***


 まさか、再びこんな金切り声を上げる羽目になってしまうとは。
 今朝方に自身の体がガールへと変貌している事に気付いて早数時間。頂点に昇りつめた太陽が少しずつ傾き始めた頃、番台で店を開ける準備をしていると、さっそく店へと常連客が顔を出してくれたかと思えば、カウンター越しのその先には意外な二人組が照れ臭そうに頬を染めながらきょろきょろと中を見渡していた。
 それは忘れもしない、首に掛けたオーロラヘッドホンに少しだぼついたかくれパイレーツ、そしてその隣にはおどおどと緊張した様子で視線を落としている、頭にランニングバンドとバスケジャージアウェイを身に付けた、まだ記憶にも新しい二人の若いボーイで、彼らの顔を見た瞬間に喜びのあまり思わず大きな声でその二人の名前を呼んでいた。

「アッくんにともきくんじゃないか! うわぁ、久しぶりだなぁ!」
「お、おおお久しぶり、ですっ」
「やっと遊びに来てくれたんだね、ずっと待ってたんだよ」
「俺達もいつ行こうかって悩んでたんですけど…その、アッちゃんが恥ずかしがっちゃって…」
「ば、ばかっ! それは言わない約束!」

 色違いのナイロンバッグを肩に掛けている二人はアツシくんとともきくんは、幼馴染の知人であるダビデさんの紹介してくれたある喫茶店で自身が数ヶ月前アルバイトをしていた時に出会った客のボーイだった。まだナワバリバトルも始めて間もない二人はその帰りによく店に足を運んでいたらしいものの、その片方から気付かない間にただならぬ想いを寄せられていた事が判明し、そんな偶然ともいえるきっかけで互いを知ったという経緯がある。今となっては良き友人であり、微笑ましいバトルの後輩、時には幼馴染にも弟のように可愛がられていたものの、今の今まで銭湯であるこの店にはまだ遊びに来てもらった事が一度もなかった。

「えへへ…嬉しいなぁ。あ、そうだ。ちょうどお風呂沸かしたところなんだけど、更衣室の掃除がまだ終わってなくてさ。悪いんだけど、休憩所で少し待っていてくれるかな。俺、案内するからさ」
「あ、そうなんだ…まぁ仕方ないよな。ともき、行こうぜ」
「う、うん。ちょっと、待って…靴がっ、あ…う、わぁ!」

 頬は仄かに染まっていたものの、話してみればすぐに場慣れしやすい彼に心の中で苦笑していると、背後でクツを脱ぐのにもたついていたともきくんがそのままバランスを崩してこちらに真っ直ぐ倒れてくるのに気付き、慌てて振り返っては受け止めようと両腕を差し出すもまだ力の入れ具合が分からない自身の体への踏ん張りがきかず、そのまま小さな体を受け止めながら背中から床へと見開き驚いたアツシくんの横に身を沈めていく。久しぶりに強打した背中に走る痛みに思わず涙がちょちょぎれそうになるもなんとか歯を食いしばりながら耐え、胸の中で抱き留めたともきくんを見下ろして声を掛けた。

「あい、たたたっ…と、ともきくん! 大丈夫?」
「ご、ごめんなさいぃ! お、俺…んんっ?」

 こちらに全体重を掛けていた事に気付いたともきくんは急いで退けようと伸ばした腕の先、そこには本来自分にはないべきものの柔らかな膨らみが存在していて、まさかそこを揉むように手のひらを押し込まれるとは思ってもおらず、事故とはいえ今まさに起きてしまった、所謂ラッキースケベ(ただしボーイ同士である事を認識して頂きたい)に目の前の彼の顔はこれでもかと言う程に真っ赤に染まり上がっていた。

「ひ、あ、ぅっ…こ、これ…もしかして…おっ」
「や、やばっ…あ、う、えと! アッくん!」
「は、はい!」
「ともきくん、ちょっと具合悪いみたいだから、奥のソファーで休ませよう! て、手伝ってくれるかな!?」

