声もなく共犯の約束を


---知ってることと、知らないこと。どっちが不幸だと思う?

成宮が口にした言葉があの日から頭を離れない。私の心は相変わらずチグハグなまま、暦はあっという間に5月の半ばを数えた。


「前から思ってたんですけど…成宮先生って、異様に『狙い撃ち』だけ上手くないですか?」

そんな質問をされたのは、外部講師として青道高校を訪れた平日の午後。指導を担当しているトランペットパートの休憩中のことだった。今年春大を制した青道高校野球部は、現在関東大会を順調に勝ち進んでいるらしい。そんな話題から、今年の甲子園はどうかなぁなんていう話になり、最終的にやはり応援歌の話に行き着いたのだ。
その時『狙い撃ち』がとにかく難しいという話になった。

「……そう?」

話を振られ、思わずギクリと肩を揺らす。それを悟られないように平然とした様子で首を傾げた。だけどそんな誤魔化しで鋭い女子高生達が私を見逃してくれるわけがない。

「ね、吹いてみてくださいよ!」
「お願い!」

手を合わせて頭を下げられては仕方がない。
私は小さく息を吐くと、手にしていた自分のトランペットを構え、懐かしいメロディーラインを吹き上げる。タンギングに、速い指捌き。それを炎天下の中で演奏するのだ。確かに難しいかもしれない。
だけど、私にとっては特別な曲。
"異様に上手い"という言葉は、学生時代から言われ慣れていた。あの当時よく優子達に揶揄われていたことを思い出す。それだけ練習したのだ。
とりあえずサビまで。我ながら完璧に近い出来だったんじゃないだろうか。吹き終わって、真鍮の相棒からそっと口を離せば、演奏を聞いていた生徒達はいっせいに手を叩いて喜んだ。

「先生〜好きな人絶対野球部だったんでしょ〜?」
「それでその人のヒッティングマーチが『狙い撃ち』だったんですよね?!」
「やだー!成宮先生可愛い!!!」

自分たちの推理を披露して騒ぐ彼女たちに(一応私先生なんだけど…)と思うほど、私と生徒達の距離は近かった。新入生は別として2、3年生の子たちとは"初めて"顔を合わせたGWの練習からこんな感じなので、これは多分今まで培ってきた関係性なのだろう。定年間際の長尾先生や他の青道の先生達に比べて確かに私達は彼女達と比較的年が近い。多少友人関係みたいになってしまうのは致し方ない気がした。今のところ練習の指導に関しては真面目に話を聞いてくれているので、特に咎めることはしていない。まあ…言ってしまえば私も中身は彼女達と同等。少し大人ぶって接しているものの、時折綻ぶこともある。
可愛い、という言葉に少し頬を染めれば、尚更「可愛い!」の追い討ちがかかった。

「それが今の旦那さんなんですか?」
「……ちがうよ」

それは違う、と首を横に振る。
成宮は確か「サウスポー」だった。彼らしい選曲というか。確かに"背番号1の強いやつ"には違いない。

---成宮とは、あれから…相変わらずといえば相変わらずだ。夫婦らしく同じ家に住み、時間が合えば一緒にご飯を食べて、共に過ごす。とはいえ、多分前よりも物理的な距離は近くなったと思う。
顔を合わせれば朝だろうが夜だろうが昼だろうが成宮に抱きしめられることが増えたのだ。そんな感じなので、成宮の言う通り、きっちり"意識"はしている。我ながら凄く…単純だけど。

「先生の旦那さんって稲実でしたっけ?」
「えー、そうなんですか?!」
「そもそも成宮先生の旦那さんって今はプロ野球選手だから!プロ野球選手!!」

ああ、それも知られているのね、と。いや寧ろ生徒達の方が「以前の私」のことをよく知っているのではないだろうか。
「以前の私」は彼女たちにどんな話をしたんだろう。どんな表情をして、どんな声で成宮のことを語ったのだろう。
そんな疑問が、胸を締め付ける。

