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あまりの非日常すぎる光景に、自分の目を疑ってしまいそうになった。
通い詰めている銭湯の店主とその片割れとの会話が弾んだ末に珍しく気分が高揚してしまい、悪いと思いながらも一糸纏わぬままの二人を店に置いては外出をし、戻ってきてみれば想像もしていなかった状況に陥っている現実に心底驚いては頭の中が真っ白になっていた。
ビニール袋を提げながら開けた襖の先には、呼吸を乱しながら足を絡ませ合い、艶めいた音を立てながら陰茎を擦り付けている二人のあまりに自堕落な姿に思わずごくりと息を飲んだ。
「な、ん」
すぐさま制止しなければいけない状況である事は理解しているものの、隣りで同じく呆然と立ち尽くしていた彼が先に前へと踏み出した直後に、目を細め強く睨み付けてきた、どうやら今までにない程の怒りを募らせている銭湯の店主に物凄い剣幕で壁際に正座をするよう命じられ、なんの抵抗も出来ないまま現在に至る。
二人仲良く横に並んで座り込んだ目と鼻の先では、店主の上へ伸し掛りながら密着する下腹部の間でぬちゃぬちゃと音を弾かせ胸元にほんのり赤みを帯びた飾りを指先で捻り上がる相方と、その度に頬を染めながら息を上げるも慰め合うように同じく扱き上げ、無意識に左脇腹の青黒い痣を優しく撫でては、互いに高く甘い声を狭い居間の中で何度も反響させていた。
「っ…う、あぁっ! ヒ、ナタくっ…そこ、ばっか、やめ…! ふ、あ、んぅっ」
「あ、んっ…ふ、あぁ! マゴひゃ、らめっ…さわっちゃ、やっ…ら、あぁっ!」
足が痺れ始めている二人を蚊帳の外へ放置し延々と続くその饗宴に息を顰めては、ただただ食えぬ据え膳を見せ付けられながら次第に底から湧きあがりつつあるその興奮を抑えるだけで精一杯になっていた。
舌を絡め荒い息を零しながら厭らしい水音を立て、腰に回した腕が強く二人の体を密着させ、今にもその溢れだしそうになっていた欲を解放させようとしたその時。瞬時に隣りから飛び出した体が相方の腕を掴み上げ、引き剥がすように布団の上へと転がしたところでようやく、まるで拘束されていたかのように縛り付けられていた体を持ち上げては彼の傍へと急いで駆け寄った。
「っ! や…めて、離してよ、ヨリ! う、うぅっ、ヒナタ、く…ヒナタくんっ」
「この、バカッ…! これ以上、好き勝手できると思ってんじゃ…いで! やめろ、蹴るな!」
怒りの収まらない様子の店主を宥めようとその細い体を抱き寄せる片割れが強烈なキックでダメージを受けているその横で、慌てて自分の胸へと抱き寄せた相方の表情は蕩けるように甘く、既に反り立つように反応をしている下半身とその腰へ腕を回しては、ゆっくりとその場に押し倒した。
「う、あっ…サ、キ…?」
「…ここまで焦らした上に勝手な事をおっ始めた罰だ。覚悟しろ」
「えっ…? 何、して…んっ、ふ、あぁあっ!」
敷布団を背に落ちた反動に驚いたのか、腕を立て上体を起こしたその胸の中へと雪崩れ込むように埋めては、ぷっくりと浮き立った胸元の突起にそっと歯を立てじゅるじゅると音を立てながら絞るように吸い付くと、びくびくと反るように引くつく体ににやりと口角が上がる。
「やっ、ら! そこ、やめっ…ん、うぅっ」
自然と後頭部へ回った彼の両腕に包まれながらそっと伸ばした腕の先には、未だに青黒く染まったままの左脇腹の痣の凹凸を撫でるように触れれば面白い程に次々と甘い声が漏れ、彼の震える腕にじわじわと力が篭っていくのを感じ、鼓動する高鳴りに押し込んでいたはずの激流が止めどなく溢れていくのを今更止められるはずがなかった。