 このままでは出来れば秘密にしておきたかった事柄が全てばれてしまう。そう思い、咄嗟にすぐさまその場を乗り切る為に行動へ移そうとするも、運の悪さというのは芋づる式にずるずると掘り起こされてしまうもので。
 どうやら普段とは違う何かを感じ取ってしまった彼の身を引き剥がして押し付けるようにアツシくんへと引き渡し、何が何だか理解していない彼をそのまま休憩所へと誘導しようと、少々強引に手を引いて細い廊下を早足で渡ったその直後だった。

「…へ? あ、う、わあぁっ」

 廊下のど真ん中にいつの間にか放置されていたらしい牛乳瓶の空き瓶が横たわっており、気付いた時には時既に遅し。しっかりとその空き瓶を踏み付けてはずるりと足元が滑り、再び視界が暗転した事によって事態を理解した脳はすぐさま受け身を取るよう体へと指示を出したものの、子供とはいえ小さくなった体に二人分の体重はなかなかに堪え、雪崩のように圧し掛かってきたアツシくん、そしてそこから乗り切らずに転がり落ちたともきくん(どうやら鼻血も出てしまったらしい)の圧力に思わず、ぐえっと変な声を吐き出してしまった。

「う、ぐぐっ…ちょっと、さすがに…」
「ま、マゴさん…大丈夫、です、か…っ!?」

 一災起これば二災起こる。
 ふとそんなことわざの存在が頭の中に浮かび、再び胸元へ押し付けられた何かをすぐさま感知しては古い天井を背景に恐る恐る視線を上げてみると、薄らと頬を染め、募る疑問を解き明かしたいが為にゆっくりとその柔らかくぬくもりの詰まった膨らみをセーター越しに揉み下していた。

「あっ…だ、だめ…アッくん、やだっ」
「っ…あ、の…これ、もしか、して…」
「ち、違うの! これはっ…あ、ひうぅ! 引っ掻いちゃ、だめ…っ」

 年相応の彼の好奇心と乳房という存在に対する興味が手を止められずにいるのか、痛みはなけれど何度も何度も揉み続けられるうちに体全体へと走るぴりぴりとした弱い痺れに思わず声が漏れ、その中でいつの間にかぷくりと微かにセーターが張った先端に指先が引っ掛かる度、びくびくと震える体は次第にアツシくんを押し退ける力さえも失われていった。

「…どうりで、今日のマゴさん、小さく見えるなって…。まさか、ガールちゃんになってたなんて、思わなかった、けどっ」
「う、うぅ…これには、深いワケが…。あっ…だ、ダメ! そこは触っちゃダメだってー!」

 するすると空いたもう片方の手が下半身へと伸び、スパッツと素肌の間から差し込んだその指先で既にしっとりと溢れ始めていた愛液と、本来あるべきはずのないガール特有の秘部をぐちゅぐちゅと音を立てて撫で上げるように触れてきたものだから実に居た堪れない。とはいえ、今は完全にガールの体へと変化している為、デリケートな部分故に何も感じる事のないはずはなく、まるでその部分から奥底へと伝わる熱い波に思わず身を捩らせてしまった。

「やっ、あ、うぅっ! お願い、も、やめてよ、アッくん…!」
「ご、ごごご、ごめんなさいっ! も、もうちょっと、だけ…」
「うぐぐっ…あぁもう、思春期にも程があるー! ひ、あっ…やぁん!」

 余程ガールの体に興味があるのか(気持ちは分からないでもない)、どうやら邪な気持ちを抱いている訳ではなく、自身の体と相違している箇所が気になって仕方がないらしく、下半身だけではなく太腿や腰、細い腕やガールらしい柔らかな肌を滑るように触れたかと思えば、首元に顔を近付けてくんくんと匂いを嗅いでいる彼を眺めてどっと疲れ果てた体に最早抵抗する余地はなかった(彼の相方はもっと初心なのか、未だに意識が朦朧としてすぐ傍でうんうんと唸りながら横になっている)。
 そしてようやく気が済んだのか、冷静さを取り戻したアツシくんが慌てて跳び退けようと腰を上げたその時、二人を覆う影が彼の背後からぬるりと伸び、互いがその黒に染め上げられた頃にはもう時既に遅し。

