はじめの一歩で救われてみる

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「ここだよ。この中に、みんないる」
「・・・」


シャルに連れられてきたのはビルの廃墟だった。
ドキドキと心音がうるさい。今からみんなに会いに行くんだ。


「行こうか」
「・・・はい。」


そしてあたしは、旅団の本拠地に足を踏み入れた。



第43話
フラッグを立てろ







「ただいま。サナつれてきたよ」
「・・・お邪魔します」

「サナ!!!!!!!」


借りてきた猫のようだな、と思いながら小さい声で挨拶をすると、すぐにウヴォーギンとノブナガが駆け寄ってきた。

「よく来たなァ、待ってたぜ」
「飯はもう済ましたのか?」
「うん、もう食べてきたよ」
「「シャルじゃなくてサナに聞いてんだよ」」


ハモる二人に思わず笑ってしまう。
なんだかやっぱり懐かしいような気がした。


「・・・まだ記憶が混乱してるままなんでしょ?デカイ図体でいい年したオッサンが近づいたらびっくりするからやめたげなよ」
「「んだとォ!」」


冷静に話すマチに声を荒げる二人。
ああ、本当に仲良いんだな。

昔もそうだった、と思って一度首を振る。
違う、そうじゃない、こんな人たちあたしは知らない。

でも・・・。


「オレじゃなくてノブナガのことだろ?!マチ!」
「あァん!?お前ェに決まってんだろ、ンなゴツい体して!」
「お前ェがヒョロイんだよ!!!」
「ヒョロくはねェよ!!!」


バカみたいにケンカするふたりにどうしてもおかしくなってしまう。
あはは、と声を出して笑うと、二人は「サナもコイツのほうがオッサンだと思うだろ?」と同意を求めてきた。

突然のことに面食らって、ウーンと返事に困っているとマチがまた声を出す。


「ほらもうサナ困ってんでしょ!

・・・ま、でも前に会った時よりは元気そうだね。よかった」

二人をたしなめた後、マチはあたしを見て優しくそう言った。

懐かしさを否定するのに疲れたから、いっそのことあのもうひとりのあたしの記憶が本当の記憶だったらいいのにとすら思った。





「あれ?団長は?」

そんな胸の痛みを感じていると、シャルがキョロキョロと辺りを見回しながら言った。


「奥にいるよ。サナと二人で話したいんでしょ」
「まったく。相変わらずだなあ・・・おいで、サナ」

そしてシャルに手招きされ、奥の方へと進んで行く。
1つの扉の前で、止まった。


「ノックして、入ってあげて。前自分だけサナと会えなかったからちょっと拗ねてるんだ。喜ぶと思う」
「拗ね・・・?」
「ナイショだよ。ほら、行って」


拗ねるって。子供か。
そう思いながらコンコンとノックをする。


入れ、と声が聞こえた。







扉を開ける。


キィ、と軋む音がした。

















「ようこそ」


クロロが、立っていた。












「よく来たな」
「・・・」


微笑むクロロは美しかった。

ああ、知ってる。このひとはあたしのお兄ちゃんだった。


・・・違うけど。そんなはずないけれど。
彼はただの、漫画の登場人物の一人なんだけれど。その記憶しかないはずだけど。


いろんな感情が渦巻いて、何を言えばわからず黙ってしまった。
そんなあたしを気にしてなのかなんなのか、彼は続けて口を開く。


「オレはクロロ・ルシルフルだ。はじめまして」
「えっ・・・?」

「キミは?」
「あ・・・、サナ・タキガミです、でも・・・」
「?」
「はじめましてって、えっと・・・」


紳士的に振る舞うクロロにどうしたらいいかわからなくなる。

あれ???クモは、あたしをあの『サナ』と勘違いしているから優しくしてくれるのでは・・・あれ???





「キミがオレと会うのは初めてだろう?」
「あ、はい・・・。」

「他のメンバーがオレたちの探している『サナ』を押し付けて困らせただろう。すまない」
「・・・」

まさかこんなことを言われるとは。

クロロにも当然、あの『サナ』として接してこられると思っていたから困惑する。


「・・・あなたは、あたしがあの『サナ』と違うってわかるんですか?」
「正直見た目はそっくりだ。オレも君が、あの『サナ』だったらいいなと思う。
だが、違う人間と間違われて接されることほど気分の悪いものはないからな」


それ。

あたしが、一番最初に思ったことだ・・・・・。




ごくん。
唾を飲んで、あたしは震える声を出す。


確かめたかったこと。
この記憶の持ち主が、特別気にしていたことが2つある。

それは果たせなかった思い。
実現することのなかった約束。


これはまだ、叶えることができるのだろうか。

途切れてしまっていないのだろうか。



まだあなたと、繋がっているのだろうか。





「・・・熱が下がったら」
「!」
「熱が、下がったら。『サナ』とそう約束をしたのって、クロロさん、あなたですよね?」


驚いた顔をしたクロロは、それから少しだけ目を細くして頷いた。



「ああ。
・・・星を見に行こう、サナ」


まだ、消えていなかった。
何度もリフレインしたあのセリフを改めて言われ、胸がきゅうっとなる。

この記憶は、確かに、クモに・・・この現実に繋がっていた。


もちろんこれは『サナ』の記憶。
あたしの記憶じゃない。でも。


いま、『あたし』が持っている記憶。
そういう意味では、これも、あたしの記憶だ。


ちゃんと落とし前をつけないといけない。



覚悟ができたら声の震えはぴたりと止まった。


ちゃんとクロロの目を見て、伝える。


「あたしは、あなた達が探している『サナ』ではありません。絶対に、違います。
でも、あなたたちが探している『サナ』に心当たりがあります。

それを踏まえた上で、信じなくてもいいから、ただ、あたしの話を聞いてくれますか」
「もちろんだ。
オレだけで聞くか?全員で聞くか?」
「・・・全員で、お願いします。」



あたしはけして強くない。
あたしはあたしであって、他の誰でもない。


でも、わからないまま何かを否定するのはよそう。
できることをやろう、話せることを話そう、わからないことは誰かに聞こう。



そして、星を、見に行こう。




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