「あっ…! マ、ゴさ…」
知らない間に店主と背中合わせの状態になっていた事に気付き、そっと視線を奥へと見遣れば同じような状況に陥っているのか、彼の胸元に埋もれ一つに結われた深緑色の髪が飛び出しているのを確認して苦笑した。そのままずるずると敷布団へ沈んでいく二つの頭を見下ろして、咄嗟に相方の腕を掴み上げると、そのままうつ伏せになるように体を回転させては臀部を突き上げるような体制になるよう腰を自身の下半身で包み込んでいく。
そのまま颯爽と履いていたスパッツとフクを脱ぎ捨てて、既にぎんぎんと太ましくそびえ立った陰茎をぬらついた臀部の割れ目へと擦りつけるように押し入れた。
「ひっ! あ、うっ…そんな、いきなり、無理っ…!」
「…言ったはずだ。容赦をするつもりは、ない」
狭い洞穴を抉じ開けるようにずぶずぶと、しかしゆっくりと息を整えながら奥深くへと沈ませた衝撃から耐えるように、所々で切れる細かい悲鳴のような濁った声が顔を枕に押し付け、その脇でぎゅっと握り締めていた手が深い皺を作っていた。
「や、だっ…あ、う、んうぅっ! お、く、ぶつか、って…あっ、だめ…や、らぁあっ!」
「っ…!」
ごりごりと中を削り落とすように抜き差しを繰り返し、掻き抱くように彼の背中へ自身の胸板を密着させて、嫌でも聞こえてくる激しく鼓動した心臓の音と響きが全身に伝わっては、再び左脇腹へと手を伸ばし、撫でるようにその紫を手の平で包みながら汗ばむ項へそっと唇を寄せた。
「…っ、おい」
向かいでパンパンと水の撥ねる音を響かせながら、仰向けに体を沈ませ両足を肩に担がれ、臀部を叩き付けるように激しいぶつかり合いが繰り返される度に、快楽に耐えながら喘ぎ体を捻らせた、日常では絶対に見る事の出来ない酷く乱れている店主の姿と、肘を立て、そんな彼の頭上で呼吸を荒くしながら彼を見下ろすように上体を持ち上げた相方は、何の違和感のない自然な流れでそっとその薄い、しかしぷっくりと柔らかさが垣間見える唇に自身のものを重ね合せていた。
「んっ…う、んん、まご、ひゃ…」
「あ、ふ、あぁっ…! ひ、なた、く…んっ、あ、ふぁ、あぁんっ!」
口寂しいと言わんばかりに店主にむしゃぶりつく彼の体を慌てて引き寄せ、胸に背を預けるように凭れた赤らめた頬と細く項垂れた海色の瞳を見下ろした瞬間に大きく心臓が唸りを上げ、そっと熱の篭る声のまま耳元で彼の名前を呟いた。不思議そうにゆっくりと振り向いたその表情に居ても立っても居られず、ぼんやりとどこか間の抜けたその微笑みに跡を刻み付けるように深く、息をするのを忘れてしまう程にその唇へと強く重ね合わせた。
「んっ…ふぁあ、ん、うぅっ」
「…っ、ヒナ…」
「ひっ! だ、め…そんな、奥、まで、だめっ…! あ、あぁ…ふあぁあっ!」
たった数秒間の口付けがまるで何十分何時間もの長い時間を浸っていたかのようにも感じて、そのままどろどろに蕩け合い腰を打っては声を上げる腕の中の愛おしい存在を強く抱き締め、びくびくと震えている下半身に思わず口角が上がる。今にも限界を迎えそうになっている、すぐ目の前にまで押し寄せている欲求の波がより早く、奥深くへと彼の中へと陰茎をぐりぐりと押し入れるように何度も突き上げては唇を強く噛み締めた。
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日常的に小さな喧嘩事は多々あったものの、ここまで彼の怒りを買った事など今までに果たして存在していただろうか。