「こンの…ッ、クッソエロガキがー!」
「ひ、ぎゃあぁっ! よ、ヨリちんさん、これにはワケが…ウゴゴゴ」
「今日という今日は許さねぇ、ケツだせケツ! 百叩きじゃー!」

 後ろから首を締め上げそのまま体を持ち上げるように幼馴染に確保されたアツシくんの表情は徐々に赤から青へと変化していき、廊下で撃沈していたともきくんもようやく目が覚めたのか、早々目の前で起きている事態を飲み込めるはずもなく、悲鳴のように友人へと呼びかける事しか出来ない混沌とした状況に安心したと共に背だけでなく頭の痛みも増していったのだった。


***


 疲れ果てて眠ってしまった二人(叩かれ過ぎて力尽きたともいう)を奥の居間に敷かれた布団の上へと寝かせて一息ついた後、やはり別々に行動するのはやめておこうという幼馴染の強い提案で、二人仲良く男湯と番台周りの掃除、レンタル用のタオルやシャンプー、リンスの補填、休憩していいよと提案するも今日は傍を離れたくないと腕を掴まれ、台所に立っている時も小さなキャンプ用の椅子を倉庫から持ち出しては、携帯電話を弄りながらも文字通り夕飯を作り終わるまでずっとその場を離れる事はなかった。

「えっと…お皿…」
「取ってやる、そこちょっとどいてろ」
「え、あっ…あり、がと」

 出来上がった料理を盛る皿を取り出す為に何度も踏み台を上っては降りるを繰り返していると、いつの間にか隣りまで歩み寄ってきた幼馴染が少し背伸びをして上棚に仕舞われている皿を取り出し、ほらよと苦笑を零しながら渡してきたものだから、少々呆然としながらも一言礼を返しては素直に受け取る。
 その時に感じた不思議な違和感はその後も続き、目を覚ましたアツシくんとともきくんと共に夕飯を食べ終え(騒動の件についてはもしや夢だったのでは、と疑心暗鬼のままだった二人に誤った記憶を無理矢理植え付け、純粋たる少年達にどうにかそう思い込ませるよう促す事に成功した)、彼らが帰っていった後もこれは俺が片付けると言い出し、お盆に乗せた重ねた食器を軽々と持ち上げ流し台まで運んでは一人鼻歌を歌いながら洗っていた。
 結局、店を閉めた後も謎の気遣いは続き、普段以上によく働き出した彼の心境を上手く掴む事が出来ないまま、さっさと風呂に入ってしまおうと二人、男湯の方で共に入浴する事になった。

「…見せたくなかったら、無理して一緒に入んなくてもいいぞ」
「い、嫌…だった?」
「そんな訳、ねぇけど…その、一応と思って」
「ヨリがいいなら、一緒に、入る…」
「あ、そっ…えと、準備出来たら来いよ。先、行ってっから」

 何故だか余所余所しい雰囲気は着ている衣服を全て脱ぎ捨てた時から健在で、どうやらいつにも増して体の細いラインと加えて嫌でも目に付く胸の膨らみへ視線を向ける事に抵抗があるらしく、先に入っていると浴場へ早足で駆け込んでいくものだから思わず溜息を吐いた。

(…やっぱり、好きじゃないのかな。この体)

 既に散々捏ね繰り回されてしまったガールの体に視線を落とし、大きいとはお世辞にも言えない胸をそっと、巻いたバスタオル越しに触れては肩を落とす。シュシュを外して顔の脇にだらりと落ちる長めの髪、いつもより近く感じる古い板の床、反対に天井は遠く感じて今まで少し見下ろす程の背丈だった幼馴染を見上げる形になった今、生活するにおいて不便さは多々あるも、それよりも昨日までの彼との距離感がほんの少しだけ遠く感じるようになってしまった事に一抹の不安を覚えた。