1年生の子たちは、盛り上がる2、3年生の言葉に随分と驚いているようだった。

「もしかして成宮選手ですか?」

1年生の水嶋くんが、ふいに口を開く。私は「うん」と小さく頷いた。
彼は高校からトランペットを始めた初心者なのだけれど、とても真面目で練習熱心、一年の間では早くもまとめ役になることが多い存在だという。
聞いたところによると水嶋くんは小中と野球をしていたらしい。故障が原因で高校では選手の道を諦め、この吹奏楽部には「野球部を応援するため」に入部したのだ。その経緯を耳にした際、どこかで聞いたような話だな、と長尾先生に笑われたことを思い出した。

「俺、ファンです。成宮さんが甲子園で投げてるのテレビで見てました。それからずっと好きで…今も、勿論、試合見に行ったりしてます」
「ありがとう」

少しクールな子だなという印象だったけれど、よっぽど野球が好きなのか、普段の様子とは違い随分饒舌だ。
私は自分が褒められたわけでもないのに、照れてしまって指先で頬を掻いた。
水嶋くんがテレビで見た甲子園は10年以上前の話できっと彼が小学校に上がる前だ。それ以来ずっと好きだなんてきっと成宮も嬉しいだろう。
あの夏、私にとっては悔しいばかりだった出来事も、立場が違えば憧れにさえなり得るのだ。それを実感させられる。

「稲実って吹部だけじゃなくて野球部も強いんだ」
「知らないの?」
「だって私スポーツ興味ないもん」

生徒の中からそんな声が聞こえてくるのも仕方がない。私も高校生の時、一也の試合以外ほとんど野球観戦なんてしてこなかった。時折彼に誘われてプロ野球を見にいくこともあったけれど、それも小学生ぐらいまでの話。スポーツに興味のない気持ちはよくわかる。これもまた立場が違えば、の話。吹奏楽部にとって稲実といえば野球部よりも吹奏楽部の活躍の方が耳に入ってきやすかった。吹奏楽部もまた野球部と並び全国コンクールの常連なのだ。

「学生の頃から付き合ってたんですか?」
「……うん」
「えー!凄い!」
「どこで知り合ったんですか?やっぱり球場?」
「違うよ。もともと中学の時から知り合いだったの。私の幼馴染がシニアで野球やってて、それを通じて出会ったんだけど…」
「へー!」

なんだか話が変な方向に向かい始めてしまい、私は内心冷や汗をかいていた。「私」が知っているエピソードならまだいい。だけど、

「先生、馴れ初めは!?」

こうなってしまうと収拾がつかない。というか私が答えられることなんて何一つない。どうしようかなぁ、と。困った表情で「ええっと」と眉を下げた。すると突然、角の方からパンパンと手を叩く音が耳に届き、皆が一斉に音のした方へと顔を向ける。そこにはお喋りの輪に入らずひとりで黙々と楽譜に目を通していたパートリーダーの姿があった。

「はい、休憩終わり」
「…はーい」
「さーて、やりますか!」

鶴の一声よろしくパートリーダー・雪平さんの一声。
お喋りに興じていた皆が一斉にスイッチを切りかえ、楽器を手に楽譜と向い合う。
そんな生徒たちの後ろ姿を見ながら私は、本当は私が言うべき言葉だったんだろうな、と猛反省していた。そうしてチラリと雪平さんに視線を送り、こっそり手を合わせる。するとそれに気づいた彼女は少し驚いた様子だったけれどすぐに首を横に振って、ほんの少しの笑顔を浮かべるたのだった。




「成宮先生、今日はいつもより隙だらけでしたよ」

部活終了後、職員室に戻る道すがら。雪平さんに声を掛けられた。もうこうなってくるとどちらが大人かわからない。私は「助けてくれてありがとう」とパート練習中の出来事のお礼を口にする。雪平さんは首を横に振った。

