「うわーーーーーやっぱり自分強化系だと思ってたーーーーーーー!!!!」
「よっ単純バカ」
「うるっさいです!!!」
第六話
ひとつめの鍵
水見式をやると大量に水が溢れ出た。もう念をあらかたマスターしてるからだと思うけど、普通にどばどば出てる。
はー、強化系かあ。どんな能力にしよ。ジャジャン拳もらっちゃおうかな。…いややっぱあたしはあれ恥ずかしいからいいや。
強化系ねえ。
まああんま戦いたくないし、ヒーラーみたいな感じになってひとの怪我とか治して飯食っていけたらまっとうだし自分的にも万々歳なんだけど…うーん。
「ま、でもそうは問屋が卸さないわな」
「ん?」
「よく見てみろ。葉っぱが回転してる。増えた水の量が原因じゃない、これは葉の動きだろ」
「あ」
ほんとだ。
あれ?あたしじゃあ操作系でもあるってこと?ん??
そうこう考えてるうちに、水の色が変わっていく。あらまあ綺麗、って言いたくなるような緋色だ。ジンさんに言われて確かめると、緋色が濃くて中になにがあるのか見えにくかったけど、ちょっと欠けたクリスタルみたいなものができていた。舐めると味もけっこう甘い。
わー、もしかしてわたしぜんぶの系統使えちゃったりするんですかねー、とかジンさんに言ってみると、いいから黙ってもうちょっと続けろと言われた。
これ以上なにが起こると言うんだろう。ぜんぶ起きたぞ。
そう思いながらも素直に従い、念を送り続けていると、なんと。
「わっ…?!」
消えた。
えっ消えた?!
最終的に水も葉もグラスも消えた。なんということでしょう。あったはずのものをなかったことにしてしまった・・・えっまじこいつらどこいったの???
「最後こうなったか。なんかおっかねえな」
「いや、ほんとですよ…どこいったんですかグラスと水…」
「ま、十中八九お前が吸収してるわな」
「へ?」
「お前が体の中に取り込んでる。自分が放出した念を、取り戻そうとしたときにグラスと水も食っちまったんだろ」
「食っちまった…?」
ジンさんの言葉の意味がわからず首を傾げる。
いや、あたし何も食べてないっていうか………え?食う?そんなガッチャンみたいな………え???
「お前の体はお前に接してきたやつの記憶を元に作られてるって言ったよな」
「は、はい」
「それがまず意味不明だった。普通の人間は男と女が結ばれて、母親の胎内で少しずつ育って…っていう手順を踏むだろ?お前はそうじゃなかった」
「はい。…え、でも仕方ないっていうか…ん?つ、つまり?」
「お前の体は細胞レベル…いやもっとか、1からすべてそいつらの念で作られてるただの物質だってことだ」
「・・・?」
結論を言われても意味がわからなかった。念???で???作られてる???
わたしの体が?これ、念???
念?
「お前の身近にいたやつらの記憶とか思いを念に変えて時空の管理人がまとめて具現化したようなもんなんだろう、たぶん。
だからお前はすげーでけェ念の塊だ」
「かたまり、、、」
つまり、あたしは人形?ってこと???念人形???
人間ではない…ってことじゃ………
「お前いまどうせ自分もしかして人間じゃなくて人形じゃないの、とかいう死ぬほどアホくせーことで悩み始めてるだろ」
「?!」
「どんだけ強化系だよ。アホか。念でできてようができてまいが結局この世界じゃ念が絶対みてェなとこあるんだ、大事なのはお前自身の魂なんだからしょうもないことで悩むな」
「しょ、しょうもないって…」
「なんで記憶でできてるって言われたときは納得してたのに念になると凹むんだよ。変わんねェよ、わかりやすくなったからちょっと悩みやすくなっただけで」
「う…」
ジンさんにはなんか何でもかんでもお見通しみたいだ。あたしが分かり易すぎるのかもしれないけど(ていうかほんとそれ)。
「サナはサナだ。胸張って生きろ」
「・・・」
あらやだ、なんかかっこいいこと言われちゃった。
わかったな、と強い目で見られてあたしには頷くしかない。
…ほんとにかっこいいな、このひと。
「まあオレが心配してんのはこっからでよ。オレら念能力者は自分の生命エネルギーで戦うけど、お前はその体で戦ってるってわけだ。
わかるか?例えばオレらが念を使い切っても体は体として存在するから、しばらく全身疲労で動けないような状況になってもまあ最悪それだけだ。…でもお前の場合」
「…もしかして念使い過ぎたらそのまま消滅したりします?」
「消滅するかどうかまではわかんねェけど、まあ可能性としては捨てきれねーわな。」
「・・・」
念習わなきゃよかった?!?!
