どこへ行くのかも知らず

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あたしは理解し、すぐに円を屋敷中に広げた。たぶん後からめっちゃ疲れる。し、めっちゃお腹すく。



でも、このままじゃ。


死人だって、出るかもしれない。




「…ネオンちゃん、あたしはここで何かが起きたときにそれをなんとかするために配置されている何でも屋です。メインズさんに雇われています。
ネオンちゃんのことはちゃんと守るから安心して?とりあえず、ネオンちゃんのボディーガードさんはどこかな」


冷静なふりをつとめて、話す。


いやだ。やめてほしい。生々しい現場は怖い。今までぬるい仕事しか受けてこなかったんだ。だから。だから。



『オレは帰りたくなくて』


ふと。

キルアのことを思い出した。


あたしより、ぜんぜん年下なのに。あたしなんかまだ現状も把握してない状態でこんな、ビビってんのに。なのに。


きっとこんな世界を、腐るほど見てきて。


それでも彼は腐れなかったから、きっと懸命に抵抗したんだ。



「っ・・・」


進まなきゃ。

前へ進め。



ハンターになれ。ハンターになれ。


それしか道はないんだから。受け入れろ。やらなきゃいけないことをしろ。仕事だ。仕事だ。がんばれ。できる。まだ何も状況を把握してないじゃないか。べつに怖いものを見ると決まったわけじゃない。第一あたしは、強い。

できる。できる。


『やりたいことがあるんだ』


また、クレオの声が頭に響いた。




第32話
近づく






お手洗いを出るとネオンちゃんのお付きの人たち、マンガでもよく見たダルツォルネさんやスクワラさんがいた。

「ボス!!!」


ネオンちゃんと侍女の皆さんが無事であることをリーダーのダルツォルネさんが確認する。とりあえずあとはこのひとたちに任せればいいだろう。

変に護衛を申し出たって断れるだけだし、怪しまれる可能性すら高い。とりあえずぺこりとダルツォルネさんに頭を下げた。


「会場警備を任されているものです、もう大丈夫ですね。

では、わたしはこれで失礼します。ネオンちゃん、気をつけて帰ってね」

「うん、あなたもね。CATさん、またね!」


そう言ってネオンちゃんはひらひらと手を振ってくれた。

こんな殺伐とした世界で生きているのに、こうも普通ににこにこしてる。


これ、才能だな。まじで。



あたしはなんとなくネオンちゃんが見えなくなるのを見送った。


さて、どうしよう。




「(音はすごかったけど、特に大きな被害があるわけでもなさそうだな・・・よかった)」



どうやらネオンちゃんやノストラード氏のいた牡丹の間の壁が爆発したらしい。ちなみにメインズ氏もそこにいた様子。
怪我人は多数いるも、そこについていた警備員たちはわりとしっかりしたひとたちだったしみんな無事っぽい。けど。



「え、メインズ氏が行方不明なの?まじで?」



メインズ氏が消えたらしい。混乱に乗じて。



・・・これが狙いだったのかな???たしかにふたりくらい頼りなそうなやつが護衛についてたから、崩そうと思えばそこはぜんぜん軽く崩せる気がする。



うーん、と頬をかいた。


でもなんでこんな配置にしたんだろう。

最初から計算ずくだったのだとしたら、警備を考える時点で中にもうスパイがいるはず。


つまりそれが、クレオの言ってた。



「復讐・・・・・」



うーーーーーーーーーーーーーーん。


まあでもあのオッサン普通に悪いことめっちゃやってそうだから当然な感じもする・・・。


とりあえずクレオとも話したいし、持ち場の椿の間に戻ろう。そう思い歩を進めようとした瞬間誰かに名前を呼ばれた。



「CAT!」
「あれ、クレオじゃん。いま行こうと思ってたの、無事?」
「おう。っていうかたぶんメインズ氏以外ぜんいん無事だと思うぜ。あとな、サラフェ氏も消えた」
「え、サラフェ氏も誘拐されたの?」
「ちげーよ。たぶんサラフェ氏が首謀者だ」
「!」


クレオは頭をかきながら事情を説明してくれた。



「オレも持ち場がちげえから詳しいことはわかんねェんだけどよ。ただ今回オレらが雇われたのは、なんかタレコミで何かしらパーティーの邪魔が入るかも、みてェなのがあったかららしいんだ」
「(それネオンちゃんの占いかな)」
「で、それがオレらみたいなのを雇えば収まる…っつーのでこうなったんだけど結局起きたな」
「クレオのことだからその情報元もどこか知ってんでしょ?あたしもわかってるから隠さないでいいよ、ノストラード氏の娘でしょ」
「お、知ってんのか」
「でもあの占いは外れないはずだよ、そういう能力なんだから。もし外れるとしたらその占いのあと、それを変えようとし・・・そうか。」


誰かがそれを変えようとしたのか。




「メインズ氏の右腕であるサラフェ氏ならその内容も相談されてるだろ。っつーかだからあの人にオレら雇われてんだし」
「たしかに。」
「で、サラフェ氏が消えたと。まあなんとなく予想どおりだったんだけどな。この仕事受ける前にサラフェ氏について調べたんだが、あいつの経歴はぜんぶ嘘っぱちだった。うまく偽装はしてたんだけどな」
「え、ほんとに?じゃああんたなんでそんな怪しいひとの仕事受けたの」
「おもしろそうだから」
「わあ悪趣味」

目をぱちくりするといたずらっぽく笑われてしまった。こいつ、やるな・・・。



「とりあえずサラフェ氏が筆頭に立ってこの騒ぎを起こしてるとなると、オレらとの契約事項もどうなるかわかんねえからな。
オレはいったんサラフェ氏のところに行くつもりだが、お前どうする?」
「え、ついてく。でもどうやって探すの?」
「まあ任せとけって」


ガリッ。


言うや否や、クレオは自分の親指を噛んだ。


お、これは。
念能力見れるやつだ。



「その地を示せ!」


クレオは血を滴らせた親指で十字を切った。


ぽう、とその軌跡に明るい光が灯る。



その光の真ん中に手をかざしたクレオは、そっと目を閉じ何かをつぶやいたあと、わたしを見てこう言った。



「見つけた。この地下だ」
「! 地下は盲点だった」
「灯台下暗しってやつだな。行くぞ!」



何が起こるかはわからない。


わからないけど、あたしだって。





「(ちゃんと強くなるんだ)」



なんどもそう決めた。

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