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そうこうしているうちに時は満ち、白き光が忽然と現れる。その閃耀に山茶花の若木が覆い隠された。狐の主人のお戻りだ。
出迎えの刀剣男士を少しでも減らそうと奮闘していた管狐だったが、もはやそれは叶わぬと諦め、ならばと思考を切り替える。
「名だたる刀の付喪らよ、礼節を重んじるようお願い申し上げます。挨拶が肝心ですよ。明るく、笑顔で、元気良く! 睨みは禁物、言動は丁寧に。よろしいですね!」
喉が裂けんばかりの大声。庭に轟いたそれは神々の鼓膜に触れ、同刻、ゲートより一人の人間が降り立った。
「おかえりなさいませ」
管狐は手本と言わんばかりに愛想良く奉迎する。
「ただいま、こんちゃん」
政府の有する施設から戻った女が、にこやかに返事をした。彼女は辺りをぐるりと見渡し、ほんの一瞬目を瞠る。その変異にヒヤリとした管狐だったが、狐の主は逃げもせず、冷々ともせず「どうも」と軽い会釈をした。
主人が心を傷めないか気が気でなかった小さな狐。主のもとへそろそろと歩み、ぴたりと側に寄り添う。そして、四辺に蔓延る神々をじっと見張った。猟犬のような眼で。
──こんのすけの採点が、今始まる。
「おっ、帰ったな。おかえり」
(御手杵、清爽かつ親しげ。七十八点)
「おっかえりー! 政府に行ってたってほんと?」
(浦島虎徹、快活、されど急き立てるは良しとせず。六十五点)
「おかえりなさいませ。……ご無事で何よりです」
(へし切長谷部、慇懃、美しき敬礼。八十二点)
「よっ、おかえり。急に政府に行ったって聞いて驚いたぜ」
(鶴丸国永、友を迎えるが如き親しみ深き仕草、良し。七十七点)
「おかえりなさい。あなたを待ってました。兼さんと」
(堀川国広、微笑みが柔らか。七十四点)
一口ひとくち、穴が空くほど見つめられていた。初めの四振りは狐にとって及第点の出来であり、管狐は主人の足元で微かに頷く。完璧とは言い難くも、刀たちのもてなしは悪くない。
(気になる箇所はありますが、まあ、よろしいでしょう)
まずまずの結果に気を休め、それでも尚、管狐は心の内で挨拶の品評を続けた。
「ふふ、ふふふふ……お、か、え、り」
(亀甲貞宗、笑みが怪しい。以前の無礼も差し引いて、四十点)
「がーっはっはっは! 戻ったか!」
(岩融、笑顔は爽快なれど、猛々しさに節度なし。あの大声に主様が驚いていなければよいのですが……五十九点)
「おかえり。待ちくたびれそうだったよ」
(次郎太刀、簡素ながらも態度は鷹揚。六十五点)
「……帰ったのか。ふっ、一応言っておいてやろう。この大包平が、『おかえり』とな!」
(大包平、あなたという刀は……! 悪気なくとも三十一点!)
ここで最低点が叩き出される。尊大に腕組みをする大包平へ眦を吊り上げた管狐だったが、鳴り止まぬ出迎えの声に満足感を得て、徐々に表情をとろけさせていった。終いには恵比須顔。
なんだかんだ、こんのすけは嬉しいのである。挨拶の仕方はどうであれ、刀剣男士が己の主人へ歩み寄りの姿勢を見せたことが。