これからだという時に肝心なものを買い忘れた事に気付いて、店で常連であるサファリハットの憎き若いボーイと近くのコンビニまで買い物に行っては早足で帰ってきた途端に広がっていた光景は惨々たるものだった。敷かれた布団の真ん中で体を寄せ合いながら慰めあう二人の間に入る隙などなく、声を掛けた途端に部屋の隅で正座をしていろと突き放されたと思えば、普段は人前でなど無理だと文句を垂れているくせに、仕返しとばかりに見せつけてくる二人の行為をただただ眺めている事しか出来ない状況に堪らず痛みを帯びる程に唇を噛んでいる。
「あっ、く…何すんだ、もっ…! 離せー!」
「いだいいだい! ちょ、やめて、お願い」
とはいえ、そこまで焦らされ黙って座っていられる程に我慢強い方ではなく。二人が今にも絶頂を迎えようとしている事に気付いた瞬間に体は勝手に動いていて、幼馴染に覆い被さっていたガチホワイトのボーイの腕を掴むと、後ろに転がすように引っ張り上げては反対側へごろりと投げ飛ばした。直後、かっと目を見開いて暴れる幼馴染を、これ以上被害が増えていかないうちにどうどうと抱き寄せた背中を撫でると、ようやく落ち着きを見せ始めたのか、はぁはぁと荒げていた呼吸もなだらかに戻ってゆき、殴る蹴るなどの暴行も次第に和らいでいった。
「……ざけんなっ、くそ…くそー!」
「ごめんって! 全部俺のせいでいいから! 頼むから許せ!」
「ううっ…ひっく、ヨリなんかもう知らないっ…」
胸元に顔を埋めながらふるふると肩を震わせる幼馴染を見下ろして次第に罪悪感が胸の奥に募り、どうしたものかと頭を抱えていたその時、その胸の中からぼそりと溢れた彼の濁声に情けなくもあんぐりと口を開けては自身の耳を疑った。
「………いて」
「はっ…?」
「抱いてよ、って。言ったの…!」
叩きつけるように飛んできた大声に危なくそのまま後ろに倒れそうになるも何とか体勢を立て直し、涙を浮かべながら自棄糞気味にそう訴える彼にごくりと息を呑む。無意識なままに深い皺が出来る程に胸元を握り締めるその手にそっと重ね合わせ、驚き見上げた幼馴染の唇に触れるように口付けた。
「っ、ヨリ…?」
「ボーイに二言はねぇ。そう、だよな?」
「…言わなくたって、そのつもりだったクセ、に…あっ、ん…!」
じんわりと頬を熱くさせながら涙を浮かべている幼馴染の上体をそっと倒して布団の上へと沈ませれば、珍しく素直に求めてくる姿勢に甘んじて共に落ち密着した体をそのままに、ぷっくりと既に浮き始めている胸元の突起をじゅるじゅると音を立て吸い付いた。
「ふあぁっ、あ、やだ…そこっ…! ん、うぅっ」
歯を立て舌の先で捩じ込むように含み、空いた右手でもう片方の突起を指先で抓る度にびくりと体を震わせ、むくむくと反り立っていく幼馴染の陰茎が自身の腹を押し上げるように擦り付けてくる感覚に乗じた熱が下半身に溢れ出しそうな程に篭っていく。
「…なんだよ、いつもより反応いいな。そんなに興奮してたのかよ、こそこそ二人で勝手な事しやがって」
「それはお互い様、でしょっ…ひ、うぅ! ちょ、ゆびっ」
持て余していた左手をそっと臀部の下へと潜り込ませ、二本の指をまだ狭まった入口へと切り開くように押し入れると、ずぶずぶと纏わり付くように圧迫する肉壁と擦れ合い声を上げる彼を見下ろして、背筋がぞくぞくと身の毛がよだつように震えを帯びた。
力の抜けた体から一歩後ろに離れ、布団のすぐ横に乱雑に放られていたビニール袋の中から新品のローションを引っ張り出すと、片手で蓋を開け捨て指先で掬い取り、緩く広がったその後孔の中へ撫でるように塗り付けていく。
「あっ、う…つめ、たっ…それ、やだ!」
「我慢しろー、後々痛くなるよりマシだろが」
