ポアロ

「それにしても災難でしたね。階段から落ちて頭と足首に怪我するなんて」
「ええ、でも私の不注意でしたし」
「大事にならなくて良かった。コナンくんもお手柄ね」
「ううん。たまたま通りかかっただけだから」

すごく逃げ出したい。
右手には空手の実力者毛利蘭ちゃん。
左手には東の名探偵工藤新一こと江戸川コナンくん。
なんて死亡フラグ?

コナンくんが呼んできたのは蘭ちゃんで。驚いて悲鳴が出そうだったのを必死でこらえて、彼女が呼んでくれたタクシーで病院に行き、なぜかこちらの住所で作られた保険証で無事に診察を受けられた。(住所が米花町だったのには驚いた)

「とても助かりました。江戸川くん、毛利さん本当にありがとう。」
「いいえ!見つけたのはコナンくんですから」
「安静にしていればすぐ治るってお医者様も言ってたしね!」
「うん。本当にありがとう。あの、もし良かったらお礼をさせてもらいたいんだけど…」
「いえいえそんな!大したことじゃありませんから」
「私の気が済まないんです。なにか…お昼ご飯、まだですよね?どこかで…」
「じゃあポアロで食べようよ!」
「コナンくん!…本当にお気になさらないでください」
「いえ!コナンくん、ポアロでいい?」
「ボク、そこのサンドイッチ大好きなんだ。お姉さん食べたことある?」
「ううん。でも、有名だよね。蘭さん、ポアロでいいですか?」

少々強引だが病院からも近いしポアロに行くことになった。

私の足は松葉杖を使うほどでもなかったが、冷やしてもまだ腫れがひかないので、念のため杖をついている。

カランコロン、とドアベルの音が響く。空調はやや涼しく、汗をかいて暑くなっていた私にはちょうどよかった。

「いらっしゃいませ…おや、コナンくんじゃないか」
「こんにちは!蘭ねーちゃんとみょうじさんここに座ろ!」

明るい金髪に褐色の肌。
安室透…本名は降谷零さんがそこにいた。
本当に、コナンの世界に来てしまったらしい。しかも、安室さんがいる。赤井さんはもう沖矢昴なんだな…

「いらっしゃいませ。初めてお目にかかりますね。」
「あ、はい…いい雰囲気のお店ですね」
「ありがとうございます。おや、足を怪我されているんですか?」
「ええ、お恥ずかしながら階段でコケまして…動けずにいたところを江戸川くんと毛利さんに助けていただいたんです。そのお礼にと」
「そうでしたか、それはご愁傷様です…ごゆっくりどうぞ」

話をしながらさりげなくわたしの椅子を引いてくれる安室さん。スマートだ…さすが公安のエース。

とりあえず念願のポアロだ。

「ボクはサンドイッチのセットにする!蘭ねーちゃんは?」
「私は…中途半端な時間だし、ケーキセットにしようかな」
「すみません、付き添いまでしていただいたから…」
「困った時はお互い様ですよ!それにポアロのケーキは本当に美味しいんですから。」
「そうなんだ…私は…うーん、やっぱりサンドイッチかなぁ…美味しいって評判ですもんね」

「ご注文はお決まりですか?」

「うえっ!?」

背後から聞こえた声に驚いて変な声が出た。ビクッと体が震えたせいで足首に痛みが走る。

「驚かせてしまったようで…すみません。サンドイッチセットが2つと、ケーキセットがお一つでよろしいですか?お飲み物は何になされます?」
「私は紅茶を。レモンをつけてください」
「僕はコーヒー!ミルク多めで」
「わ、私もコーヒーで、一応砂糖とミルクを…」
「かしこまりました。」

心臓に悪いなあの人…気配なさすぎる…。