君とぼくと不等号


成宮の家の最寄駅に降り立ち、途中のスーパーで買い物をした。買い物袋を片手に帰ってくれば既に家の中に明かりがついている。成宮が一足先に帰ってきていた。ずしんと重くなる心臓。
当然のことながらチームの先発ローテーションに組みこまれている成宮は、登板翌日の本日を含め6日間、次の登板までの調整をメインに期間を過ごす。今日はジョギングなどの有酸素運動とウェイトトレーニングが中心でグラウンドにも顔を出すとは言っていたけれど、…それにしても早い帰宅だ。
ビニール袋を持つ手に自然と力が入る。
ふうっと息を吐いて、気合を入れた。玄関の扉の鍵を開錠して中に入る。

「ただいま」

荷物を下ろして靴を脱いでいたら、成宮がリビングから顔を出した。

「おかえり」
「ごめん、遅くなって」
「買い物してきたの?」
「うん」

成宮は自然な流れで買い物袋を手に持ってくれる。私は腫れた目蓋を見られたくなくて成宮から不自然に顔を逸らして廊下に上がった。だけどそれを見逃してくれないのが成宮だ。右手で左腕を掴まれた。

「……泣いたの?」

顔を覗き込まれる。逃げ場をなくした私は小さく頷くしかない。「そう」と成宮の口から漏れるのは重たい溜息。呆れているのだろうか。怒っているのだろうか。彼の表情からそれを察することはなかなか難しい。

「そんなに青道が懐かしかった?」
「…青道っていうか…」

感傷に浸ったのは確かなことだけど、泣いたのは違う。涙が溢れたのは礼ちゃんに会ったからだ。一也が事前に状況を説明していて、尚且つ礼ちゃんが私を見てそれが本当だと信じてくれた。「私」を見てくれた。そんな話を掻い摘んで成宮に話せば、彼はようやく安堵した表情を見せる。

「礼ちゃんって…ああ、高島先生か」
「うん」
「紗南、高校卒業してからも連絡とってたし今も時々会ってるよ」
「うん、礼ちゃんから聞いた」

成宮の手がそっと私の腕から離れる。そのままふたりでリビングを通って台所へ。買い物袋から食材を冷蔵庫に移しながら、成宮は「それにしてもさぁ」と口を開いた。

「一也って相変わらず根回しがうまいよね」
「……うん」
「あれから連絡とってるの?」
「とってないよ」
「本当に?」
「本当だよ」

今度は成宮の顔を見つめて答える。
一也から連絡はないし、勿論私からも連絡していない。心は彼に向いているけれど、行動する勇気を私は持ち合わせていない。成宮とジッと見つめあって数秒。逸らされることのない私の視線を彼は信じたらしい。

「まあ、連絡ぐらいはとってもいいけど」

そう言いながら唇を尖らせて拗ねた表情を見せるから、本当に天邪鬼だ。これじゃあ嫌だって言ってるものじゃないか。大人になったとはいえ、こういうところはあまり変わっていない。わかりやすい。

「私からは連絡しないよ」

本当にそのつもりだ。
だからこそ成宮も今度は心から信じてくれたらしい。それきりその話はお終いになった。

私はそのまま台所に立って夕飯の支度をする。成宮は、ダイニングテーブルに腰を下ろして携帯を弄りながら私の後ろ姿を眺めていた。いつだったか「見られていると料理がしにくい!」と言っていたはずなのに、彼は家に居る間、私の傍にいることが多い。なにをするでもなく私の姿を眺めるのだ。
緊張しながら、夕飯を作った。
水で洗った白米を炊飯器にセットして早炊き。それから豆腐とわかめの味噌汁を作り、ほうれん草も茹でる。これはお浸しに。それから最後に鶏肉と卵を出汁で火にかける。今日はメインは親子丼。
凝ったものを作る気力が残ってなかった。ザ手抜き飯だけど外食よりはマシだろう。

