小話 - なんとはなしに

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「で、どうだ斉藤。お前んとこのあの審神者、大丈夫そうか?」
「ええ。食事も睡眠もとれていますし、笑える余裕もあるようです。体調不良の訴えはなく、霊力の乱れもありません。ただ、先の出来事で刀剣男士に不信感を抱いていますね」
「ほーん……まだ尾を引いてるって?」
「はい。楽天的であっさりしている性格とみていたので、あそこまで蟠りを残してしまうとは……正直予想外でした。余程堪えたのでしょうね」
「あー、まあなあ。所詮、あれも生易しい時代を生きる小娘さ」
「温い小娘にしてはタフな方だと思いますよ。色々悩みつつも、現時点では辞職に至らなさそうです。経済的な理由もありますし、社会人としての自覚もまずまずあるようなので。こちらが命じれば刀剣男士へ出陣要請も出すでしょう。今回は敢えてそうせず、彼女に戦場へ出て頂く、という形を取りましたが」
「審神者自らの出陣が、あそこの神さん方にどういった影響を与えるか、だな」
「刀剣男士の態度は一部を除いて既に大きく軟化しているようです。今は彼女側の問題の方が大きいかと。完全な和解まで一筋縄ではいかないでしょう。こんのすけと共にサポートを続けます」
「んん、そうか」
「はい」
「……あー、あのな、斉藤」
「なんでしょう」
「あの審神者、異動させてもいいぞ」
「はい?」
「お前、あれに交付された辞令見てるだろ」
「ええ。穢れの浄化並びに『本丸』の機能回復、でしたか」
「そうだ。上があの審神者に下ろした辞令は『本丸の立て直し』。あそこで主になることじゃあない。ざっくりした辞令にしたのも、あれに碌な説明をしなかったのも、後々駒を動かしやすくするためだ。もう穢れも祓い切れてるし、手入れも終わった。刀剣男士も少しずつ人馴れし始めている」
「……」
「あの審神者に無理をさせるな。使い物にならなくなっちゃあ元も子もない。お前がヤバイと思えばいつでも動かして──っと、ちゃんとした後釜が見つかってからになるがな」
「ですが」
「あーあー、斉藤。お前が言いたい事はよく分かる。俺も上もあの審神者がそのままあそこに居着いて、『主』になってくれりゃあ良いと考えてるさ。でもな、潰れないか心配なんだよ、どっちも」
「……それは」
「自分が顕現したわけでもない、苦労して手に入れたわけでもない刀を愛せるか? 自分に牙を向いた刀を後生大事にできるか? トラウマ持ちの面倒臭そうな神と付き合っていけるか? 確かな覚悟がないと、あそこで『主』をやるのは難しいだろうよ」
「……」
「刀剣男士にとってもその方が良い。自分たちを愛してくれない主人を据えるなんざ、酷なもんだ。心を病むぞ。下手すりゃ謀反、神隠しってところだな。付喪神が何より望むのは絆だ。こんのすけくらい大事にしてもらえないと不服がるぜ?」
「仰る意味は理解できます。しかし──」
「追々、辞令の裏側を一度教えておいてやれ。政府(俺たち)は駒を動かしやすくなる。あの審神者は逃げ道ができる。最悪の事態を考慮すれば、お互いの為さ。斉藤」
「……はい。分かりました」

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