「あれ?」
「おはよおー・・・」
「あ、そっか今日は朝いるんだっけ。ハヨー」
リビングの扉を開くと、CATがソファでテレビを見ていた。
そういや今日は昼から出るって言ってたな、と思いながら喉が渇いたので冷蔵庫に向かう。
「CATもなんか飲む?」
「あ、うんー。ありがとう」
「お茶でいい?」
「うんー、ありがとうー」
CATはクッションを抱えながら朝のニュース番組を見ていた。
気の抜けたような返事がくるのでよっぽど夢中になっているのかと見てみると、あんまり興味のなさそうな内容で。
「(なんかあったんだな)」
そう思った。
第41話
再会
「プリン食べる?」
「うんー。ありがとー」
「そのテレビおもしろい?」
「んーーーーー????うーん」
あ、やっぱ見てねえんだな。
そう思いながらソファに向かいとなりに座る。
目の前にプリンを置くと、もう一度力がない礼を言った。っていうか礼言い過ぎ。
「・・・昨日なんかあった?」
昨日は昼過ぎにいっしょにランチをして、その後急に仕事が入って別行動だったからちゃんと話すのは昨日の昼ぶりになる。
オレの仕事が遅くなってしまったので、夜は一人で外で飯を済ませてきた。
帰ってきた頃にはCATは自室に籠もっていて、まあ忙しいんだろうなと気にしてなかったんだけど。
「うーん、ちょっとねー・・・」
「仕事関係?」
「えっとー・・・それはちょっとちがう・・・」
言ってくれたらいいのに。
CATはオレに心配をかけないようにしようとしてるのか、あまり何も話してくれない。
なのにわかりやすい。わかりやすいから困る。
悩んでるなら言ってほしい。もしかしたらオレにだってできることがあるかもしれないのに。
まあでも年齢もたぶん一回り近く離れているし、そういう訳にもいかないんだろうな。オレ居候だし。
ふう、とひとつ息をつく。
変に聞くのも野暮だろう。
あの初めて出会った晩とは違い、いまのオレはCATに住まわせてもらい、雇ってもらっている。
距離感を図り違えてしまうのは嫌だ。ここは居心地がいい。
「ま、なんかあったら言ってよ。別に聞くくらいならできるし」
「ありがとー・・・ごめんね。」
CATはプリンの蓋をペリッと開けて、一口ずつ食べ始めた。
「おいしー・・・」
「・・・」
「きょう、もしかしたら夜まで帰らないかも」
「オーケー」
「いつもありがとうね」
「ありがとう言い過ぎだよ。
オレ、CATに住み込みで働かせてもらってんのに」
そう答えると、CATは力なく笑って「キルアは優しいね。」と言った。
いつも、そう言うけど。
お前のほうが、何億倍も優しい。
「ありがとね。また、帰るとき連絡する」
「おー」
きのう。
夜、部屋で改めてクモのことについてとクルタ族について調べた。
情報としてはあたしがもともと持っていた原作での知識となんら変わらない。記憶通りで、そして、記憶通りなのに、とても胸が痛くなった。
自分の記憶は何が正しいのかわからなくなってくる。友達も家族ももう会えないから答え合わせをすることもできない、宙ぶらりんだ。
どうしてクモとクルタ族と、両方と過ごした記憶があるんだろう。あたしの記憶じゃないとしても、そんな記憶を持つあの『サナ』は一体何者なんだろう。
鮮明には思い出せないけれど、どちらと過ごしたことも覚えてる。
とてもとてもたのしかった。とてもとてもたのしくて、そして・・・・・
「自殺したのは、覚えてるんだよなあ・・・」
これはけっして、あたしの記憶じゃないけれど。
シャルナークに指定されたカフェはとてもおしゃれで可愛らしい、女の子ウケするようなお店だった。
15分前に着いたけれど、もうシャルナークは店の前で立っていた。
まだこちらには気づいていない。髪の毛をサラサラとなびかせながら、ソワソワと時計を見ていた。
それにひどく胸が痛くて、懐かしさで吐きそうになった。
「・・・お待たせ、しました」
掠れる声を振り絞って言うと、シャルが、こっちを向いた。
わらった。
「ううん、いま来たところだから。
きょうは来てくれてありがとう」
そう、彼は。
いつも優しかった。