あたしは慌てふためいているも、ジンさんはそのまま続ける。
「あと一個気になったのが、記憶をもとに作られたんなら成長もできないんじゃねェかっていうところだ」
「!」
確かにそうだ。
えっじゃああたし永遠に14歳…?いやそんないやいやそんなバカな。
14歳か、そりゃ響きとしては悪くはないけど実年齢との乖離どんどん開いていくのはさすがにカンベンしてほしい。大人になるのは責任も伴うけど自由も付随する、さすがに永遠に未成年はきつすぎる。まじで。
どうしよう、と頭を抱えているとジンさんが口を開いた。
「でもお前はちゃんと成長してる」
「え?」
「よく考えてみろ。爪とか、前髪とか、トリップしたときより伸びてないか…っていうかお前昨日切ってただろ、前髪」
「・・・ほんとだ!」
切った。そういえば切った。鏡なくて超困った。水とかそういうの見てやったから死ぬほどガタガタになった。死にたい。
「こっからは仮定の話だぞ。まあある程度確信してっから言うけど。
お前は時空の管理人とやらの力で他者の念から具現化された体を使って生きてる。念を使いすぎると体が消滅、もしくはそれくらいヤバイことになるはずだ。修行のあとに死ぬほど食うのも寝たらぜんぜん起きないのもたぶんそのせいな、少しでも体を回復しようとしてるんだ」
「ほう」
「じゃあ何故お前は成長しているか?…それは念を使っているからだ。水見式から見ても、あれは強化系をマスターしたやつの念だ。つまりお前は無意識に自分の体に念を使用している、潜在意識のレベルでな。
細胞ひとつひとつを強化して、成長するように働きかけているんだ」
「ほえ…」
「次に操作系だったか。おそらくそれで体を操作しているってのもあるんだろうな。…まあでもこっちも精度はなかなかだったから、おそらく他のやつが100%、80%って念能力の限界が近づく中で、お前はこれが現れた順…強化、操作、放出、具現化、変化って感じで習得しやすいんだろう。100、95、90、85、80ってな具合に。チートだな」
「???えっと」
なんか途方もない話すぎて意味わからんくなってきた。
念を???使うと???死んじゃうけど???念を???使わないと???成長できない???し動けない???あと???なんか???あたし???超才能ある???ん???
「ま、オレもなんか考えながらしゃべってるようなとこあったからうまくまとめらんねェけど、念使い過ぎたらお前死ぬし念使わなかったらたぶんお前死ぬんだろうな!
まあでもこの精度で念使えるっつーのは才能だろ、よかったな」
(合ってたーーーーーーーーーーーーーーーー)
はースッキリしたぜ、とジンさんは首をゴキゴキ回し始める。ええ。えええーちょっとー。あたしなんっにもスッキリしてないんですけど師匠ーーーーーー…
「じゃあどうしたらいいんですかあたし…die or dieですか…」
「んなこたねーよ。だったらおめェとっくに死んでんだろ」
「はあ………」
「おそらくお前の理想は、敵の攻撃を受ける、無傷で吸収する、自分の養分にする、だな!」
「・・・」
このひとほんとどんな無茶言うネーーーーーーーーーン!
お前の場合たぶん攻撃うけてももしかしたらダメージは受けるかもしんねーけどまあきっと体が元気になるからプラマイゼロっつーかプラスだな、ははーとか言ってる。なんだこのひと殴りたい。十二支んの皆さんの気持ちなんかちょっとわかった。このひとすげえ腹立つ。
「まあそのことも考慮して必殺技は考えるべきだな!」
「はあ………ありがとうございました………」
どうしようなんかジャジャン拳とか言えなくなってきた。わりとまじで深刻な感じのやつだった。
ジンさんのおかげで深刻にはならないけど、っていうかなんかおかげとか単純に腹立つけど、よく考えないといけなさそうだ、あたしの念について。
「ま、がんばれよー」
ぽんぽん。
他人事かよ・・・と思いながら黙ってジンさんに頭を撫でられた。
まあいいよもうなんでも。ジンさんかっこいいし。はーあ