「右腕60!左足40!」
「とろいし雑だ!それじゃ使いもんになんねェぜ!」
「10秒もかかってる!最低でも5秒以内になるまで飯抜きだぞ!」
「そうだ!あとはしっかりそこを狙って…」
ジンさんは、スパルタだった。
第五話
風も光も味方にして
「よし、昼飯にするぞ」
「ッ……ぷはぁ〜〜〜〜〜!!!!!」
維持していた堅を解除しあたしはぱたんと倒れ込んだ。
あああ疲れた。だああつかれた。今日もつかれた。ジンさん鬼畜ほんとに鬼畜・・・
「ほれ。水だ」
「あああ…あひがとこざひま……」
「なんて?」
起き上がって水を飲むとやっぱりおいしい。なんだろうこれあれかな。超神水的な何かなのかな。
飲み終えてからまた後ろに倒れ込むと、ジンさんはさっき獲ってきたらしいお肉を焼き始めた。うおおおお。うまそう…
わりと食が細かったあたしが最近ほんとに死ぬほど食べてる。食べても食べても食べれる気がする。修行がスパルタだからなのか、ちょっとでも動くと本当におなかがすく。
これが若さ、健康というやつなのかしら・・・っていうかもしかしてただの成長期なんかな・・・すげえな14歳の食欲・・・。
「サナわりと根性あるよな」
「まじっすか…初めてですよそんなこと言われたの……」
「あるからうっかりスパルタにしちまう」
「うっかりじゃないですよもー!!!!!」
怒ると「そんだけ元気なら十分だ」って言われた。おぼぼぼぼ。午後からもスパルタコースだ。
「今までもなんかやってたのか?」
「なんっにも。バリバリインドアです」
「もったいねェなー。こんだけ素質あんのに」
「トリップ特典ですよきっと」
今まではどちらかというと(っていうか悩むまでもなく)運動オンチなほうだった。ほんとうにただのウンチだった。
まあでもだからいまこんな楽しんで修行できてるのかも…頑張ればできるし、なんだかんだでジンさん優しいし……
「…あたしちゃんと成長できてますか」
「おう。オレが保証してやる」
そう言ってジンさんは笑ってくれたのであたしはとにかく嬉しくなって、よいしょと反動をつけてジンさんの隣に座った。
「へへ。じゃあがんばる!」
にかーっと笑うとジンさんは少しきょとんとして、あたしを見てから微笑んで頭をぽんぽんしてくれた。あああイケメン。やっぱり男は30からだなあ。
「…なんつーか娘ができたみてェな気分だな」
「こんなフラフラした父親はいやでーす」
「言ったなお前、再開後はより厳しくいくぞ」
「嘘ですごめんなさい本当にごめんなさい」
そんなこんなであたしとジンさんは二人仲良くお肉を食べた。
非日常が心に染みる。
たいへんな修行も合間の談笑も、きっとあたしの光になるのね。
「サナ。起きろ、サナ」
「すー………すー………」
いつも通り洞窟の中。外はもうすっかり暗く、月と星がきらめいている。
火を灯しただけの場所で、ただひたすらに眠るサナはどこまでも幼く見えた。
「・・・サナ」
起きない。
本当に、異常なまでに起きないのだ。
自分の体の疲れが取れるまで。それは修行がハードだから、とかそれくらいの理由では済まされないほどに。
「・・・」
ぽう・・・
手に光を、つまり己の気を集める。
少し近づけただけで、それはすべて彼女に吸収されてしまった。
「(確信、だな)」
もう一度繰り返してみる。
……どうやらオレは、酷く厄介なものを拾ってしまったらしい。
夢を、見ていた。
お母さんがいて、泣いていた。
お父さんも、兄弟も、友達もいた。
抱きしめあって、泣いていた。
それを見てあたしも泣きたくて、でもぜんぜん涙は出なくて、ただただ喉が痛くなるばかり、ただただ鼓動がはやくなるばかり、
ドクン、ドクン。
どくん、どくん。
痛いよ。
口を開いて、でも言葉はでなくて、
あたしは代わりに息をしたようだ。
「っ、は…!」
朝、だった。
それでも体はとても、とてもとても軽かった。少し頭は痛かったけど。
「起きたか」
「んぁ・・・は、はい…」
「んー?なんか悪い夢でも見たのか」
汗だくだぞ、とジンさんはぐちゃぐちゃになったあたしの髪の毛をさらに手でむちゃくちゃにした。
「…やな夢、みました」
「おー。話すか?」
「はは、だいじょぶです。そんなことよりおなかすいた」
「おう。オレもだ」
朝だった。
そうだ。
あたしはここで、朝を迎えるんだ。
「ねえジンさん、今日はどんな修行するんですか?」
「いつもと変わんねーよ。…ま、でもそろそろ水見式もすっか」
「え?!?!?!ほんとに?!」
「おう」
ケラケラ笑っていっぱい食べる。食べて、食べて、食べてたら。
おなかもいっぱいになって、痛いのなんてわすれた。
ジンさんはただ黙って、それを見ていてくれていた。