moha/MOHA

 雑誌を開いて一番に確認するのは、その日のセンセーショナルな出来事だとか、ホットワードだとかだ。恋愛模様やファッションセンスを磨き上げるコーナーについてはさほど興味がなく、小学生が書いたような文体で「彼が最近冷たくて……」というSOSを通り過ぎる。ちなみにそれについての答えは「死んでるんじゃない?」だそうだ。きっぱり言いすぎている。思わず蚊帳の外から距離感に悩んでるってことじゃないのかとツッコミを入れてしまいたくなる。
 奇抜な色彩センスの若者を通り過ぎる。今日のエッセイ集、と言う名前で、読者からの様々なエッセイが掲載された記事で目を止めた。
 M県 杜王町 - J.H
 ひとりの人物を連想する。知人――それもクラスメートに似たような頭文字の男子を知っていた。赤の他人の可能性の方が高い。それでも、なんとなく「あの人かな」と思う。いつもは見向きすらしないページをよく開く。少し前のめりになって目を走らせた。
―――好きな人がいます。その子は、同じクラスメートの女子です。
 J.Hさんもどうやら学生であることがわかった。わかったからと言ってなんだというのか、少し笑って、次を読む。
 恋をしているのは小学生の時。ピンクのボールを落としたのだが、それを拾ってくれたのがきっかけ。昔は一緒に遊んでいたけど中学になってから疎遠になっている。
 疎遠と言う言葉を、彼は知っているのだろうか?知らないだろう。失礼なことを考えつつ、'ピンクのボール'の部分を人差し指でなぞる。背中が汗ばむ。部屋の温度が2℃上がった気がした。東方仗助も私も低学年だった頃、まだ世界が子供目線でしか見られなかった頃、ピンク色のボールが記憶の中にはあったのだ。

wj ジョジョ 4部 東方仗助
ALICE+