「それとも…寧ろ、このままでいた方が、喜んでくれる、のかな」

 数ヶ月前に再び彼を失って初めて、幼馴染であり同性でもある彼への気持ちにようやく気付き、自らその全てを告白をしては受け入れてもらえた時の事は今でもしっかりと記憶に残されている。それどころか、消し去ろうとしても二度と消せないという程に深く刻まれていた。それでも、世間一般的には公にしづらいその関係に罪悪感は未だ胸の奥に残っており、もしもこのままガールの姿で一生を歩めるのであれば、彼にとっても自分にとっても幸せなのではないか、そんな考えが頭の中でぐるぐると渦巻き、自分でもどうするべきなのか分からずに抜け出せないループの真ん中で蹲る自身の幻影を暗闇の中で見つけてはじんわりと視界がぼやけていった。

「っ…くよくよしても、仕方ないか。さっさとお風呂、入んな、きゃ…う、わぁ!」
「おぉっ!?」

 目元に溜まった涙を手の甲で拭い、ゆっくりと息を吐きながら引き戸の扉を開けると、目の前には待ち草臥れたとでも言うように不機嫌そうな眉尻の吊り上げた幼馴染が立っていて、勢い余ってその胸板へと衝突してしまった。

「び、びっくりしたぁ!」
「それはこっちのセリフだっての! 遅いから心配しただろうが!」
「ご、ごごごごめんっ。こ、心の準備というものが…」
「はぁ? おら、さっさと来い。背中、洗ってやる」

 やれやれとあからさまに溜息を漏らしては腕を掴み、身に付けていたバスタオルも剥ぎ取られ、改めてありのままの姿を見られている状況にうるさく鼓動する心臓、燃えるように熱くなる顔を埋めるように俯いている間に浴場の奥へと連れて行かれ、洗い場の前に置かれた椅子に座れば、既に泡立ったボディタオルを手にした彼がいつもより力を入れずに優しく背中を洗い始めていた。細く小さな領域はあっという間に真っ白に埋もれ、洗い足りないのか両脇から差し込まれた腕が前まで伸び、胸元を避けつつ腹から足へとかけて撫でるように流れる手つきに少し息が熱くなっていく。

「あっ…う、前は、自分でやる、からっ」
「なんだよ、嫌なのか」
「そ、そうじゃないけど!」
「安心しろって、変な事はしねぇよ」

 意外にも平気そうに触れてくる彼は言葉通り本当に何もアクションを起こさないまま、当たり障りのない部分だけを洗い終えて投げるようにボディタオルを手渡すと、後は自分で済ませろとでも言うようにすぐさま腰を上げたかと思えば一人奥の湯船へと足を入れていた。
 その時、咄嗟に大きな傷跡が縦に入った黒い背中へとぶつけるように自身の口から飛び出した言葉が、ゆっくりと湯気の中へと消えていく体を引き留めたのだった。

「な、なんで!」
「あぁ?」
「さ…触って、くれ、ないの」
「ま、マゴ…?」
「あっ…いや、その、えと…」
「それ、どういう意…」
「ごめ…ごめんっ! 忘れて、お願い…」

 自分でも一体何を言っているのだろうとぶんぶんと頭を振り、自身を理解できない苛立ちにシャワーヘッドを掴む。泡だらけの体に頭からお湯を流してはぽたぽたと雫が落ちるばかりの視界にぼやけて映る幼馴染の、呆然と立ち尽くすその姿を見てどうやら大変な事を言いのけてしまったらしいとようやく理解し、慌ててその横を通り過ぎてはその身を隠すように勢い良く湯船の中へと飛び込んだ。

「ぶほぉ! おま、ちょ…何やってんだよ!」
「あぁー、もう聞こえない! なんッにも聞こえない!」
「お、怒ってんの!?」
「別にそう言うワケじゃない!」
「やっぱ聞こえてんじゃねぇか…あ、ちょ、待てって!」

 ばしゃばしゃと水面を波立てながら湯を掻き分け、浴槽の角へと追い詰められては息の上がる体力のない二人(ガールになったところで若くなった訳ではないらしい)、しかし意味深な言葉を告げられて逃がしてくれる様子はなく、ついに掴まれてしまった右腕と腰、そのまま引き寄せられて目の前に浮かんだ彼の表情は、意外にも照れ臭そうにほんのりと頬を染め上げていた。

