「みょうじさん、ありがとうございました。」
「いえ、こちらこそ…迷惑をおかけしてしまいましたから」
「気をつけて帰ってね」
「ありがとう江戸川くん。では、失礼します。」
ポアロでなんとか食事と会計を済ませ、近くでタクシーを捕まえて住所を告げた。
歩きたくない。足の痛みはすぐに取れるものではないし、もしこちらの世界でバイトとかしていたらしばらく出られないことを連絡しなきゃ。
深いため息が出る。
なぜ私はこの世界に来てしまったんだろう。
この世界の自分と入れ替わってしまったのだとすると、これから前途多難だ。
しかも怪我までしてしまったし、安室さんに目をつけられるし。
「お客さん、つきましたよ」
「ありがとうございます」
ついた場所にあったのは、高層マンション。
ここの真ん中くらいの所に私の住む部屋があるらしい。
エレベーターがなければ登っていけないほどの場所に住んだことがないため、緊張する。
しかもここ、オートロックだ。絶対鍵忘れるぞ、私。
「…高いなぁ…落ちたらやばそう…いや、確実に死ぬか…」
少々物騒なことを考えつつ、部屋に入る。
一人暮らしには十分すぎる広さだった。
リビング、キッチン、トイレ、バスルーム(スイッチ一つでお湯が沸くとか嬉しすぎる)、寝室と、客間なのか物置なのかわからない部屋。
冷蔵庫には今日明日くらいは生活できそうな食材があり、家具は私好みのシンプルかつ機能的なものばかり。部屋全体は緑で統一されていて、これまた私好み。どうやらこちらの世界の私も同じような趣味らしい。
「…お風呂入って、寝ようかな」
如何せん、いろんなことが起こりすぎた。
壁にかけてあったカレンダーの明日の日付に大きく「休み」の文字。
土曜日にお休みがあるのは嬉しいことだ。
とにかく明日が休みなら急いであれこれやることもないだろう。
私はお風呂のスイッチを押した。