「というわけで、これから十二支んの補欠メンバー猫として活動してもらうことになったCATくんじゃ!いろいろ教えてやってくれ、ふぉっふぉっふぉ」
「よ、よろしくお願いしまーす・・・」
「「「「・・・・・」」」」
む、無言。圧倒的無言!!!!!
この場にいる全員から感じる「お前なんやねん」とでも言わんばかりの冷たい視線に取り急ぎ作った愛想笑いがヒクヒクするのを感じる。
アウェー。圧倒的アウェーである。
居心地の悪さを知ってか知らずか(いやわかってて楽しんでるでしょ)ネテロ会長は微笑むだけ。ねえ、なんていうかこうもうちょっとさあ、味方みたいな人が来てくれても・・・
「やぁーーーーー!!!!!!お待たせ!!!遅れてしまって本っ当に申し訳ない!!」
心の中でそうこぼした瞬間、勢いよく扉が開いて非常に癇に障る高めの男性の声が響き渡った。
「ついに正式に十二支ん入りですねサナちゃん!!!!いやいくらボクとキミの仲でもちゃん付けはもうよくないかな?サナさん!!!!!これからは同志としてがんば」
「
本気で黙ってもらっていいですか???」
現れたのはもちろん言うまでもなくパリストン・ヒル・・・十二支んのネズミ担当でありみんなに嫌われし副会長様である。
ああもう最悪だ。パリストンにやたらと親しげに話しかけられたせいで十二支んの皆さんの目の鋭さが3割増しになってしまった消えたい。
・・・っていうかあたし、別に十二支ん入りを希望したわけでもないのに、いったいどうしてこんなことになってるのーーーーーーーーーーーーーーーーーー?!?!?!?!?!?!?!
第五十九話
猫かぶりの憂鬱
「・・・先日も確認しましたが、特に多数決なども取らず彼女を十二支んの補欠メンバーに迎え入れ終えているという認識でよろしいのですね?→会長」
何度目かわからない絶叫を心の中で終えたと同時にチードル(かわいい)が手を上げて発言した。それに対してネテロ会長は深く肯く。
「うむ、そうじゃ」
「承知しました。よろしく→猫」
「よ、よろしくお願いします・・・」
ぜったい今日という日がくるまでに十二支んの皆さん、アマチュアハンターであるあたしの参入めちゃめちゃ渋ってたんだろうな・・・。そう思いながらもひとまず声をかけてくれたチードルに感謝する。
そしてそれを皮切りにゲルやピヨンが話しかけてくれた。
「まあ決まってるなら仕方ないわね。よろしく」
「サナだったっけ?そこの副会長様とお知り合いなの〜〜〜〜?」
「あー、えっと」
おそらく誰もが気になっているだろうことを突っ込まれるも、知り合いではあるが特段親しいわけでもなければどうにも好きになれないパリストンとの関係性を聞かれて一瞬口籠る。
するとパリストンのほうが相変わらずのうさんくさい笑顔で返事をした。
「ボクが以前あまりの美しさに声をかけてしまったんですよ!その時はまさかこうなるとは思ってませんでしたがね!!」
「へえ、オメーこんな感じの女がシュミなのか」
「副会長様ってロリコンだったんだ〜」
「話が逸れるので後にしてください→申、卯
よければ改めて自己紹介を→猫」
「あっはい」
十二支んのメンツ、キャラが濃いな・・・改めて・・・しかもよく喋るな・・・。
しかしとりあえずチードルのまとめに乗らないと一生話が進まなそうなのでとりあえずあたしは自己紹介をすることにした。
「えーと、サナ・タキガミです。アマチュアハンターで、万事屋をやってます。特に専門にハントしてるものはないです・・・仕事は殺人とか悪いこと以外はだいたい引き受けてます。そんな感じです」
とはいえ特に話せることもなくなんの印象にも残らない文言を連ねるしかない。さすがに何かしら専門的にハントしたほうがいいの・・・かもしれない・・・わかんないけど・・・特に惹かれるものもないけど・・・・・。
そんなことを考えているとミザイストムさんが掘り下げてくれた。ありがたい。
「万事屋CAT、最近急に名が知れたがいつくらいから活動してるんだ?」
「えっと・・・1、2ヶ月前ですかね・・・」
「最近じゃねーか!さすがに荷が勝ちすぎるだろ」
「荷が勝つにすぎるをつけるのは間違い→寅」
「それまでは何をしてたんだ?」
チードルの指摘を聞いているとサッチョウさんに開業以前のことを聞かれた。この手の質問は毎回どう返すか悩む。トリップしてきた・・・とは言えないし・・・
「ふ、普通に修行を・・・?」
ぜったいそういうこと聞かれてるわけじゃないと思いつつとりあえずこう答えるしかなかった。
「師は誰だ?」
そしてこう答えるとそうなるよねという感じの質問がボトバイさんからきてあたしは心の中で頭を抱えるしかなかった。
「えーーーーーーと」
「?」
「えーーーーーーーーーーーーーーと」
「何?言えないようなヤツなの?」
言い淀んでいたらものすごい怪訝な顔をしたクルックに詰められてしまう。あたしはポリポリと頬をかき、一息ついて口を開いた。
「・・・ジン・フリークスです」
「「「「「!!!!!」」」」」」
あああーーーーーーーーーまた十二支んの皆さんからの目が冷たくなった〜〜〜〜〜!!!!
