食われるか召されるか

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「あ、気に入ってくれました?突然こんなところにつれてこられて怪しいとか思われていなかったらいいんですけど」
「いえいえ夜景もきれいですてきなお店デスネ…(あんたから逃げられるわけないでしょうが、、、)」


そのままあれよあれよというまにあたしに似合うハンカチを見繕ってプレゼントされた。
いやいいです悪いですとお断りしても「ボクがプレゼントしたいんだ。代わりと言ってはなんですけど、これから食事なんてどうかな」とか貼り付けたような笑顔で言われて頷く以外どうしようもなく。

そのまま景観の美しい高級そうなお店につれて来られた。こいつ…慣れてるわ…


第22話
はじまりの糸のはじまり




「そういえば自己紹介がまだでしたね!ボクはパリストン=ヒル。キミは?」
「…サナ=タキガミです。」
「かわいい名前だね!ジャポニーズかい?」
「(そうかこっちじゃ日本はジャポン…)はい」


そのタイミングで注文したドリンク(パリストンはワイン。あたしはりんごジュース)が届いたので渋々乾杯してそれに口をつける。あーこれ…うめえ……



「サナちゃんはいくつなんですか?」
「もうすぐ15です」
「へえ、若いですねー。これじゃ犯罪だなあ!ははは」
「ははは」

至極楽しそうに笑うこのひとは本当にいったいなんなんだろう。渇いた笑いしか返せない。
どうしたもんかと悩んでいると前菜がきたので、いただきますと手を合わせて目の前のサーモンにまっしぐらになろうと思う。ごはんに罪はないものおいしく食べないと!!


「おいしいかな?」
「はい」
「よかった!きっと気にいると思ったんですよ。

嬉しいな、サナちゃん」
「・・・・」


なんだろうこのサーモンも生ハムも放り出して逃げ去りたい。















ごはんはどれもおいしかったしデザートのガトーショコラとチーズケーキとシャーベットなんてたまらなかった。

もともとポーカーフェイスではないけれどおいしすぎてにやにやが隠しきれない。
なるべく硬く硬くと思っていたのにさすがにここまで味覚をダイレクトに攻撃されたら耐えられるわけがなかった。メインのローストビーフも、おいしかったなあ…


「ふふ。ようやくほぐれてきたかな」
「・・・」
「せっかくとてもかわいいんだから、無理しないで笑ってください。心配しなくてもボクは、キミをとって食ったりしないですよ」
「こ、コミュ障なんで」
「ウソでしょう?さっきから無理やり口を閉ざそうとしてる…ボク何か気に障るようなことしちゃったかな?
まあ確かにこんな時間に無理言って食事に付き合わせただけで十分か…迷惑でしたよね、ごめんなさい」
「や、そんなことは……」
「ほんとうに?」


ぐっ。
うっかり否定してしまうとパリストンは寂しそうに微笑んでみせた。

これは計算これは計算これは計算これは計算…!
しかしこんな美形にこうアンニュイな顔をされたらさすがにあたしも負けてしまう…押しに弱い日本人の血がっ……だめだサナ負けるなサナ流されるなサナ耐えろサナサナサナサナ
「よかったらまた、会ってくれるかい?」

「・・・、はい。」


負けました。













「近いうち連絡してもいいかな?もちろんサナちゃんが嫌なら無理は言わないけど…」
「だ、だいじょうぶです…」
「よかった」


本当に嬉しそうに笑うから調子が狂う。困った。


「送っていくよ」
「いいですよ!ごはんもご馳走になっちゃったし…それにそんなに遠くないからひとりで帰れます」
「だいじょうぶだよ、どっちにしろボクもワインを飲んだからタクシーですしね。いっしょに乗ろう?」
「や、でも…」
「あ…やっぱりこれ以上いっしょにはいたくないかな」
「いやそういうわけでは!」
「じゃあ気を遣わないで」


なんだかうまいこと乗せられているというか思った通りに進められている気がする。
自虐されると褒めるしかなくなるあれといっしょだ。「わたしなんかぜんぜんかわいくないし性格もよくないし」「そんなことないよAちゃん優しいしかわいいよ」のあれだ。


どうしよう…でも身バレしたくない…あしたかあさってには事務所見に行くつもりだけど、まだ部屋は天空闘技場の中の個室だしなぁ…近くでおりようか……

別に身バレしても特になんもないっちゃなんもないんだけど、なぁんとなく嫌なんだよなあ…めんどくさいことになるような気がするっていうか…勘だけど……


とりあえず促されるままパリストンとタクシーに乗り込み、運転手さんに場所を告げる。

「えっと、ミツマルデパートのところまでお願いします…」
「はいよ」

「あ、あのへんに住んでるんだ。

・・・・天空闘技場の近くですね」

びくうううううう!!!




「・・・」
「…どうかしたかい?」
「いえ、なにも。確かに近いですね」


慌てて取り繕ったけど、パリストンは妖しくわらった。
あ、やばいこれやばい。闘技場のこと口にするときの間のとりかたといい、確実になんか探られてる。


「ときどき観に行くんだ、人気の試合ばかりだからほとんどはバトルオリンピアとか200階クラスのものばかりだけど」
「・・・」
「でも最近はそれより下のクラスでも、わりとおもしろい人材がいるそうだね?」
「へ、へえー…」



十二支んの、子はやはり。
猫を取って食う嫌なやつだった。

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