その後もふたりのおなかが満ちるまでずっとマイペースなヒソカに付き合うはめになった。厄日だ。
そしてなかよく(笑えない)店を出たあとあたしはネオプロダクションに向かった。
顔は出さない、素性をいっさい明かしたくない。そういったムチャな条件を提示したが案外すんなり受け入れてくれた。まあいつかは明かさせるつもりなんだろうけど、向こう側は!
でもべつに歌手をしたいわけではないのでここで妥協してデビューする必要はない。それが伝わったのかはわからないけど、さくっと決まってよかった。
思っていたよりはやく用が済んだので、せっかくだからこのへんを見て回ろうかと思う。
とりあえずお買い物したい!いまは六月なのだけど本当に死ぬほど暑いからもっと夏服ほしいし、腐っても腐ってても女の子なのでショッピングはしあわせだ!お金もあるし。
というわけでさっそくうろっとしてみた。なんかやたらおっきい高級そうなデパートを見つけたので入ってみようと思う。場違いだけど。
お金あるし!!!!!(とあるピエロのせいでかなりストレスが溜まっています)
第21話
ほんとうにただの厄日です
「うわかわいっ」
ぼっちの買い物でブツブツつぶやくのはなかなか頭がイッてるとはわかっているものの、先ほどから心の声が飛び出るのを抑えきれなかった。かわいい…
勢いに任せて入った高級デパートは豪華絢爛だったけど、目が痛いっていうよりは優雅で好みの雰囲気だった。お城っぽーい!
そして調子に乗ったあたしはどんどんいろんなお店を覗き見するのである。じきによさげな服屋を見つけてしまった。かわいい。
…いままではおたくする方にばかりお金を回して基本的にユニク〇とかでやっすい服ばっか買って着ていたんだけど、やっぱり値段が違うと素材も違う。金銭に余裕があって推しにお金を落とせない世界に来てしまったんだから自分に金をかけたくなるのは当然かもしれないな。
少し不審そうにこちらを見ている(まあ本当にどこまでも場違いなので)店員のお姉さんのそれでも丁寧な対応にさすがだなあとか思いつつ、試着をしていくつか気にいった服を買った。
少々ムダ使いをしても、まああたし、稼げるし?(どや)
お金は天下の回りものって、言うし?(どや)
今後あたしは経済を回す側なので?(どや)
…オシャレなハンカチかなんか、買いにいこー!!!!!
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
「どうもー!」
ほくほくしながら店を出る。
そう、浮かれきっていたあたしは知らなかった。
自分がこれからどれほどの面倒に巻き込まれるかを。
無駄使いなんてしたらバチがあたることを。
…調子に乗らず、帰ればよかった。
ガラでもないようなことなどしないで。
「いらっしゃいませ」
「(あ、いいにおい)」
そのあとなんとなくきらびやかな感じがして入った小物屋?雑貨屋?さんは、優しく甘いきゅんとするにおいがした。
見た感じネクタイとかハンカチとか香水とかを売ってる。あ、ブローチとかも?
きょろーっと見回してもよくわかんないけど、いまの年齢のあたしにはまだまだ早そうな店だ。…でもせっかく来ちゃったし、実年齢的にはぜんぜんおかしくないし、さっきハンカチ買おうとか思ったし、そこのコーナーだけ覗いてみようかな。ここいいにおいするし。
くんくん、微かに漂う香りを嗅ぎながらあたしはハンカチがきれいに並べてあるところにまで行った。
にしてもほんとうにいいにおいだ。店員さんのにおいかなぁ…こっちにきてからものすごく鼻がよくなったから、店自体に振ってるようならたぶんくしゃみが止まらないんだけど。
そんなことを考えながらハンカチを見ると、美しい色味や柄の右下にどれも小さく筆記体で何かが書いてある。
なんかのブランドっぽいな。こっちで流行ってんのかな。
ちょっとシンプルすぎてあたしの趣味にはあんまりそぐわないけど、まあ二枚くらいなら持ってても…
「こちら側にかわいらしい柄もありますよ、お嬢さん。」
「へ」
いいかなあ。なんて値踏みをしながらハンカチたちを見ていると、声をかけられた。
なにも考えず反射的に顔をそちらにやる。
その、先には。
「っ、え」
「なんとなくだけど、猫とか好きじゃないですか?いま猫のキャンペーンしてますよ。はは、とか言ってボクはあんまり好きじゃないんだけどね。…ってそんなことはどうでもいいか!
キミに似合いそうなものがこっちの棚にはわりとありましたよ。にしてもこんな店にキミくらいの年齢の女の子がひとりで、珍しいね」
「っ………!!!!」
パリストン・ヒルがいた。
・・・・ねずみ!?!?!?!?