もう戻れない

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「あたし・・・」


他人の空似なんかじゃない。

髪質も、まつげの長さも、黒子の位置も、ぜんぶまごう事なくあたしだ。


自分の寝顔なんてみたことないけど、この子が目を開けたらぜんぜん違う顔だったりするんだろうか・・・いやでもこれぜったいあたしだ。

本能のレベルでこの子はあたしだと確信してしまっている。


何より、この子がただのあたしの空似じゃない理由がもうひとつ。



「時空の管理人が持ってたロッド・・・」



彼女がつけているピアスが、時空の管理人の持っていたロッドの形をしているのだ。


これは偶然なんかじゃない。この子は、他人なんかじゃない。



ここにあたしが、ふたりいる。



「(自分のドッペルゲンガーって見たら死ぬんだっけ)」



そんなことを思いながらあたしは『あたし』の入っているショーケースに手を伸ばした。



第34話
弾けた





ショーケースの取っ手を掴み、ふと気付いた。

もしかして。



クモやクラピカが探している『サナ』とは、この子のことなのではないだろうか。


この子が何者かはわからないけど、だとすれば彼らがあたしをこの子だと勘違いしたとしても当然だとおもう。

別の世界から来たんだから、こんなことがあってもおかしくないのかな。世界には似てる人間が三人いるっていうし、そもそもここはあたしにとって異世界なんだから自分に酷似している他人がいたっておかしくないのかもしれない。名前までいっしょっていうのはちょっとあれだけど。

っていうかこの子がもしも本当にあたしなのなら、どんなに油断しててもぜったい誘拐なんてされたりしないはず。あたし強いし・・・・・っていうかあたしはあたしでありあたし以外あたしじゃないんだから悩んだって仕方がない。あたし以外あたしじゃない!あたし以外あたしじゃない!あたし以外あたしじゃないのー!!!よーし落ち着いてあたし落ち着いて!これは他人!あたしじゃない!


そうだ、とにかく落ち着いて。とりあえず先にこの子の全身麻酔を吸い出して直接話を聞こう。申し訳ないけど他のひとは後回しだ。もうちょっとがまんしてくれ。


そしてあたしはショーケースを開いた。





瞬間。






「っ、キャッ・・・?!」







『サナ、大きくなったら誰のお嫁さんになりたい?』







映像が。









『オレを知っているのか?』『はじめまして、アタシは・・・』『サナっていうのね』『ねえ、この服似合うと思んだけど』



『だいじょうぶ、ここにいるヤツらはみんなお前と同じだよ』





知ってる。




あたし、知ってる。


これは。



『おー、だいぶ身長伸びてきたんじゃねェか?』『サナ、お前のすきなチョコレートだぞ』『サナ』


『サナ』『あら、上手に描けたわね』『ガキは苦手なはずなんだがな』『サナ』『サナ』


『まだ熱が下がらないね…』『サナ』『だいじょうぶだ、オレがそばにいてやるからな』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』



『熱が下がったら』



『いっしょに星を見に行こう』



『サナ』






『サナ』










『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』『サナ』











『はじめまして!オレはクラピカ。

君の名前はなんていうの?』








いやああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!








痛い。痛い。頭が割れる。


やめて。なんで。どうして。どこ。クロロ、シャル、マチ、パク、ウボー、ノブナガ、フィンクス、フェイタン、フランクリン、ねえ、みんな、ねえ、お姉ちゃん、お兄ちゃん、痛い、痛いよ、ずっと、いっしょに、いっしょって、痛い、あたま、頭が、やめて、お願い、


殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで






「クラピカ・・・・・」





12歳になったら、あたしもハンターになるから。

そのときはいっしょに、冒険しようね。






























「オイ、しっかりしろ!!!!!!オイ、おい!!!!!サナ!!!!!サナ!!!!!」
「・・・」
「サナ!!!!!!!!!」

「・・・クレオ…?」



揺さぶられる感覚で目を覚ました。

心配そうな顔をしたクレオが、あたしを覗き込んでいる。


あれ、あたしはいまどこにいるの?



パイロは?

パイロはどこにいったの???????





「おまえ、叫び声が聞こえたから!大丈夫か?!何もされてねェか?!何が」
「みんなは・・・」
「え?」


「みんなは、どこ・・・?」




どこなんて聞いたけど、知ってるんだ。


殺されてしまったって、知ってるんだ。



そしてあたしも死んだんだ。





なのに。どうして。

あたしはここで、息を。








「(クラピカ・・・)」


ごめんね、あたしはなにもできなかったよ。



あなたはあたしになんだってしてくれたのに。なんだって教えてくれたのに。




あたしはほんとうに、なんにもできなかった。


なんにもできなかったんだ。
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