ご飯が炊けるまでの間、成宮の向かいに腰を下ろした。彼は弄っていたスマートフォンを置くと頬杖をついて私をジッと見つめる。

「明日の予定は?」
「今日のレッスン午前中だけだったから、午後の生徒さんの振替レッスンの予定」
「それって昼までには終わる?」
「その予定だけど…」
「俺、明日は休息日なんだよね」
「家に居るの?」
「その予定」

私の言葉をなぞるように、成宮はこくんと頷く。

「……一緒に、過ごした方がいい…?」
「紗南が嫌じゃなければ」

そういう答えを望んでいるんだろうと思ってそんな言葉を紡げば、成宮は満足そうに頷く。きっと今までもそれが日常だったんだろう。私は「わかった」と頷いた。
嫌ではない。
成宮は私の嫌がることはしない。
そこは徹底しているから、信頼しているというか…まあいいかなと思ってしまう。

「どこか行きたいところがあるの?」
「そういうわけじゃないけど。紗南と一緒にいたいと思っただけ」
「そう…」
「DVDで映画見てもいいし庭仕事してもいいし」
「それ成宮おもしろい?」
「紗南が一緒ならね」

成宮がそう言うならそうなのだろう。あまり深く考えないようにした。

炊飯器から軽快なメロディーが流れる。
蓋を開ければ湯気がぶわりと頬を擽った。杓子で一度釜の中を掻き混ぜる。なかなかいい炊き加減だ。私は多少硬い方が好きで、成宮も同じだと言っていた。丼に艶々の白米をよそい、その上に親子丼の具を乗せる。最後に三つ葉と海苔をちらして完成。
ふたりで手を合わせていただきます。
食卓を囲った。

半分ほど食べ進めたあたりで、成宮は急に口を開く。

「青道の仕事だけど」

私を見透かすような青は、いまこちらを見つめてはいない。じっと丼を見ている。豊かな睫毛が何度か瞬きした。私は彼の次の言葉を引き出すように相槌を打つ。

「うん」
「本当に無理だと思ったら辞めていいんだからね」
「…でもそれは無責任だよ」
「コンクール前に言い出すよりはマシでしょ」

確かにその通りではある。
あるけれど、今日久しぶりに長尾先生に会って、私の中に燻っていた火種が燃え上がった感覚を思い出し眉を下げた。成宮の心配もわかるけれど、やり通したい気持ちの方が強い。うまく言葉に出来ず唇を噛む。成宮はようやく顔を上げて私の顔を見た。呆れたような言葉が続いた。

「…やっぱりまだ吹部に未練ある?」
「うん」
「即答かよ」

「まあ理解ってたことだけどさ」と苦笑。成宮は一度箸を置いて、麦茶に手を伸ばした。グラスに口をつけ、ごくりと彼の喉仏が上下に動く。

「紗南はさ、高3の時に全国行ってるんだよ」
「………それ、本当?」
「本当。あの時は………紗南にとって目標がそれしかなかったから目が本気だったね。俺怖かったもん」

突然のネタバレに私も思わず手を止めた。知らないようにしていた事柄を心の準備が出来ていないうちに、成宮がこうも簡単に話すものだから戸惑う。私は激しくなった動悸を落ち着かせるように、ゆっくりと、呼吸を繰り返した。
全国に行った。それは「私」にとって重要な話。
だけどそれ以上に成宮の言葉が引っかかる。

「待って、成宮」
「なに?」
「その頃私たち会ってたの?」

目が本気だったと言った成宮。これはその当時直接私と対峙していないとそういう表現にはならないだろう。成宮は私の問いに対して「会ってた」と微笑んだ。どこか昔を懐かしむ遠い目をしながら。

「夏の終わり頃から連絡取り合うようになって。時々ね」
「…そう、なんだ」
「うん。でもまあ数えるほどだよ。俺は引退してからドラフトまでわりと暇だったけど、紗南は全国大会と推薦入試の両立で忙しかったし」

