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「物事というものは見方一つでずいぶん所感が変わるものですよ」
天井に浮き上がっている不気味な模様が薩摩芋に見えるようになった女へ、管狐は感慨深く言った。周囲に居た付喪神らへ聞こえるよう、わざと大きめの声で。
物事は見方一つで所感が変わる。利発な狐がそれを本当に伝えたかったのは女ではなく、偏見に囚われている刀剣男士だった。
管狐の言葉にいたく感心した人の子は、へえ、ほお、と一人考え込んでおり、小さな狐はその隙にと背後を見やる。
「そうは思いませんか。ねえ、御方々?」
ぼうっと女を眺める神々に含みのある笑みを向け、意味深な問いかけをする管狐。突然投げかけられた神々の反応はというと、バツが悪そうにするもの、ハッと瞬いたもの、ぼんやりとしたままでいるもの、様々だった。
様々だったが、管狐は確かな感触を得た。もう先の審神者と己の主が同じであるとは思わないはずだと、彼は自信有りげに胸を張る。
主人と共に御殿へ乗り込んでからというもの、刀剣男士らの態度は徐々に変化してきていた。視線の厳しさは和らぎ、敵意を消して狐の主を興味深そうに観察する神も出てきた。
完全に警戒を解かせられなくとも、成果は上々。管狐は付喪神を見渡し、ホクホクとしている。
「え、こんちゃんなんか言った?」
管狐の声に気付いた女に対し、政府の狐は元の位置に戻した首をゆっくりと横に振る。彼は己の小賢しい企みを主人へ知らせるつもりなぞ、毛頭なかった。
「いえ、何も。お気になさらず」
「ん? ん?」
不思議そうに首を傾げる主人を可愛らしく思い、管狐は目を細めた。
(もったいない。これほどまでに愛くるしく、気立ての良い方を遠ざけるなど)
狐の主人は絶世の美女でも可憐な少女でもない。しかし、この管狐にとっての女は、目に入れても痛くないくらい、可愛くて可愛くて仕方がない存在だった。
黒い瞳にじっと見つめられていた女が、物言いたげに唇を動かす。狐の答えに納得がいかない彼女は、もう一度尋ねようとしていた。
「主様、明日は薩摩芋で何か一品こしらえてみては?」
主人の追求を避けるべく、小さな狐は食事の話題をポンと出す。食い意地の張っている彼女のことだ、きっと乗ってくるだろう。そう考えて。
「あ、いいねえ。なんにしよう」
訝しげな表情が一転、女は目をキラキラさせて破顔した。
(ほうら、釣れました)
いとも簡単にはぐらかすことができ、管狐は笑いだしてしまいそうになるのを堪え話を続ける。
「図々しくも申し上げますが、私はそぼろ煮が好きでございます」
「そぼろ煮! おいしいよね、そうしよう。明日のおかず一つ決まりー」
食欲を滾らせ、あれが食べたい、これも食べたいと頬を上気させている主人に、小さな狐は「ええ、ええ」と機嫌よく頷いた。
(単純で、間が抜けているところも好きですよ、主様)