反射しては、屈折して。

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「RAIN、これ昨日届いてた分のファンレターね」
「わーーーーーーいっ」


動画公開当時から少しずつ届き始めていたけれど。あのデビューライブ以来、膨大な量のファンレターが届くようになっていた。

なかなかひとつひとつ返事ができる量ではないけど、ぜんぶしっかり目を通すようにはしている。


そして。



“その”手紙は。

今日運ばれてきた。



第31話
プリズム




『拝啓

RAIN様へ。


突然のお手紙失礼します。

はじめて貴女の歌をお聴きした時から、ずっと気になっておりました。


ライブを観て、それが確信に変わりました。


貴女は………君は。

サナでは、ないだろうか。』



「え。」



とても丁寧な字で綴られた手紙。

その内容にあたしは目を瞬いた。



『この四年。

ずっと君を探していた。


君は生きている、そう信じて疑わなかった。

ずっと会いたかった。


もしもこれが人違いであったのなら、申し訳ないがこの手紙は捨ててほしい。


だがオレは確信してこうして筆を取っている。


サナ。

もしも君が本当にサナなら、一度連絡がほしい。


もう一度君の笑い声を、歌声を、となりで聞きたい。


言いそびれた言葉があるんだ。ずっと君に伝えたかった。

もう一度会いたい。


…返事を待っている。


敬具

クラピカ』





・・・・・。



「んんんんんんんー?!?!?!?!?!」






















クラピカから、手紙が届いた。

すっごいよくわかんないんだけど、クラピカから手紙が届いた。


それがただのファンレターなら嬉しくて小躍りしていただろう。


でも。



「また、サナ・・・」


クモに引き続き、今度はクラピカまでサナという人物を探している。

っていうかあのクラピカだよね???たぶんそうだよね?????



生きている、と信じて疑わなかったって…サナさんいったいどんな目に遭ってるんだ…?????


っていうかもしかしてクルタ族?

あーーーーーそんな気するなあだったらすごい言いにくいけどぜったいもう旅団にやられてない・・・。



困りながら封筒の中をもう一度見ると、やはり連絡先が入った紙があった。


いやはやー・・・・・・。



「サナって名前、こっちで流行ってんのかな…」


クモが探してるサナさんと、クラピカが探してるサナさん。

まあ普通に考えて違う人物なんだろうけど、こんな偶然あるんだろうか。まあ世界には似てるひとが三人いるっていうし・・・うーん。


「返事どうしよー…」


残念だけど、あたしはクラピカの探すサナさんじゃないし。

だったら無視していいんだろうか。


いやーでもなまじっか同じ名前だし、この文章から切羽詰まった感じがすごいして胸が痛い、だいぶ。

いやでもなー………ていうかあたしシャルナークからのご飯のお誘いもまだ無視してんだよな。どうしよ。まじで。こういう面倒なこと後回しにするのほんと悪い癖だぞ自分。なかなか改められないけど。



「…はあ。」


思わずため息をついた。



・・・こっちの世界のサナさんは。





「愛されてたんだなあ・・・・・」




























そして、クラピカへの手紙の返事をどうするか決めかねたまま。
メインズファミリーのダンスパーティ当日になった。

クラピカへ、どころかシャルナークに対してもなんにもできていない。クズだ。クズの極み乙女だ。いやあでもほんとにあたし以外あたしじゃないんだよみんな…人違いだよ・・・。


ため息をつきながら念で成長させた自分の姿を見る。

黒色のロングドレスは年をとった自分にそれなりに映えた。


少し鬱々とした気持ちを持ち上げるためにルージュの唇にマニキュア。

装飾品はゴールドで固めてちゃんと大人みたいになった。

「・・・」



鏡の前の自分はどこまでも情けない顔をしている。





あたしはここにきてもちゅうぶらりんで。


本当に何も変わらないままでいる。

まるで、ほんとうに14歳の少女であるかのように。
不安定で、心細くて、変に世界を斜に見たまま。










「おお…やっぱお前キレイだな」

「あはは。クレオもかっこいいよ、タキシード」


クレオも同じ椿の間の担当だから、配置について優雅に食事をしながら話す。立食形式。

別に問題が起きなければこういう仕事は呑気なもんだ。まあ復讐うんぬんは気になるけどだからって目の前のごはんを楽しまない手はない。



「一曲いかがですか?レディ」
「あたしそういうのできないからパス」
「テキトーにオレで手を打っとけよ。お前美人だからまわりのやつらに狙われてんぞ」
「こうやってごはん食べてたらかわせるでしょ」
「・・・まあ確かに」


ね?と笑顔を見せるとクレオも少し困ったように笑った。

あ、やっぱかっこいいなあ………スーツはうん、5割増しだわ。





「ちょっとお手洗い行ってくんね」
「おう。テキトーに待ってる」
「いいよお。せっかくかっこいいんだしそのへんの女の子引っ掛けてきなよ」
「お、褒めてくれてんの?お前より綺麗なやついねえからいいや」
「なんも出ないよ」



じゃあまたあとで、と手を振って別れる。

クレオはこう、ノリが楽だ。もうこっちの世界じゃメンチの次くらいに楽だ。ありがたやー。


せっかくだしネオンちゃん見れないかな、と牡丹の間を覗いてみる。残念ながら見つけられなかった。人多いなあ。















「あれ」

と、思いきや。



「わ、あなたキレイー!!!!!」



トイレでネオンちゃんに会ってしまった。








「東洋人?すごく綺麗ね!黒のドレスにその口紅とっても似合う!どこの?すごくいい色!」
「え、あ、」
「いいなぁわたしもその色ほしいー!でもわたしにはまだ似合わないか。お姉さんほんとにきれー!!!!!」


突然の遭遇に驚く間も無く意味がわからないほど絡まれてしまった。

・・・普通の女の子みたいな趣味もあったんだ。そりゃあるか。



「い、いや、ネオンちゃんのほうがかわいいしきれいだよ…」

目をパチクリさせながら言うと、ネオンちゃんは、ん?と小首を傾げた。かわいい。


「あれ、私のこと知ってるの?」


あ。



「まあメインズさんのダンスパーティーだもんね。そりゃそっか。会ったことはあったっけ?」
「そ、それははじめてだよ…!」
「だよね、こんなきれいなひと会ってたらいくらわたしでも覚えてるもん。はじめまして、あなたの名前は?」
「えっと、CAT・・・」
「よろしくね!」


よ、よかった…!!!!!よかった…!!!!!よかった…!!!!!よかった…!!!!!!!!!!!!!!!



よかったの嵐が止まらない。まあネオンちゃんだもんね慣れてるよねこういうのねそりゃね…!よかった…


よく見たらエリザもいる。確かに美人だな、と思っているとぺこりと会釈された。

それに気づいたようにネオンちゃんが笑顔を向ける。



「あ、彼女は侍女の・・・」

ガシャーーーーーーーーーン!!!!!!


突然。


突然だった。


ものすごい爆発音がした。
ネオンちゃんがエリザさんをあたしに紹介しようと手を出してくれたタイミングだった。




何かが破壊された音・・・


いや、“何か”なんかではない。

どこかの部屋が半分倒壊していたとしてもおかしくないくらいの、爆音。




『“復讐”』


クレオの声が頭の中に落ちた。



たぶん、これが。



きっと。
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