夏の終わり。引退。思わず「甲子園」と呟けば「いまその話はしないから」と成宮に釘を刺された。先手を打たれてしまった。
…横暴だ。時折私のことを勝手に話すのに、彼自身の三年生の夏の話をしてくれない。
でも今の成宮なら、それ以外のことであれば話してくれる気がした。
だから私は、つい彼に尋ねる。

「私が成宮にずっと傍にいてって言ったのもその頃なの?」
「…それは、付き合うことになった日に言われた」
「12月?」
「そう」

私が一也への想いを抱いたまま今を生きると決めた途端、こうしてずっと欲しかった小さなピース達が集まってくるから、不思議なものだ。

「告白は、どっちからしたの…?」
「紗南からじゃないの?俺はさっきの言葉がずっと告白だと思ってたんだけど」
「えっ、あ…そうなの…?」
「……なんてね。冗談。ちゃんと俺からしたよ」

そんな冬を迎える前に。
私が知らないなにかがあった。
少しずつ、少しずつ。
目覚めた時は不透明だったそれが、今はだんだんと輪郭をもち、そして鮮明になっていく。誰も教えてくれない本当のこと。

「……成宮は、いつから私のことが好きだったの…?」
「…今日は結構ぐいぐいくるね」
「……気になって…」
「まあ、気にしてくれるのは嬉しいけど。でも大丈夫?頭パンクしない?」

固く心に刻んだ決心も、綻んだ真実を前に湧き上がる好奇心には勝てない。私は小さく「大丈夫」と頷く。成宮は息を吐いて、それから意を決したように話し始めた。

「中三の時、俺が紗南を呼び出したでしょ」
「………うん」
「その時に俺に言った言葉覚えてる?」
「……なんとなく」
「『これは私と一也の問題だよ。成宮には、関係ない』」

確かにそう言った気がする。

「俺、それ聞いてほんと腹が立ったんだよね。もうずっとずっと怒ってた」
「………うん」 
「その考えが変わったのが高3の5月。東京選抜で一也とバッテリー組んだ時」
「……」
「それまでずっと一也と俺の野球の邪魔をしてる紗南が嫌いだと思ってたんだけど…東京選抜で望みが叶っても俺はやっぱり紗南に苛々してたんだよね。それで理解った。もし紗南と俺が幼なじみで誰かに因縁つけられても紗南は「関係ない」って言い切ってくれたのかなって……そんな風に考えてた自分にようやく気づいた」
「……うん」
「それからは、もう…過去の自分を猛烈に反省して俺から紗南に連絡とって謝って、…今に至るって感じ」
「…私は成宮のことすぐ許したの?」

私は成宮にずっと聞きたかったことをついに口にする。それはここに来てからの大きな疑問で、「以前の私」と「私」を大きく乖離する溝。
成宮のことが好きな「以前の私」。
成宮のことが苦手な「私」。
ただ純粋に知りたかった。
どうしたら正反対の評価にいきつくのか。
そんな私の問いに対して、成宮はふうと大きな息を吐き、そしてそれからゆっくりと口を開く。

「……すぐには許してくれなかったと思う。やっぱり最初は俺に裏があるんじゃないかって疑ってた。でも紗南は…最終的には俺を信じたよ。俺を好きになってくれた」

彼の澄んだ青色が真っ直ぐに、見透かすように、私を見つめて離さない。それは慈しみを孕んでいる。まるで大切な宝物を見つめるような…そんな眼差し。堪らなくなって成宮から目を逸らした。自分で聞いておきながら、我ながらひどい態度だ。けれど成宮はそれさえも予想の範囲内だとでも言うように、「はい!もうこの話はおしまい!!」と両手を叩いた。

