グリアドのカケラちょっと落ちなさすぎん?

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「本当にもう少し休んでいかなくてよかったのか?」
「うん、お医者さんも大丈夫って言ってたし。お家でおとなしくしてるから平気だよ。それにたぶんどっちかっていうと心因的なものな気もするしね」


第50話
カケラを集めて




あの後お医者さんを呼び改めて確認してもらったところ、大事をとって1日入院してもいいし問題なさそうだから普通に帰ってもいいと言われたので帰ることにした。
急に一晩家を空けたらキルアも心配するだろうし、そもそもべつに体調が悪くてこうなっているわけではないとわかっているので当然っちゃ当然なのだが、クラピカは心配そうにあたしの隣を歩いている。

なんだか懐かしい感じがした。
きっと『サナ』も、こうやってクラピカに心配してもらっていたんだろう。まるで兄妹のように。実際はあたしのほうが年上なんだけどさ。


いつのまにかあたしの口から敬語は消えてしまっていたんだけど、なんだかそっちのほうがしっくりくるしクラピカも何も言わなかったからそのままにすることにした。



「・・・その、先程はすまなかったな。突然呼び止めて、女性に強引に…。驚いたのもあるだろう、申し訳ない」


心因的なもの、とあたしが言ったせいか、クラピカがおずおずとそう切り出した。眉が下がっている。
ああ、突然のハグのことか。と合点し、今になってちょっと照れるもあたしはにこりと笑った。


「あはは、それが原因じゃないよ。なんかね、流れ込んできた記憶のこと考えると頭が痛くなるんだ。なにかの拒絶反応なのかもしれないんだけど」
「・・・それこそ、ゆっくり病院で検査してもらったほうがいいんじゃないか?」
「あー。まあ、たしかに」


心配気にクラピカは言うも、おそらく念やらトリップやらが起因しているこれを普通のお医者様が診れると思えなくてウーンと唸った。
それに脳の検査とかってなると調べるのに時間がかかりそうだ。どっちみちすぐにはいけないな。


「もうすぐライブあるし、行くとしてもそのあとかなあ。仕事もしばらく詰まってるしね」
「ああ、そうだろうな・・・。しかし本当に驚いたよ、お前の声を最初に聞いたときは。今日はレッスンの前だと言うのに、申し訳ないことをしたな」
「そんなに謝らなくていいから!あたしもここ最近ずっとモヤモヤしてたから、むしろ今日会えてよかったよ」

そう言うとクラピカは控えめに微笑んだ。ああ、すごく優しい眼をしている。
この目を見ているととても心が凪いだ。茶色い瞳はあたたかい大木を思い起こさせる。



「家まで送るよ、念の為。どの辺りに住んでいるんだ?」
「ここからそんなに遠くないからひとりで大丈夫だよ!電車で3駅くらいなの」
「いや、何かあったら困るからな。オレはこのあたりのホテルを取っているし、気を使わないでくれ」
「えっそうなの?もしかして・・・」
「ああ、お前を探すためだよ。…ストーカーのようで情けないが」


苦笑されてものすごく良心が痛んだ。ご、ごめん・・・。連絡返さなくて本当にごめん・・・。

あわあわしていると心情を察されたようで、クラピカは穏やかに微笑んだ。



「ずっと田舎にいたからな、たまには新鮮で楽しいよ。昨日来たところなんだ」
「実際はどのあたりに住んでるの?」
「船で三時間くらいのところかな」
「ひぇえ!」


えらいところから来させてしまった・・・と慌てるもクラピカは気にも留めない様子で話し続ける。


「まあでもサナがいるのなら、こちらに越してきてもいいかもしれないな」
「普段はどうやって生活してるの?」
「ファームステイのようなものをしている。基本的には田舎で農業を手伝っているんだ、住み込みでな。時々アマチュアハンターとして仕事もするが」
「そうなんだ・・・」
「都会は仕事が多いが、田舎のほうが修行がしやすいからな」
「ああ、たしかに。えらいねクラピカ」

きっと仕事の合間に鍛錬にも励んでいるのだろう。あたしはわりと自分が与えられた能力に甘えてしまっているというか、それこそジンさんがいた頃はミッチリ修行してもらっていたけれど、最近は普通にお仕事しかしていなかったので見習わないといけないなあと少し反省する。
まああたしの場合は実践が本当に何よりも大事なんだけどさ。


「何でも屋と歌手を両立するお前に言われてもな。それで疲れが溜まっているのもあるんじゃないか?」
「うーんどうだろ。そんなことはないと思うけどなあ、何でも屋の方は手伝ってくれる子もいるし」
「一人でやってるんじゃないのか?」
「うん、一応住み込みの従業員みたいなのがいる」


一瞬クラピカもやる?と言いそうになったけれど、さすがに彼を雇うのはなんか違うなと思ってやめた。それにクラピカとキルアがあたし経由で会うっていうのもなんかいまいちピンとこない。普通にそういう出会いとかの流れは原作通りにいったほうがいい気がする、わかんないけど。


「そうか、なら安心だな。でもあまり無理はするなよ」
「うん、ありがとう。あ、いつまでこっちにいるの?」
「ああ、実はこんなにすぐに見つかると思っていなかったからマンスリープランで契約してしまっていてな・・・。1ヶ月はこっちにいるよ」
「え!?そうなんだ!」
「あれほど人気になるとそもそもオレからの手紙など読まれてすらいないだろうと思っていたし、簡単に見つかるわけないと踏んでいたからな・・・しばらく張るつもりだった」
「あたし顔出ししてない分、わりとガバガバに移動してるからねえ・・・」

顔知ってるひとからしたら見つけるのなんて簡単だろうな…と頭をポリポリかいた。

RAINのときもそれなりにちゃんと変装とかするべきなんかなあ。まあでもクモにもクラピカにも会っちゃってるしもう今更別にいいか。


「よかったらまた改めてランチとかしようよ、もし暇ならこのへんの観光案内とかもするし!・・・って言ってもあたしもまだあんまり詳しくないけど」
「ああ、それもいいな。ライブ前で忙しいだろうし、落ち着いたら頼む」
「うん、ありがとう!あっそだ、ライブもよかったら来てよ、関係者席ならもしかしたら・・・」
「それが最前列のチケットをすでに持っているんだ」
「?!?!?!」
「すまない・・・転売屋から買いたくはなかったのだが、つい・・・」


歯切れの悪いクラピカに、どんな値段のもの買ったんだこの人・・・と思いながらあたしは目をパチパチとさせるしかなかった。本気で『サナ』を探しにきたんだな、と改めて思う。

だったらあたしもそれに応えたい。もちろんあたしだって『サナ』を見つけたいから手がかりがほしいし、クラピカと一緒にいることで思い出すこともあるだろう。定期的に会って話す時間は設けたい。


「レッスンのあともう一つの仕事が入ってることが多いけど、空いてるときもぜんぜんあるからよかったらまた改めてご飯しよう!お互いいろいろ話すことでわかることもあるかもしれないし」
「ああ、オレもそうできればなと思っていた。助かるよ」


よかった、と思いながら連絡先をメモに書いて渡す。クラピカはそれを、まるで宝物であるかのようにとても丁寧に受け取ってくれた。



「ありがとう」


笑顔で細められた瞳はどこまでもあたたかく、優しい。
柔和なそれに少しときめいて、こんなにもあたたかい笑顔をいつも向けられていたのであろう『サナ』に少し嫉妬した。


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