moha/MOHA

「おい、答えろよ…。お前は一体誰の女なんだ…!!」
「世界中の女の子の女に決まってるじゃない!!!」
「ふざけんな、じゃあ俺も女になる」
「は?早くなれよ」
「おうなってやるよ、見てろよ……、全人類がふり向くような女になってやるからよォ……」

M「なあ、見てて面白いんだが止めなきゃだめか?」
R「止めてやってくれ」
H「めっちゃ面白…」

wj ジョジョ 5部 イルーゾォ

 雑誌を開いて一番に確認するのは、その日のセンセーショナルな出来事だとか、ホットワードだとかだ。恋愛模様やファッションセンスを磨き上げるコーナーについてはさほど興味がなく、小学生が書いたような文体で「彼が最近冷たくて……」というSOSを通り過ぎる。ちなみにそれについての答えは「死んでるんじゃない?」だそうだ。きっぱり言いすぎている。思わず蚊帳の外から距離感に悩んでるってことじゃないのかとツッコミを入れてしまいたくなる。
 奇抜な色彩センスの若者を通り過ぎる。今日のエッセイ集、と言う名前で、読者からの様々なエッセイが掲載された記事で目を止めた。
 M県 杜王町 - J.H
 ひとりの人物を連想する。知人――それもクラスメートに似たような頭文字の男子を知っていた。赤の他人の可能性の方が高い。それでも、なんとなく「あの人かな」と思う。いつもは見向きすらしないページをよく開く。少し前のめりになって目を走らせた。
―――好きな人がいます。その子は、同じクラスメートの女子です。
 J.Hさんもどうやら学生であることがわかった。わかったからと言ってなんだというのか、少し笑って、次を読む。
 恋をしているのは小学生の時。ピンクのボールを落としたのだが、それを拾ってくれたのがきっかけ。昔は一緒に遊んでいたけど中学になってから疎遠になっている。
 疎遠と言う言葉を、彼は知っているのだろうか?知らないだろう。失礼なことを考えつつ、'ピンクのボール'の部分を人差し指でなぞる。背中が汗ばむ。部屋の温度が2℃上がった気がした。東方仗助も私も低学年だった頃、まだ世界が子供目線でしか見られなかった頃、ピンク色のボールが記憶の中にはあったのだ。

wj ジョジョ 4部 東方仗助

 馬鹿な女だったから実は恋人だと思われていないことに気づかなかった。気づいたのは、男の隣にいる自分より年上の女に「セフレ」と紹介された時だった。
 アンデスノオトメは八月から十月頃に咲く黄色い蝶形の花を咲かせる小さな花だ。花の形状はマメ科特有で、調べてみるとエンドウやミヤコグサなんかも似ている花を咲かせた。近所に住んでいる若い夫婦の育てている花を、男が勝手に摘んできたものだ。
 謝ろうにも、夫婦との接点がなく、バレないうちは黙っておこうとジャムの瓶に水を入れ、ひっそりと玄関口に飾っていた。男を𠮟りつけてみたものの、最初はへらへらとするばかりで、あまりにも強く追及すると、お前への手土産だと怖い顔をして言うのだった。
 こんど男が来たときは、うちには入れないようにしよう。
 強い口調で自分にそう言い聞かせる。何度か言い聞かせて、それでも破ってしまいそうだったから紙に書いた。裏面にはテレビで見て走り書きしたのだろう、何らかのレシピが書いてあった。工程が2のしし唐のへたを落とすところで止まっていた。

 思考も呼吸も、一瞬止まった。辺りはすっかり暗くなり、安い電灯の光が部屋を照らしていた。ピンポンとインターホンが鳴る。インターホンを鳴らす客人はめったにいない。誰だろうかと数人、顔を思い浮かべて、立ち上がる。ゴンと鈍い音でドアを叩く。数人の顔が消えて、一人だけ残った。