「ご飯食べよ」
「…うん」

促されて、食べかけだった食事に箸をつける。すっかり覚めてしまった味噌汁を啜りながら、考えるのはやっぱり成宮と「以前の私」のこと。成宮たちが歩んできた軌跡。「以前の私」を好きになったきっかけ。東京選抜。一也。私が知らない夏のこと。少しずつ鮮明になる過去。
成宮が話してくれたことで少し安堵したのは確かだ。
だけどやっぱりすっぽりと抜けていることがあるのも事実。
「私」の気持ち。
当事者じゃないのだから当然だけれど。
「私」の気持ちは誰も知らない。語れない。
なにをきっかけに成宮を信じたんだろう。
なにがあって成宮を好きになったんだろう。
そんな疑問を胸に抱いたまま、私はその全てを飲み込むようにただ食事に集中した。丼に残ったご飯を胃袋の中に掻き込む。成宮もまた言葉もなく箸を動かした。その繰り返し。
その繰り返しだ。

食事が終わり、ふたりで手を合わせて「ご馳走様」。いつものように成宮の食器を自分のものと重ねて流台に運ぶ。普段手伝ってくれる成宮が今日は椅子に座ったままでなんとなく違和感を覚えるけれど、まあそういう日もあるよなぁと独りごちる。そんなことを考えていた私の背に成宮は声をかけた。

「ねえ、紗南」

その妙に落ち着いた声のトーンに嫌な胸騒ぎを覚えて振り返る。
その瞬間、

「まだ一也のことが好き?」

ガシャン、と。手からお茶碗が滑り落ちて床に落ちた。
真っ二つに割れる下に重ねていた私の茶碗。細かい破片が床に散らばる。慌てて震える手でそれを拾おうと手を伸ばした。だけど。

「紗南」

成宮が椅子から立ち上がり、私の手首を掴む。割れた茶碗を真ん中に、蹲み込んで向かい合う私たち。ひゅっと喉が鳴った。成宮の双眸が私を捉えて離さない。
どうして今そんなこと。動揺が隠せない。
確かめる機会は今まで幾らでもあったはずだ。
なのに、何故、今日、このタイミング。
瞳にぼんやりと水分の膜が張る。唇が震えた。
成宮の腕の力が強くてその場から逃げ出すことも出来ない。

「好きなんでしょ」

今度は確信を孕んだ言葉。それでも私は肯けなかった。
黙り込む私に、成宮は小さく息を吐く。肝が冷えた。出て行けと言われるだろうか。「私」なんていらないと言われるだろうか。ただ成宮の言葉を待つ。
けれどその前に彼は動いた。掴んでいた私の手首をゆっくりと、持ち上げる。

「いいよ、それでも。一也が好きな紗南でもいいよ」

そんな赦しを表明した成宮の唇が、私の冷えた指先にそっと触れた。柔らかな感触と暖かさがじんわりと広がる。

「もういっかい俺に惚れさせるだけだから」

マウンドの王様が、バッターボックスに立つ打者を一瞥するように。
自分の力量を見誤るなと宣言するように。
薄浅葱色の丸い瞳が「私」と真正面から対峙する。
その姿は、まるであの頃の成宮だった。

「これから存分に意識してよね」

そんな言葉と共にゆっくりと放される手首。行き場もなくだらりと垂れ下がる。成宮のアーモンド型の鉾がきゅっと細まって、その顔に穏やかな微笑みが戻った。先程一瞬姿を現した「私」の知ってる成宮はもういない。
まるで何事もなかったかのように茶碗の破片をテキパキと片付ける彼の姿に、いてもたってもいられなくなって慌てて台所を飛び出す。そしてもはや自分の部屋となった客間に逃げ込んだ。
バタン、と大きな音で扉を閉めても、激しく脈打つ心臓の音は掻き消えない。ドアを背にしてずるずると蹲み込む。

(…っ、吃驚し、た…)

頬に熱が集まり、成宮の柔らかな上唇が触れた指先がジンと痺れた。混乱する思考。
キスされた。指だけど。
それはまるで幼い頃に見たプリンセス映画のワンシーン。宣戦布告するような言葉には似つかわしくない愛しみに溢れた行動。

成宮が口付けた右手を確かめるように左手で撫でる。あんなことをされたのは初めてで、動揺を隠せない。心臓が破裂しそうだった。

「……なんで…」

なんであんなことしたの?
どうして一也が好きだって理解ったの?
ずっと知っていたの?
それでも一緒にいてくれるの?

