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禍根を絶ったその夜、斉藤さんにメールで添付してもらった本丸御殿の見取り図と睨めっこし、こんのすけとああだこうだ相談しながら大掃除の日程を立てた。
まずは水周りからということで、風呂場、厠(トイレ)。
次に屋敷の奥から手前に向かって進めていく。最奥の審神者の部屋は済んでいるので、周囲の小部屋、座敷、茶の間──最後に、玄関と土間兼厨。
なにせ大きなお屋敷だ。一日の半分を費やして毎日作業するとしても、最低一週間か二週間はかかるだろう。だって人手が私しかないのだか──あ、こんのすけもいるか。まあ、なりが狐なのでせいぜい小物を片付けてもらうくらいにはなろう。狐とお掃除、ってもう響きがファンタジーだよね。こんのすけと私、セットでディズニーに転職できるんじゃない? 人気者間違いなし。
こんのすけに「審神者業がずーっと上手くいかないままだったら、二人で夢の国に鞍替えしようね」と言ってみれば、「あなた様が望むのならば、どこへでもお供致しましょう」って頬ずりされた。よし言質取ったぞー! 斉藤さんここでやっていけなくなったら私たち駆け落ちしまーす! ……いや無理なのは分かってる。楽しい脳内世界に逃避しただけです、はい。
涙をのんで空想を止め、現実に立ち向かう。頭にクエスチョンマークを浮かべてこっちを見つめるこんのすけの視線が痛い。責められてはないんだろうけど、私のすっ飛んだ現実逃避に付きあわせてしまった罪悪感が、罪悪感が……。ごめん、ちゃんとする。真面目にする。
明日から挑む清掃は大掛かりになるため、準備もそれ相応に行わなければならない。現代(私基準でね)日本のタイル床やフローリングではなく、昔さながらな武家屋敷の木目板や畳を相手取って掃除するとあって、インターネットや本で掃除の方法を探し、調べる。また、おばあちゃんの知恵袋ならぬ、こんのすけの知恵袋も借りたりした。この管狐、万能である。
破れた障子や傷ついた柱等、破損箇所に関しては、資材と私の力を練り合わせて直すことにした。以前、離れの修理も同様の方法でやったが、いまだに原理が分からない。審神者って魔法使いなんじゃない? ってたまに思う。……そうなら魔法省に就職できそうだなあ。
くだらない思考転換を挟みつつ、掃除のスケジューリングや緊急時の対処諸々をこんのすけと打ち合わせ、気付けば真夜中になっていた。
政府への報告や全ての下準備を済ませ、床に付いたのは日付が変わった頃。あちゃあ、夜更かし。いやもともと(審神者になる前)は十二時とか一時に寝てたんだけど、ここで働き出してからは十時就寝が身についちゃってさあ。今では早寝早起きが基本だもん。規則正しい生活ってほんっと体調よくなるよ。
あくびをしながら小さな狐に「おやすみ」を告げ、瞼を閉じる。私の頭元で丸まっているこんのすけが寝ているのは、この前プレゼントした犬用のクッション。ほどよくふかふかで寝心地が良いらしい。気に入ってくれてなによりだ。
夏の終わりに大掃除って、気が滅入るなあ。年末でもないのに。まあ、これが終わればしばらくは落ち着くでしょう。
薄い掛け布団にくるまりそんなことを思ったが、知らぬ間に意識が途切れていた。疲れ(肉体的精神的)もあってか、朝までぐっすり。爆睡だ。