「あの子達も調子に乗ってたから目に余って。だけどあんまり旦那さんのこと話さないのに今日は珍しいですね」
「…そうかな」
「そうですよ」

雪平さんは訳知り顔だ。多分彼女は…「今までの私」と仲が良かったのだろう。なんとなく雰囲気で察する。これは余計なことは言えないな、と思わず口数が少なくなった。

「先生」
「…なあに?」
「前教えてくれた…先生が好きだった人も"野球馬鹿"だったんですか?」

私の事情など知るはずもない雪平さんの言葉。
先生が好きだった人…間違いなく一也のことだ。
私は彼女に一也のことを話したのか、と悟る。なんだかとても意外だった。そして「も」という助詞から察するに雪平さんが好意を寄せる存在も野球部なのだろう。私は思わず言葉に詰まり、彼女の綺麗な横顔をジッと見つめる。返答のない私に、雪平さんは少し慌てたように首を振った。

「…すいません、変なこと聞いて。これじゃあ私もあの子達と大差ないですね」
「大丈夫。……雪平さんには、成宮…主人との馴れ初めって話したっけ…?」
「はい。聞きました。先生は、…旦那さんも野球のことしか頭にないって言ってましたけど…それでも旦那さんは先生が辛い時にずっと傍に居てくれたんですよね…?」

やっぱり想うより想ってくれる相手の方がいいんですか、と。雪平さんの言葉は続いた。その問い掛けは少し上擦った声で。なんとなく彼女もまた岐路に立っているように感じる。

雪平さんは私が高校時代、今の夫である成宮じゃない誰か---一也を好きだったことを知ってる。そしてその時に傍にいてくれたのが成宮だと知っている。辛い時、とは。
「今」以上に辛い時が私にはあったんだろうか。


ものごとをあるがままの姿で受け入れよ。起こったことを受け入れることが、不幸な結果を克服する第一歩である


成宮が教えてくれた格言が、ふいに思い起こされた。それを彼に教えたのは私なのだというけれど。その言葉を成宮に伝えたのは、一体いつの話なのか。成宮もまた不幸だったのだろうか。辛かった時があったのだろうか。それを私たちはふたりで乗り越えたんだろうか。

---知ってることと、知らないこと。どっちが不幸だと思う?

成宮はきっと知っている方が不幸だと思っているに違いない。
でもやっぱり私は、「今」の私は、知らないことの方が、圧倒的に不幸だと思うのだ。




雪平さんの質問に対して、私は「それは貴方次第だと思う」となんともずるい答えしか与えてあげることしか出来なかった。だってその疑問の正解を一番求めているのは「私」自身だからだ。

職員室で長尾先生と軽い打ち合わせを終え、私は校舎を出た。陽が長くなったとはいえ、時間は既に19時を回っている。すっかり薄暗かった。昨日から成宮は遠征試合で、帰宅は明後日だ。どうせ帰っても家には誰もいない。私の足は自然と野球部のグラウンドの方へと向かっていた。

青道での仕事が始まって二週間ほど。まだ数えるほどしか通ってはないけれど、今日のように帰宅時間が遅くなってもいい日には大抵グラウンドに寄ってから、駅に向かう。
別に何をするわけでもない。野球部の練習を眺めたり、礼ちゃんがいれば近況を少し話したり。

だけど、いつもはナイター設備の照明が照らすグラウンドも訪れてみれば今日は真っ暗だった。大会中だから早い時間に練習が終わったのだろうか。私はそっと踵を返し、来た道を戻る。帰路の途中、ふと足を止め、土手の上から青心寮や室内練習場を眺めた。暖かい明かりが漏れている。

17歳の私は、時折こうして帰り道に、そこにいるであろう一也のことを想っていた。そのことを勿論、彼は知らない。

思い返せば。
私はいつも一也の真正面に立つことを恐れていた気がする。だから青道に進んでも彼と幼馴染であることを大っぴらには公言しなかったし、こうしてこっそりと彼の様子に想いを馳せてはひとり物思いに耽っていた。