疑問が溢れて、頭を抱え込む。落とされた爆弾。ずっとギリギリの均衡を保っていた世界が、一変するそんな感覚。じんわりと浸食していく、甘い毒。もう逃げられない。
成宮は本気だ。
私はのろのろと腰を上げ、部屋の真ん中に引きっぱなしだった布団にぼすんと身体を投げ出して寝転んだ。

とてもひとりで処理しきれない出来事が起きてしまったわけだけれど…こういう時、誰に相談するべきなんだろう。高校時代、一也への想いを私が打ち明けたのは優子にだけだった。だけど今、優子は傍にいない。結婚して地方に住んでいると成宮から聞いた。それに彼女は私のこの状況を知らないのだ。急に「一也が好きなのに、成宮に告白されてドキドキしている」なんて言えるわけがない。そもそも今現在の成宮紗南の自我が、一ノ瀬紗南であることから説明しなくてはいけないし…と考えていた。そこでハッと気付く。

「……嫌じゃ、なかった…」

成宮が指先にキスをしても、私は嫌だとは思わなかった。驚いて混乱しているけれど、胸の高鳴りは嫌悪感ではない。先程自分で思ったように「ドキドキ」している。

十年前の成宮がそんなことをしたら、私はきっと「なにするの?!」と強い力で振り払っていただろう。もしかしたら一発頬を叩いていたかもしれない。それなのに。
陽が落ちるまでは、一也のことでいっぱいだった頭の中。一也のことだけを想って今を生きていこうと胸に抱いた決意。
それなのに。
それなのに、それを全部薙ぎ払って、いま、私の心を支配するのは成宮だ。

私を見つめるあの意志の強い瞳。ブルーの宝石。胸が騒めく。鼓動が鳴りやまない。全身に巡り廻る血潮。

布団に寝転がりながら、見慣れてしまった天井の染みを数える。もうこのまま寝てしまおうか。恥ずかしすぎて、しばらく成宮と顔を合わせられそうにない。部屋に引きこもるしかない。でも化粧を落としたいしお風呂にも入りたい…なんてうだうだと悩んでいたその時。

ヴヴ、とスカートのポケットに突っ込んであったスマートフォンが震えた。アプリの通知かと思って取り出して画面を覗き込んで、画面に表示された名前に息が止まる。慌てて指を滑らせて受信箱を開く。


from 御幸一也
title 無題
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今日青道行ったんだって?
礼ちゃんから聞いた


目に飛び込んできたのは、相変わらず素っ気ない文面。なにひとつ変わってない。二ヶ月ぶりの連絡なのに、挨拶もなし。実に一也らしい。

「…なんで、今日なの〜〜〜ッ」

スマートフォンを投げ出して枕に顔を埋めて、恨み言のような言葉を吐き出した。多分、昨日までの…いや帰宅するまでの私だったら速攻で返信マークを押してただろう。だけど、今はとてもそんな気になれない。頭にチラつくのは成宮の表情、言葉、仕草。


いいよ、それでも。一也が好きな紗南でもいいよ
もういっかい俺に惚れさせるだけだから
これから存分に意識してよね



脳裏でなぞった言葉にもう一度右手の指先をぎゅっと握り、完全な八つ当たりだけれど「……成宮の馬鹿…」と小さく呟く。単純な私の頭の中は、もう成宮のことでいっぱいだった。