「アーーーーーン疲れたあああああもうムリもうムリもうムリもうムリ〜〜〜!!!!!」
あのあとさらにアウェー感が増す中なんとか頑張って会話を繋ぎ、なぜかその後お食事会までこなし、ようやく!ようやく!!!キルアの待つマイ・スイート・ホームまで帰ってきた。
ここ最近は幻影旅団やらクラピカやら十二支んやらで完全にキャパオーバーしている。それでも仕事は普通に入ってくるし(キルアがだいぶ頑張ってくれてるけど)もうHPもMPも枯渇寸前だ。
「おつかれさん。サナのすきなチョコレート買っといたけど」
「んああああ!!!!!キルア!!!!!結婚しよ!!!!!」
「ばっ・・・お前ホントそういうの冗談で言うのやめ」
「チョコレートおいしーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「・・・」
ほれ、と渡されたチョコレートを受け取りものすごい勢いで開封して食らいつくあたしにキルアが若干引いているのを感じつつ、食べるのはやめられない。はーーーこれこれ。この甘みを待っていた。
口の中で優しく溶けるそれにうっとりとする。チョコレートは正義だ。チョコレート制作に携わるすべてのひとたちに死ぬほどお礼を言いたい。
「ていうかマジで十二支ん入りしたんだな。プロじゃなくてもいけるとか案外ガバガバ」
「まあ正式メンバーじゃなくて補欠だからじゃない?とはいえ今回の試験で落ちたらやめろって暗に言われたけど」
「会長に?」
「いや他のメンバー。よっぽどあたしが入るの嫌なんでしょ、わかるゥ〜」
「わかるゥ〜じゃねえよ」
ソファで転がりながらクッションを抱きしめるあたしに苦笑しながらキルアは隣に座る。買ってきてくれたおいしいチョコレートを彼もつまんで、うまっと呟いた。
はあ。こういうの。こういうのだけでいいんだけどな。こういう平穏な毎日がずっと続けばいいのに。そうもいかないんだけどさあ。
「来週はクモと仕事すんだろ?予定詰めすぎてない?」
「仕事っていっても慈善活動だし〜」
「気疲れするんじゃねーかって心配してやってんの。最近だいぶやられてんの見て取れるぞ」
「・・・やさしーね」
この間クモとの飲み会で朝帰り・・・いや朝?昼帰り?してからというものキルアの心配性レベルはさらに上がった気がする。この姿で接するようになってからというものキルアの心配性度合いが1.5倍になってたのに最近ではもはや3倍だ。むしろキルアのほうが気疲れしそうである。
そもそもクモにはあんま関わるなって言ったのに、とぐちぐち呟くキルアを見て笑った。
そうしてふたりで他愛もない話をしながらチョコレートを食べていると、そういえばとキルアが声を上げる。
「ところでそろそろ夏も終わるけど、二人で出かけんのいつにする?オレけっこう楽しみにしてるんだけど」
「あーそうだよね、ここ最近バタバタだったもんなあ・・・お祭りとか花火はもう無理かな〜」
「大きいのはだいたい終わってるな。あ、でも温泉街みたいなところでなんかイベントあるらしくてそれなら場所によっては秋にも花火やら出店やらあるみたいだけど」
「え!調べてくれてたの!それめっちゃいいじゃん温泉行きたい」
秋か〜、言ってる間にすぐ涼しくなっちゃうんだろうな。二週間後にクモと毛布配りもするしクラピカとも出かけることになってるからそれが落ち着いてからのほうがいいかも。英気を養ってからハンター試験受けたいし・・・。
なんて考えているとニヤリと笑ったキルアがぱさっと音を立てて薄い冊子を何冊か机の上に広げた。
「せっかくだしパンフレット見る?」
「えっ見る!用意してくれてたの!?キルアめっちゃできる男ジャン!?!」
「知ってる」
そうやってケラケラ笑いながらあたしはキルアとパンフレットを一緒に見てここのご飯が美味しそうだのこの宿が綺麗だのと話し合った。
はあ、繰り返しになるけどさ。ホントずっとこうしてられたらいいのにな〜!!!!!