「いい加減、はっきり答えてもらうからな」
「な、何をっ…!」
「お前がそうやって、余所余所しくしてる理由」

 余所余所しいのはお前だって同じじゃないか、と文句を零しそうになるも喉元でなんとか引き留めて、事実今まさにおかしな言動を起こしたのは紛れもなく自分であるので、不満はあるもののそっと浴槽のタイルの壁に凭れつつ、ゆっくりと大きく息を吐いては胸の中で渦巻いていたものをぼそぼそと少しずつ吐き出していった。

「あの…その。自信が、なくなってしまって」
「自信」
「えと、ボーイであった自分よりもガールである今の方が、ヨリは、嬉しいのかな、とか…ううん」
「はぁ」
「逆にその…さっきみたいに、ふ、触れ、て…くれないの、は…いや、別に! 触れて欲しいとか! そ、そんなんじゃないけど! あの! …この体のままじゃ、もうダメなのかなって…う、うぅう〜」
「説明しながら泣くなよ…」
「だ、だってぇー…」

 人が泣きべそをかきながら必死に言葉を拾っては投げ、拾っては投げを繰り返しているというのに隣りで寛ぐこの男、耳を傾ければ溜息しか吐かずげんなりと肩を落としているものだから実に腹が立つ(こっちは必死だというのに)。とは言え、自分自身でも何が言いたいのか分からない程に頭の中は混乱していて、呆れられてしまっても仕方ない状況である事に間違いはない。そんな、我ながら情けなくめそめそと湯の中へ沈みながら落ち込んでいた中、そっと幼馴染の影が自身を覆い、何も考えないままにそっと水面から顔を離したその時だった。

「えっ…」

 ゆっくりと当てられた軽く握りしめた右手、親指の先と折り曲げた人差し指の腹で顎を掴んでは顔を持ち上げると、そのままがっちりとぶつかった視線をそのままに、ぼんやりとした意識の中で互いの湿った唇がそっと重なり合っていた。

「ヨリ…?」
「…これで、分かったろ。お前がボーイだろうがガールだろうが、俺の気持ちはずっと変わんねぇよ。これしきの事で不安がってんじゃねぇっつーの」
「う、うん…」
「あと、触れなかったっつーよりは、その…なんつうか、先方今までガールとは体を重ねた事ありませんのでぇ。どう触れたらいいのか、よく分からなかっただけだ! 言わせんな、恥ずかしい」
「ほう…さすが遅咲きの童貞…」
「うるせぇな! 誰のせいだと思ってんだ、誰の!」

 あれだけ喉元を締め上げるように詰まっていた不安は一体どこに行ってしまったのだろうと思ってしまう程、彼から告げられた言葉があっという間に自身に積もる重さを一気に吹き飛ばし、ようやく本来の自分を取り戻せたような気がして今はただただ幼馴染の笑顔につられるように乗じて響く浴場の中でけらけらと声を上げて笑った。
 しかしその後も体は戻る様子は見られず、結局普段通りにパジャマのFCジャージーとスウェットに足を履き入れて、机の上に置いておいた臙脂色のブレスレットを身に付けては、毎日の習慣である簿を付け終えては大人しく二人で布団の中へと潜り込んだ。すると、ちょいちょいと手招きをする幼馴染を不思議に思いながらもずりずりと体を引き摺りながら身を寄せて、どうしたのと問い掛けようとした直後、被っていた布団を引き剥がすように退けられ、咄嗟に覆い被さるように伸し掛かってきた幼馴染に思わず悲鳴のような声を上げた。

「な、何して」
「…触れっつったのは、お前だかんな」
「へ? …あ、ちょ、や…やだっ!」

 首元まで上げていたジッパーを一気に下まで下ろされ、再び露になった胸元をそっと撫でるように手のひらで揉み上げ、もう片方の手は頬を摩り、そのまま落ちてきた唇は息を乱す程に貪ってはぐちゅぐちゅと厭らしい音を立てながら徐々に口内を犯していく。

