで◆」
「します」
「とりあえず敬語で短く受け答えするのやめようか★」
「えぇ…」
「やめないと・・・」
「わかった!よろしくねヒソカ!!!!!」
こ、このひと怖い!!
昔からわりと怖かったけど、本物はさらに怖い!小学生の頃のトラウマ(主に欲情したヒソカ)が…!トラウマがいま現実に・・・!!!!
「CATはどうしてここに?」
「事務所作るのにあたって資金集めと宣伝を…」
「なるほど◆200階で待ってるね★」
「いやあたし200階興味ないんで。すぐ仕事に専念するんで」
「じゃあときどき遊びに行くから、事務所できたらいちばん最初に教えてね◆」
「はあ?」
「あ、その顔いいね★
ゾクゾクす…」
「それ以上言うなぁあ!!!!!」
こいつ!もう!!
手遅れだ・・・・・!
(そして出会ってしまったあたしも…!)