「いれないわよ」
 ドアのまでやってきて、自分でもわかるほど緊張した声で言った。
 動揺したような気配を感じる。迷った挙句、ゴン、と撲つ。
「何度叩いたって、入れない」
「入れてくれよ、ビール持ってきたんだ」
「それを持って帰ったらいいわ」
「いつのまにそんなに冷たくなっちまったんだ」
 ドアに挟まれて、いやに曇って聞こえた。
「もう、入れないことにしたの」
「何かあったのか」
「気が変わったの」
 すぐに返事を返す。沈黙が続き、男はため息をついた。
「また来る」
 そう言い残し、今度は足音が聞こえた。マットの上を歩く音とザリザリと砂利の上を歩いた音だった。それが遠のいていく。息をつく。ずるずると座り込み、視線が上に向いた。空き瓶の中に水が揺蕩っていて、茶色く変色したアンデスノオトメがあった。

wj H×H フィンクス

「お願いがあるんだけれど」
「聞きませんよ」
「え、聞いてくれないの」
「なんで聞かなきゃならないんです」
「えー、友達だから?」
「友達だったんですか?僕ら」
「違うの?」
「違いますよ」
「じゃあ、私たちは何なの…?」
「え……えっと、同僚…ってやつですよ」
「そうなのか……」
「ええ、そうです。同僚です。そうなんですよ。僕たち、同僚なんですよ」
「そんな念押ししなくても」

wj ジョジョ 5部 フーゴ

 昔住んでいたアパートは、管理人の趣味でミモザが植えてあったのだが、それが花になることは一度もなかった。水をやらなかったのだ。それでも毎年、ミモザを植えていく背中があった。
 ピーコックグリーンの扉がいくつも並ぶ建物の中に、メローネは当時、全部に入れるものだと思っていた。今はそう思ってはいないが、できなくはない。
 隣には、女がひとりで住んでいた。普段は日中は外に出て夕方帰ってくるパターンのなかで、時々、深夜になって、物音をあまり立てないようにしずしずと歩きながら生白い手で買い物袋を持って帰ってきた。
 彼女の部屋からは時折、小さな音楽が聞こえた。ロックだったりクラシックだったりまちまちだった。母はそれを耳ざわりに思っていたが、セックスに夢中になるとわざとらしくボリュームをあげられたことにも気づかなかった。メローネはクローゼットの中で目をつぶり、音楽を聴いた。その時、メローネは隣室で、女の隣に座ってイギリスのロックバンドの音楽を聴いているような気分になっていた。すこし性的な歌詞がつけられる音楽がメローネは好きだった。
 クローゼットが開く音がする。鈍い光と、ほこりっぽい臭い、薄暗い影がメローネの顔をかぶさってくる。目を開ける。三日前から入り浸っている男が、太くてざらざらした腕を伸ばしていた。
 音量が一段階大きくあげられた。
 ショパンのエチュード第3番が、薄い壁に押し付けられた頭の中に響いた。

 母と義父を殺した日、メローネは実は隣人の女も殺そうと思っていた。彼女は家におらず、近くのスーパーで働いていた。両親の死はメローネが殺してから一週間以上放置され、近隣住民の通報によって発覚した。ラジオからは子どものことは取りあげないニュースが終わり、音楽番組が始まった。
 番組進行のDJが気持ちよく笑いながら結婚報告をする。彼女が好きな曲をかけたいと思います、と男は言った。女がよく聞いていた音楽が、GaGaと途切れながら流れ始めた。

wj ジョジョ 5部 メローネ

 死ぬなよと言われると、どうしても無理をしたくなる。
 自分がどれほど大事に思われているのか、その一言で伝わってくるからだ。


 あまりにも怪我の多い同僚に、時々「死ぬなよ」と声をかけることがある。貧血症状が出て血の色が失われた青白い顔が驚いたような顔をして硬直し、やがてふにゃふにゃな笑みを浮かべ、ウンと肯く。
「そんなこと言われたのはじめて」
「馬鹿、お前に死なれたら連帯責任になんだよ」
「うふふ、気を付ける」
 心底うれしいとでもいうような顔になって、そのあとすぐ真剣な表情のまま同じ言葉を繰り返す。子どもが親に褒められたときのような顔だ。なんとなく面映ゆくなって視線を辺りに投げかける。
 視界の端で、耐えきれず失笑しているヒナを見つけた。

wj ワンピース スモーカー