思考回路はショート寸前

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一番星も捕まえるくらい!



第25話
音がする






「よかったよーRAIN!ほんとに喉強いしいい声してるね、聴き惚れたよ」
「あはは、ありがとうございます」



レコーディング後。

無事に7月7日の先行デビューに向けてGOサインが出たのでそれに向けて動いている。
あたしの喉が強くどれだけでも録音できるから(実際はたいしたことない。喉の状態を念で戻してるだけ)MVの完成が予想の数倍はやくなりそうで、社員の皆さまも大喜びみたいだ。
そんなにリテイクもなくてよさそうだし、なんともラッキーである。


7月7日にデビューしたいっていうのはあたしの完全なるわがままだから、なるべく一生懸命手をつくしたい。

あたしは売れるとか人気とか別にそんなどっちでもいいけど、こんな頑張ってもらってるんだから恩返しはしたいしね!



「これからどうする?予定よりはやく終わったからおやつでも食べに行くかい」
「あ、いいですねそれ!確かになんか甘いもの食べた…」


〜〜〜〜〜♪


いです、と続けようとするのを遮って着メロが鳴った。
んー誰だろ、ヒソカとかパリストンなら無視するんだけど…



すみません、そう言って確認するとメンチだった。あれれ。


出てもいいよと言われたので通話ボタンを押す。


ピッ、



「もしもし?どうしたの」
「あーサナ?いまどこにいる?」
「いま仕事中〜」
「あ、ゴメンまずかった?このあとも忙しいかな」
「ううん、もう終わった。今からお茶して帰ろうかと…」
「ハンター協会最高責任者のネテロ会長があんたの事務所に行っちゃったんだけど」
「ぶっふぉ!?!?!?!?」



あ、驚きすぎてなんかよくわかんないものが口から飛び出た気がする。


















「よ、ようこそいらっしゃいませたいへんお待たせいたしました…!!」


ハア、ハア。
こんなに急いだのは初めてかもしれない。


会社のひとに急用が入ったと伝えてから猛ダッシュで事務所へ帰り扉を開けた。
外で待たせる訳にはいかないので、留守中事務所内の警備をさせている自分の分身(鏡〈ミラー〉のカードで作り出した)に扉を開けさせて中にお通しさせている。
分身に状況を説明させておいたので、帰宅してからの自己紹介はずいぶんとスムーズだった。


「ほう、おぬしがCATか。はじめまして。
すまんのう、急がせてもうたかな」
「はっ、はじめまして…いえそんな、すみません、」
「にしても精巧にできた分身じゃったのう」
「あはは、ありがとうございます・・・」


ありがとうね、と礼を言って分身を消した。
あんまりずっと出しとくと疲れるしね。でもこの能力あってよかった、本当にカードキャプターさくらの技は汎用性高い・・・。


ちなみにメンチは仕事らしく、なんといきなりネテロさんと二人ぼっちだ。あたしの名前を広めようという彼女の優しさが染みるが、正直もうそれどころではない。なんということでしょう。



「そうカタくならんでもよい。メンチくんとこのあいだ話をしていたときにおぬしの名前を聞いてなあ、辛口なあの子がああまで人を褒めるということが気になってワシも会ってみたくなったのじゃ」
「あ、ありがとうございます…」
「どんな子なのか話がしたくてのう。ついでにこの時計も直してくれると嬉しいんじゃが。ワシはこれでしかすっきり目覚めれんのに寿命がきたようでな」
「あ、はい!それならぜひ…」


そしてあたしは風呂敷に包まれていたその古い感じの目覚まし時計を受け取った。
ベルを叩くタイプのジリリリリって鳴るやつだろう。ところどころに傷がついていて年季を感じさせる。


「えっと、見た目は変えないほうがいいですか?傷はそのままにしておきたいとかご要望あります?」
「そうじゃのう…ここの色落ちだけ残しておきたいんじゃが、そんなことはできんかの?」
「いえ、だいじょうぶですよー!」


じゃあこの部分だけを外して時間を戻そう。ジンさんと別れたあともわりとまじめに修行していたら0.01ミリ単位で範囲を操れるようになったから別にぜんぜん余裕である。

この技はあたしのオリジナル。
すぅっと息を吸って、唱えた。

「時空飛行〈タイムスリップ〉!」


ぽう、と光に包まれた時計は時間の経過をなかったことにされる。

その光がなくなったとき、それはすっかりと新品(色落ちだけはそのまま)になっていた。




「ふむ。素晴らしい」
「ありがとうございますっ」

「お値段はいくらかな?」
「あーいま無料キャンペーン中なんでこれくらいのことはいいですよー。もっとおっきい仕事なら別ですけど」
「それは太っ腹じゃなあ。今度なにかお礼に送ろう」
「いえいえお構いなく」



すこぶる機嫌がよさそうなネテロさんになんとなくホッとしながら、もうお茶がなくなってきているので注ぎ足してあげないとと立ち上がると、ネテロさんが笑顔で言った。



「のう、もうひとつ頼みがあるんじゃが」
「はい?」




「十二支んに入ってくれんかな」





コロン。

ネテロさんのコップの中のこおりが、溶けて音を立てた。





「・・・は?」


「入ってくれんかのう」





同じ調子でネテロさんは繰り返す。




・・・・・。えっと?

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