「はっ、あ…や、ぁんっ」
「…いい匂い」
「あ、く、くすぐったいっ…」
「じゃあ、こっち食べる」
「ひっ! う、うぅ…あ、吸っちゃだめっ…!」

 首元に顔を寄せ嗅がれる恥ずかしさに軽く肩を押し返すと、それが気に食わなかったのか下から掬い上げるように少ない胸を掻き集め、少々ぷっくりと膨らみの増した乳房の先を噛み付くように吸い上げながら舌先で弄られるぴりぴりと痺れる刺激に堪らず着ているFCジャージーを掴んではふるふると首を振った。それを見ていい気になったのか、後ろに下がりスウェット越しに指の腹でぐりぐりと秘部を撫でては震える体を見下ろし口角を上げ、すっと引き抜いた中で既に愛液で塗れた入口へと宛がえると、ゆっくり中へと侵入してくる太めの指に思わず息が詰まっていく。

「は、あっ、あぁ…!? やだ…なに、これっ」
「苦しいか?」
「ちがっ…あ、んぅ」
「…こっちの方が、気持ち良さそうだな」
「え? 何、して…あっ…ひ、うぅっ! ヨリ、やだっ…それ、なんか変…ぁ、あんっ!」

 ずぽんと厭らしい音と共に指を引き抜いた幼馴染は、両手でぐいっとその入口を露にするように大きく開いては、小さくも主張するガール特有の陰核に顔を寄せると、舌先で何度も繰り返し舐め上げては口付けをしていく。そこから今までにはなかった強い快感が体全体へびりびりと流れ込み、普段の体とはまた違う体を捩らせてしまう程の熱に自然と涙が溢れていた。

「は、あ、うぅっ…だ、だめ! お願いだから、やめてっ…!」
「っ、怖かったか…? 悪い、慣れない体なのに無理させた」
「あっ、う…ヨリ、待っ…」

 どくどくと高鳴る心臓が脳内を支配する中、乱れた呼吸をなんとか落ち着かせてようやくぼやけた視界がはっきり見えるようになった頃。夢中になって体を弄り倒していた幼馴染も少し冷静さを取り戻したのか、はっと頭を上げて一歩後退りをするものだから慌ててその腕を取り、持ち上げた上半身へと引き寄せた彼の胸元へ抱き付いた。密着した事により胸がむにゅりと潰れ、直に感じる彼のぬくもりと熱い吐息に鼓動は更に激しさを増し、思わず耳を塞ぎたくなる程の音に目頭が熱くなっていく。

「マ、ゴ、おま、ちょ…当た、当たっ、て」
「あ、当ててる…ん、ですっ」
「な、ななな、なん、で」
「何で…って、いや…その、えと……っち…たい、から…」
「……あんだって? き、聞こえねぇよ。もっとデケェ声で言え! ほら、いつも俺にガミガミ言ってるような感じで…」
「っ…あぁもう、だから! ヨ…ヨリと、えっち…したい、から…って、言ったの! 言わせんな、恥ずか…って、ひあぁ!」

 他に言い方というものがないのか、そう心の中で文句を零しつつ、それが今まで出せなかった勇気に火を付けたのか、半ば自棄糞気味に自分でも気付かないうちにずっと言えずにいた言葉を叫ぶように吐き出していた。しかし、その声の大きさに驚いていたせいか、肝心な中身が当の本人に伝わっておらず、更にはその瞬間にぽしゅんと煙を上げながら辺りを漂う白に互いが包まれて、何事かと翻弄されてはようやく彼の姿が視界に入ったその時。次に抜けた声を上げたのは幼馴染の方だった。

「もっ…元に戻ってるー!」
「えっ、あ…ほ、本当だー! う、うぅっ…おかえり、俺のちんちん…」
「…背も、でっけェ…」
「それは元からです」

 馴染みのある身長の視界、そして失ったあるべきものの復活、そして何よりまるで夢の話だったかのように消えていった胸の重み、慣れ親しんだ自身の体の復活に理由は不明であれど、腹の底から喜びと安心が溢れ、大きく息を吐きながら肉付きは少なくもボーイである自分に帰ってこられた事にそっと胸を撫で下ろしたのだった。




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