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「ひ、酷い目に遭った…」
「自業自得でしょ、全くもう」
旅行先の露天風呂で危うく溺死するところだったのを店の客である若いボーイに助けられ、詫びにとコーヒー牛乳を奢っては温泉の入り口でまた後でと二人に別れを告げた後。少々のぼせてしまったのか、未だもやつく視界に仕方がなく幼馴染に手を取られながら部屋へと戻り、夕飯の時刻までまだ余裕があった為、少しばかり布団の上に横になる事にした。隣りの居間で暇そうにテレビを眺めながら携帯電話をいじる彼に小さく溜息を吐かれつつ、しかし反論する余裕もない頭と体はただただ情けなく不器用に寝返りをするだけで終わった。
「マサキくんの目の前であんな事するバカはこの世でお前ぐらいだよ」
「んな事言ったって…アイツだってお前のケツ触ったろが…」
「何、羨ましかったの?」
「そら、羨ましいってか…普通、許せねぇだろ! マゴのケツ触っていいのは俺だけなの!」
「うわ、何その理由。きも〜い」
けらけらと笑いながら何やらゲームをしているらしい彼は自身の心配も他所に、横にした携帯電話を両手で握ってはいつにも増して楽しそうに指を動かして遊んでいた。
互いが十数年ぶりに再会して既に一年以上が経過し、その期間は短くも人生の中で一二を争う程に色濃い日々を過ごしてきた気もする。しかし楽しい事や嬉しい事ばかりではなく、今までに経験した事のないような辛い思いもしてきたというのにこの男は相も変わらず警戒心というものがない。
店が銭湯であるせいもあるのか、知らない人の前でもフクを脱いだり裸になる事に対して全く抵抗もなく(勿論、ガールは除く)、彼の性格的にもそれが恥ずかしい行為であるという概念はどうやらほとんど持ち合わせていないようだった。
(ったく、一回ヤられかけてるっつーのによ…。こういうところは気にしないっつーか、なんつーか…)
まだ彼と再会して間もない頃、悪質なストーカーに後頭部を殴られて潮臭い廃炭鉱へと意識のないままに連れ去れては薬を盛られ、危うく性的な暴力を振るわれてしまうところだったにも関わらず(少々トラウマは残っているものの)天然でのんきな性格にどうやら変化は見られないようだった。
仰向けに寝転がりながら思わず大きく溜息を吐いた数十分後。部屋に運んできてもらったこれまた大層な料理の数々を目の前に、二人して大きく響く程に息を呑みながら手を合わせては箸を握り、見た事もないような刺身盛や華やかなおかずをそっと口に運んでは噛み締める。過剰に喜ぶでもなくただただ、なんだこれ、ととろけるような美味さが口の中へと広がっていく事態にそれに対するリアクションを取る余裕など一切なかった。一人分にしては膨大な量にも見えたものの、物珍しさからかあちらこちらと箸で摘まんでは結果的に完食をしてしまい、普段から少食である幼馴染の腹は限界を迎えていたようで、青い顔をしたまま布団の上へと飛び込んでは苦しそうに唸りながら横になっている。
「だから残せっつったのに」
「うぅ…こんな一生に一度食べられるかどうか分からないものをヨリに食ってもらうとか、ほんと勘弁」
「腹苦しい時に食っても美味くねぇだろうが」
「う、うるへー! どうしても全部食べたかったんだよ、バ…っ、な、何!?」
枕に頭を乗せ、両足を折り曲げて膝を抱えるように丸くなって力なく文句を零している幼馴染の側へとそっと歩み寄り、さり気なく抜き取るように緩く結ばれた帯を抜き取っては浴衣の重なり合った衿の隙間からするすると手を差し入れていく。
「あっ…やだ、なんで」
「そら勿論、食後のデザートだろうが」
「ば、ばかっ! デザートってのはなぁ、きらきらしてて甘くておいしいものの事を言う、ん…ひ、あぁっ! や、やめろって!」
咄嗟に上半身を起こし細く垂れた灰色の瞳をぐっと力を込めて見上げては、捲れた浴衣の裾を必死に戻そうとするも時すでに遅し。ずぼずぼと躊躇なく浴衣の裏側へと潜り込ませた左手で、滑るように臀部を撫で回してはゆっくりと指先を入り口から奥へと肉を割くようにずぶずぶと押し入れていた。
「やぁらけー…ほんと、俺好み。というか、お前こんな時でもノーパンかよ…いい加減パンツ履く習慣をだな」