相変わらずバシバシと飛んでくる野次を気にする事はなく、ひんやりと帯びた熱を冷やしていくローションで滑りのよくなったその中へと、今にも溢れそうな陰茎の先をゆっくりと挿し入れた。
「あっ…嘘、だめ…大き、いっ! あっ、ん、やぁあっ!」
捩る腰を抑えながら繋がったままに両足を肩に担ぎ、ローションのべたつきなど気にもせず、ずいずいと奥へ押し込んでは膝を立てて容赦なく前後に動かした腰を臀部へ撃ち込むようにその欲を叩き付けた。
「あっ、あん! は、うぅっ…! そん、なっ、激し、の…む、りっ!」
「気持ちいいなら、気持ちいいって…はっきり、言えっ…!」
「ふっ、んうぅ…ひ、あぁあんっ! きも、ち…い、よ、ヨリ…!」
弾ける水音とびりびりと痺れる程に体中を走る快感、それは幼馴染の彼も同じ状態であるらしく、必死に浴びせられ続けるその波に耐えるように腕を折り顔の脇の布団に爪を立てながら、これ以上声を漏らさぬよう唇を噛み締めていた。
すると、そのすぐ背後にうつ伏せで蹲るガチホワイトのボーイが彼の顔にゆっくりと影を落とし、呆然とその様子を伺っていれば気づいた時にはもう二人の唇が沈むように重なっていった。
「んっ…ふぁ、あ…ひな、た、く…」
「あっ、コラ! やめろっ」
まるでスローモーションのように目の前で流れていった出来事に一瞬理解する事が出来ず、ようやくあまりに腹立たしいその状況に居ても立っても居られず、二人の間を引き裂くように無理矢理に幼馴染の体を自身の胸元へと引き寄せると、どうやら当の本人達も無意識にお互いの口寂しさを紛れさせていただけだったらしく、どうして突然上体を持ち上げられたのかさえ理解していないようだった。
両肩から落ちた足が腰を挟むように折り曲げながら膝の上へ落ち、自分の上に乗ったまま首に回った両腕と首元に埋められた顔が火照り温かみが伝わって来るのに気付いて思わず小さく苦笑した。
「あっ、あん! や、らっ…だめ、さ、き! う、んうぅっ…も、むり…ひ、いんっ! イッちゃ…あ、あぁ、ん、やぁああっ!」
「…っ!」
その直後に、幼馴染の後ろで体を重ねる二人の自分達とはまるで違う、若々しさが浮き出ている早いペースの交わりに荒げた悲鳴のような甘い嬌声にびくりと震わせた腕の中の愛おしい存在の頭をそっと手のひらで撫で、心臓をばくばくと震わせ見開いた彼の耳元にそっと一言だけをぽろりと零したのだった。
「…手、左の、出せ」
「うっ、え…?」
「いいから。…ほら」
「あっ…よ、りっ! ふ、あっ、あぁあ…ん、やぁ!」
するすると胸元を撫でるように下ろされた左手を絡ませるように右手で掴み、力強くしかし限りなく優しい力でぎゅっとその手を握り締めた。そのままの状態でゆっくりと腰を突き上げれば、左肩を掴んでいた彼の右手と直接耳から脳へと響きをきかせた自身を呼ぶ声にずんずんと奥深くまで沈ませていく。
「っ…だ、めぇ、すごく、深、っ…あっ、ん!」
「っ…マゴ…。もっと、もっと欲しい、マゴッ…!」
「うっ、あぁ…そんなっ、も、出ちゃ、あ…! んうっ、よ、ひ、あぁあっ…!」
圧迫されながらもぬめぬめと纏わり付き中で激しく擦れる陰茎と上下に揺らされた体を必死に剥がれないように肩を掴み、握る手に力を込める幼馴染へのとめどない思いと共に一気に彼の中へとその全てを溢れるまでに流し込んでいく。どくどくと奮い立てその欲で満たされていく自身に大きく息を吸い込み、静かに吐き出しながら崩れていく彼の体をしっかりと抱き留め、未だその余韻に浸ったままにだらりと肩に垂れた深緑の混じった群青の中へと顔を埋めた。
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