彼の隣。そこにあるべきはただひとつ。
それは、野球だ。

私は野球と対等ではない。
一也と対峙するといつもそれを思い知らされてた。好きだと叫ぶ心は本物。
今でもそう思っている。
でも付き合いたいと思っていたのは果たして本当に私の本心だったのだろうか。
ずっと彼のそばにいたかったのは間違いないけれど…。

迷宮入りする思考。
私はそんな考えを吹き飛ばすように首を横に振った。そうしてようやく駅に向かって歩き出す。身体を動かせば、ぐぅと腹の虫が鳴くのはご愛敬。たまには駅前のあのラーメン屋にでも寄ってみようか。そんなことを考える。結局あの店には"初日"に成宮と行ったっきりだ。

(…チャーシュー麺、美味しかったなぁ)

思い出して、更にお腹が空く。
そうと決まれば、と駅に向かう足が早まる私。我ながら現金な性格だ。
もう何度一也のことを想いながら歩いたかわからないほどの帰り道。だからだろうか。夢に見たあの頃の私の気持ちを思い出し、そのあやふやな心情の輪郭をなぞりながら私は家路を急いだ。





ラーメン屋にひとりで立ち寄った私は、奥さんとご主人に優しく出迎えられ、カウンターでひとりチャーシュー麺と餃子を食べた。店内の角、天井近くに設置されているテレビで流れていたのはプロ野球中継。やはりというか成宮の所属する球団の試合だ。

「勝つといいねぇ」
「そうですね」

なんて奥さんと会話しながら見ていた試合は2-2の同点。九回裏、成宮が打たれて相手チームに追加点が入りそこで試合終了。

「ああああ」

負けた瞬間。調理の合間に試合を見守っていたご主人が呻き声をあげる。私がつい「すいません」と頭を下げれば「まあそういう日もあるよな」なんて言葉が返ってきた。

「鳴に次は頑張れよって伝えといてくれ」

そんな言葉をお土産に。私は満腹になった身体で店を出る。成宮の家に着く頃には21時を回っていた。真っ先に浴室へ行き、給湯器のスイッチを押して湯船にお湯を張る。
明日は水曜日。ピアノ教室の日だ。
今日は早く寝よう、と心に決めて身支度を解いた。

お風呂から上がって、台所で水分補給をし、それから家の戸締りを確認して回った私は、さあ寝ようと客間に戻る際、帰宅してからリビングのローテーブルに置きっぱなしだったスマートフォンの画面に着信履歴が表示されていることに気がついた。ちょうど入浴中だった時間にあった電話だ。発信者は成宮。私はすぐに折り返しの電話をかけた。
ツーコールで『もしもし』と成宮の声が画面越しに届く。

「ごめん、電話気づかなかった」
『なにしてたの?』
「お風呂入ってた」
『そう』

成宮の声は、少し落ち込んでいるように聞こえた。やっぱり試合に負けてしまったからだろうか。

「…試合、惜しかったね」
『……見てたんだ?』
「うん、青道の帰りにラーメン屋さん寄ったの。ほら…成宮と行った…」
『ああ、"玄鳥"ね。おじさんなんか言ってた?』
「次は頑張れよって」
『まあ、そうだよな。……はぁ』

成宮の溜息は重かった。
負けたら終わりの高校野球と違って、これはプロ野球のリーグ戦だ。勝つこともあれば、負けることもある。ずっと勝ち続けるなんて正直難しい話だと思う。それに今日の試合、成宮ひとりが敗因というわけではない。それでもやっぱりプライドを持ってマウンドに立つ彼にとって負けることは許されないことなんだろう。