「ん、うぅっ…! そんな、事より! 奥、まで…だめ…ぁ、あんっ!」
空いた右手で余す事無く臀部を揉み下しながら、奥まで入り込んだ指先でこんこんと内側から突く度にびくりと震える細い体に思わず口角を上げる。下半身は横を向いたまま、しかしぴりぴりと流れゆく波に必死で耐えているのか、上半身はうつ伏せになっており、枕に顔を埋めながら両手で敷布団を掴みながら小さく唸りを上げていた。
「ンな腰捻ってまた痛めても知らねぇぞ」
「だ、って…ひ、あぁっ! そこやだっ、触んないで! っ、ぁ…も、やぁあ!」
足をばたつかせる度に浴衣が着崩れているのも気付かぬまま、そっと指を引き抜いては荒い呼吸と小さく涙を浮かべながら見上げた彼の体に覆い被さるよう跨いだ。呆然と上下させるその胸元へと顔を近づけ、既に立ち始めているその飾りを歯の先でそっと挟んではじゅるじゅるとはしたない音を立てながら思いきり吸い付いてみる。
「はっ…あ、んうぅ! ヨリ、やめて! 恥ずかし…っ、ん、うぅ…ふ、あぁん!」
ふにふにと柔らかい先端を舌で舐めては摘まむように挟み、引っ張るように吸い付くを繰り返し、いつの間にやら幼馴染が自身の両肩へと腕を伸ばし爪が食い込む程に手で掴んでいた事に気付く。そして首をふるふると振りながら必死に耐えるその姿に見下ろして、ついに沸々と火が付き始めていた熱がどくりと心臓を唸らせた。
「…もう、止められねぇぞ。いいな」
「っ…はぁ、はぁ…。も、誰のせいだと…!」
「そりゃあ、なぁ?」
「う、うぅうっ! 信じらんないっ…、責任、取ってよね…この、ばかっ…!」
頬を真っ赤に染めながらそっぽを向き、可愛らしくもそう突っぱねてきた相変わらずの素直ではない態度に苦笑しつつも、そっとその後頭部へと手を滑り入れては髪を留めているゴムに指を入れてそのままするりと抜き取り、自身が履いていた下着を脱ぎ捨てるように部屋の隅へと投げた。腕を掴み上体を上げると解かれた髪が顔の両脇へだらりと垂れて、既に肩からずり落ちている浴衣、ほとんど解けきっている細い帯、その間から垣間見た膨らみつつある陰茎をそっと掴み上げては、親指でぐりぐりと先端を推し潰しながら上下に扱き始めると、幼馴染は前傾になりつつある体を左肩に預けては声を上げないよう唇を噛み締め、ぎゅっと目を閉じてはごくりと息を呑みこんでいた。
「ん、うぅっ…ふ、うっ! は、あぁ…よ、りっ…!」
「気持ち良いなら良いっつってみろよ。じゃねぇと、ナカ、挿れてやんねぇぞ」
「い、いじわる! また、そんな事言って…ぁっ、あん!」
自分の両膝の上へと彼の足を引き上げ、足先だけ浮かんでは尻だけが布団へと沈み、互いの張り上がった陰茎同士がぶつかりながらびくびくと奮い立たせている。何も言わずとも自然と肩を掴んでいた手が落ちてゆき、がちがちに固くなった自身に触れた彼の手のひらが震えているのに気付いて、耳元に零れた、おっきい、と艶やかしい甘い声に堪らず自意識とは裏腹にその体をお構いなしに布団へと押し倒していた。
「あっ…! ま、って、まだ、ヨリのがっ」
「ンな煽られ方されて、そんなの待てるかよッ…! 観念しろ、バカ!」
「何、言って…! あ、あぁっ…だ、だめっ…ぁ…ふ、あぁあ!」
太腿の下に両手を潜らせ、掴んだ下肢を膝が胸元へと密着する程に上げてはひくつく秘部が目の前へとあられのない姿を見せて、ひたりと自身の先をその入口へと宛がえば互いにどくりと心臓の音が木霊した。留まっている余裕など最早なく、先からじんわりと欲が溢れそうになっているそれを慌てずゆっくりと、しかしこれ以上我慢の限界だと自身の背中を押し込む何かがずぶずぶと肉を引き裂くようにその中へと突き刺していった。
「ひぅうっ! や、ぁ、ついっ…そんな、激しいの、だめぇ!」
「ど、したよっ…! たらふくメシ、食ったくせにっ、早々へばってんじゃ、ねぇ!」
「ふ、あぁっ! 奥、くるしっ…い、は、うぅっ! 待って、おね、がいっ! おかしく、なっちゃ…ぁっ、あ、んうぅ!」
はち切れんばかりに反り立つ自身が彼の中で擦れ痺れる程の熱を帯び、見下ろす先で必死に敷布団を掴んでは歯を食いしばり何とか声を出さまいと涙を浮かべながら我慢する彼が少々気に食わず、ゆっくりとその顔に影を落としては噛み付くように薄い唇を貪った。
「は、ぁっ…や、んぅ、ふあぁ」
「んっ…」
眉を顰め塞がれた口元から漏れる吐息と、中で絡めた舌で混じり合わせた互いのインクがとろとろと蕩け沈んでいくのを感じて、熱が喉を通ってはじんわりと全身へと広がっていく感覚に浮ついた視界がより深く滲んでは、狭まった口の小さな隙間から必死に取り込むように浅い呼吸を繰り返した。
「はぁ、はぁっ…ヨ、リ? どう、し…」
絶え絶えのままにそっと距離を置くように重ねていた唇を離し、潤んだ瞳から小さく浮かんだ涙の粒を親指でぐいっと拭っては、唐突に腕を掴んで一気にうつ伏せになるよう転がすように幼馴染の体を引っ張り上げた。視界がぐるりと回って今まで頭を乗せていた真っ白な枕を目の前にした彼が、一体何が起こったのか分からないでいる間にも、繋がったままの腰を両脇から支えては膝を布団に立てるよう下半身を持ち上げては再び腰をずぶずぶと打ち付けた。
「ひっ! あ、っは…うぅ! そんな、深っ…あ、やっ! ふ、あぁっ!」
上から突き刺すように挿入した陰茎と、その動きに合わせて腰を前後に揺らしながらびちゃびちゃと水音を立てると、我慢の限界が近いのか中からだらりと繋がりを伝って流れ出た白に思わずにやにやと口角を上げ、布団に皺が立つ程にすっと長く伸びた手で握り締め、その快楽を受け入れては全身で感じてくれている彼の甘い嬌声に心臓の唸る音が次第に強くなっていく。
「はっ、あ…はぁ…! マゴ…マゴッ!」
「んっ、ひ、あっ、あん! だ、だめっ…ま、って…!」
「な、んだよっ」
もう全て彼の中に出してしまいたい、そう思ったその時。
枕に押し付けて下半身へと何度も何度も落ちていく熱から耐えるように伏せていた顔が激しい行為の中でゆっくりと振り返り、息が切れ虚ろな灰色の瞳を揺らしながら見上げた表情の口元からぽろりと落とされた小さな訴えは、今にも吐き出しそうになっていた自分にとってこれ以上にない程の衝撃だった。
「あ…んっ、お願い、だから…顔、みせ、てっ…!」
最早力の入らないはずの腕を振り向きながらもこちらへと必死に伸ばし、繋がったままに動いているせいか、小さく声を漏らしながらも再び仰向けの体勢へと戻っていく。そのままゆっくりと起き上げた上半身と恥ずかしそうに視線を外しては後頭部へと回された腕が互いの顔を引き寄せ合い、そっと触れただけの口付けと離れた後の幼馴染のとろりとした柔らかな笑顔に、気付けば力任せにその細い体を潰れる程ぎゅっと強く抱き締めていた。
「んっ、うぅ…くるし、よっ」
「うっせー、ばか…! お前はどんだけ俺を煽れば気が済むんだよ、ったく!」
自然と背中に回った彼の両腕と強く密着する互いの体、奥まで入り込んだ今にも爆発しそうになっている陰茎が、びくびくと震えを帯びる度に小さく声が漏れ、何度も何度も打ち付けては部屋に響く薄い肉が揺れる音に我慢を知らない欲が段々とスピードを上げていった。
「あっ…ひ、うぅっ! だ、だめ! も、おかしく、なっちゃ、あっ…ふあぁ!」
「っ、はッ…中に、出すぞ…! いいなっ!」
「ぁ、あっ! ん、う…ヨリ、早く! はや、く…きてっ! あっ、や…あ、あぁあんっ!」
肩口にぐりぐりと顔を押し付け背中に爪を立てながら体を揺らされ歯を食いしばる幼馴染を力いっぱいに抱き締めながら、穿るように中へ中へと押し込んだ熱が一気に溢れては心地の良い温かさと解放感に体中からすっと力が抜けていくのを感じた。どくどくと耳に響く波の轟きと意識が飛びそうになる程の繭の中にいるような心地良さに、大きく息を吐いてはゆっくりと幼馴染の体を布団へと沈め、一方後ろへと下がりながらすっかり白に塗れた中から自身を抜き取った。
「はぁ、はぁ…マゴ…」
「っ、あ…は、ぁ……ち、よか……」
「あ? 今、なんて…」
先端からだらりと溢れた白濁をぽたりと垂らして、息も絶え絶えになりながら静かに瞼を落としては小さく呟いた彼の言葉を拾おうとそっと口元に耳を寄せる。
「…そりゃ、ようござんした。へへっ」
辛うじて理解する事が出来たその声に思わず口角を上げては、そのまま夢の中へと旅立っていった幼馴染の頬をそっと撫で、気付かれない程の小さなリップ音を少し汗ばんだ額へと弾かせた。
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