『…次は、勝つから』
「うん」
『紗南』
「なあに?」
『……愛してる』

その言葉が耳に届いた瞬間。
私は思わずスマートフォンを床に落としそうになった。それほど、動揺したのだ。だってまさかその言葉を、今この瞬間聞くとは思いもしなかった。言った成宮本人も、なんというか、ポロリと出てしまった言葉のようで『早く寝なよ!おやすみ!』と捲し立てるように電話を切ってしまう。
通話が終わり、真っ暗になった画面を暫くじっと見つめていた。

愛してる、だなんて。
今の「私」に向かって、そんな言葉をくれるだなんて。

(成宮、私…わたし…)

もうこのまま、過去なんて見なかった振りをして、知らなかった振りをして、このまま成宮に大事に大事にされていたい。そんな思いが胸を占める。
だから、だろうか。
手にしていたスマートフォンが「戻ってこい」とでもいうように着信を告げたのだ。画面には「御幸一也」の文字。
一瞬頭が真っ白になった。
理性は出てはいけないというけれど。
指を動かしていたのは、感情で。

「も、…し、もし…?」
『あ、繋がった』

上擦った私の声とは対照的に、電話越しの声は随分あっけらかんとしたもの。「一也、」と名前を口端から漏らす。彼の声を聞くのは、2月以来のことだった。約3ヶ月ぶり。

『俺この間メール送ったんだけど』
「…ごめん…気付いてたんだけど…色々忙しくて」
『まあ元気ならいいや。青道の仕事、うまくいってるか?』
「うん」

結局、成宮の言葉が引っかかって返信していなかった一也からのメール。それを気にかけて一也がこうして電話をくれるなんて予想外だった。彼は彼なりに私のことを心配してくれている。それを実感して、嬉しくないはずがない。私は心のどこかで一也からの連絡を待っていた。

「一也は…、今日試合?」
『そう。鳴は遠征だろ?』
「うん、明後日帰ってくるって言ってた」
「…そっか」

しばしの沈黙。
お互い、言葉を探しているのがわかる。私たちは今までどんな話をしていただろうか。改めて考えてみると……青道に入ってからは、碌に会話なんて交わしてなかった気がする。お互い忙しかったし、1年の時も2年の時もクラスは別々だった。
…ああ、そういえば。

「一也」
『なんだよ』
「あのさ、…高2の時に一也と同じクラスだった…陸上部の子って知ってる?黒髪の…」

夢にみた"彼女"の姿を、その時ふいに思い出した。成宮には誤魔化されてしまったけれど、一也なら知っている。それは確信に近かった。第六感がそう告げるのだ。案の定、というか。電話の向こう側の一也が僅かに息を呑んだのが伝わってきた。
やっぱり。
一也は知ってる。

『…思い出したのか?』
「思い出したって…?」
『いや…、…なんで急にそんなこと聞くんだよ』
「その子が夢に出てきたの」
『夢?』
「うん。それに私のスマートフォンの中に最近その子と撮った写真があったから…私が知ってる限り彼女とは友達じゃないけど、高3以降で仲良くなったのかなと思って。一也、知ってる?」
『………知ってるよ』

たっぷり間を置いて、それから彼はそう言った。私はその答えにひとまず安堵する。

『紗南、明日暇?』
「明日はピアノ教室の日だから…明後日なら、予定ないけど」
『じゃあ明後日会おう。またメールする』

珍しい一也の方からの誘いを、断る理由もなく。わかった、との返事を伝えてそこで通話は終了。ぷつりと切れた一也との繋がり。こういうところは相変わらずだ。
私は今一度真っ暗になったスマートフォンの画面をぼんやりと眺める。そこに映り込む27歳の自分の顔。そっと指先で撫でる。


ねえ、成宮。
私はやっぱり「過去」を知って「今」と向かい会いたいよ。
だから。


誰も教えてくれない「過去」のこと。
私の空白の10年間。
その最奥に繋がる扉は---"彼女"だ。
そしてその鍵は、きっと一也が持っている。